02 即、解決
黒井先生が、にやりと語りかける。
「アランさんが無自覚プレイボーイとして覚醒してしまった事実は、今さらどうにもなりません」
「私の新薬を使えば、枯れきったお爺さん的人格への強制精神改造は可能ですが」
一同、激しく首を振りました。
ありがとう妻たち。
「まずは監視」
「他の女性たちへの被害を防ぐためにも、奥方さまたちは今まで以上にアランさんに寄り添わねばなりません」
「おはようからおやすみまで、食事もお風呂も、四六時中べったりと、です」
奥方さまたちが、真っ赤になってうつむいておられますけど。
「次に対処法」
「もちろん、ただそばにいるだけでは駄目です」
「これまで以上に、全身全霊をもって、甘やかしてください」
「アランさんのプレイボーイ気質を支えているエネルギーが他の女性たちに向けられぬよう、おふたりが責任を持ってアランさんからそれを搾り取るのです」
「この行為が出来るのは、この世界広しといえども奥方であるおふたりだけ、なのですよ」
奥方さまたちが、真っ赤になってうつむいてぷるぷる震えておられますけど。
「ひとつ朗報が」
「幸いにしてモノカさんのチームやロイさんのお仲間たちにはある程度の耐性が付いているようなので、アランさんのアレの効果は効きにくいみたいです」
「ただし、誰であろうと他の女性をアランさんとふたりきりにするなどというような危険極まり無い状況は絶対に避けるように」
「間違いというのは起きた時はもちろん、後悔し続ける時間の長さこそが責め苦となるものなのです」
奥方さまたちが、覚悟を決めた表情で見つめ合ってますよ。
「ありがとうございます、黒井先生」
マユリが、涙目で感謝している。
「必ずやこの『誠実なプレイボーイ』という名の無自覚モンスターを何とかしてみせようっ」
リリシアが、覚悟を決めきったまなざし。
『何とか』って、俺、ナニされちゃうんだろう。
黒井先生が、満足げに話を続ける。
「今回の件ですが『解決した』とだけお仲間たちに連絡して、詳しい内容は極秘、という事でお願いします」
うん、『誠実なプレイボーイ』とか『無自覚モンスター』とか、みんなに思われるのは嫌だよ。
「それでは最後に、経過観察として重要な事をお伝えしますね」
「治療中はアランさんの態度や言葉遣いに注意してください。治療行為の経過と共にアランさんの日常生活に変化が訪れますが、おおらかな気持ちで見守ってあげることがアランさんと周囲の人たちの今後の良好な関係を築く上での重要なポイントとなるでしょう」
「それでは皆さん、お大事に」
本当にありがとう、黒井先生。