表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(性的に)呪われた騎士を救えと言われても、テニスラケットしか持ってません!  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/88

16.魔獣の悲鳴


 ぴょんぴょんと飛び跳ね、近づいてくる黒い兎の集団。いや、兎ではなく魔獣ツノウサギ。額に一本、大きな角がある以外は普通の兎と同じ見た目だ。

 可愛い……、モフモフしたい……、けどこれ、魔獣なんだよね。

 たしかにあの大きな角で思いっきり突かれたら、けっこう酷い怪我をしそうだ。


 わたしはテニスラケットを握り、ふうっと息を吐いた。盾、と考えるとイメージが湧きづらいので、もうちょっと大きめに壁をイメージして集中する。


『風の盾』

 軽くラケットを振ると、フッと目の前の空気が揺れる。

 ラケットから風が噴き出した。『龍』の時のように、風が生き物のように縦横無尽に動き回ったりはしない。循環する空気の層がわたしの前にあり、異物を跳ね飛ばしている感じ。


 すると、こちらに突進してきたツノウサギが、見えない壁にぶつかったようにころんと転がった。


 可愛い。可愛いけど、モフモフする訳にはいかない。あれは魔獣。

 ツノウサギは、どうにか盾を突破しようと、何度も突進してきては、ころころと転がっている。めちゃくちゃ可愛い。盾を壊そうとしているのか、ていっていっと後ろ足で蹴りを入れるツノウサギもいる……、可愛い……。


「よし、そのまま盾を維持しろ」

 いつの間に来たのか、ラインハルトとルーファスが側に立っていた。

「ユリ様、『盾』の魔法を習得されたようですな。おめでとうございます」

 ルーファスの言葉に、ほっと力が抜けた。


「ありがとうございます」

 その時だった。

 ラインハルトがローブから杖を取り出し、無造作にツノウサギに構えて言った。


『風の刃』


 ひゅん、と風がツノウサギの体を切り裂いた。

 ラインハルトの魔法は、かまいたちのように次々とツノウサギを切りつけ、殺していく。

 キューッとツノウサギが悲鳴を上げた。足元に飛んできた血しぶきを、わたしは呆然と眺めた。


 ……え、なにこれ。え、えっ? ちょっと……、え、待って。


「よし、全部始末できたな。ユリ、瘴気を祓えるか?」

 満足げなラインハルトの言葉に、わたしはハッと我に返った。

 気づくとツノウサギの死骸も血も消え、周囲にはモヤモヤとした黒い空気がただよっているだけだ。


「…………」

 わたしは無言で、ぱたぱたとラケットでその黒い靄を叩いた。

 すると、チリリッと小さな火花とともに、その黒い空気は消えてしまった。


「おお! エスター殿の言った通りですな! ユリ様は瘴気を消滅させることがお出来になるようです!」

「ふむ、にわかには信じられんが、実際に魔獣の気配も消えているようだな……」

 二人は興奮を隠せないように、弾んだ声で話しあっている。


 わたしは何とも言えない気持ちになり、うつむいた。


 いや……、うん、あれは魔獣だし。殺さないと、ハティスの森に行けないし、元の世界に帰れないし。

 外見モフモフの可愛い兎さんであったとしても、あれは魔獣。魔獣。魔獣……。


「……ユリ様? どうかなさいましたか?」

 不思議そうにこちらを見るルーファスとラインハルトに、わたしは慌てて「なんでもありません」と答えた。


 自分からハティスの森に行きたいって言って、訓練を受けることにしたんじゃないか。魔獣を殺すたびにいちいち落ち込んでたら、先に進めない。考えたり泣いたりするのは後だ、後。


 わたしは、最後に聞いたツノウサギの悲鳴を忘れるように頭を振った。

 キューッて鳴いてた……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ