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異世界転移に気付かない迷子たち 2

雪山を下山しつつ、マップを確認する。

しかし自分達の赤いマーカーだけでなく、全体図の縮尺マップすら表示できない。


「おかしいなあ、いつもならここにいる場所の周辺地図くらい表示されるよね?」

「マップ自体がエラーになってるとか?」

「やっぱりその可能性あるかな。転移もできないし、もしかして他のエラーもあるのでは?」

「かなり修正パッチが必要ですな、これ」

「運営がんばれ……」


運営に合唱しながら、ザクザクと雪を踏みしめて山を下りていく。

最近は魔法での移動ばかりだったので、歩いていくのは久しぶりで少しだけ新鮮だ。

プレイヤーは暑さや寒さ、痛覚といった五感を感じることは出来るが、死ぬほど影響があるわけではない。こうして吹雪の中を歩いても、体には影響はないのでのんびりしていられるのだ。

(けど、前もこんなに冷たかったっけ?)

いつもよりリアルに感じる寒さに、シオンは白い息を吐きながら、吹雪からゆっくり降りてくる雪に変わった空を見上げた。


「あ、見て、街道だ!」

「おー、やっと道らしい道を発見か」

「……しかしここも見覚えはなく……」

「我々は以前、迷子なのであった」

「完!」

「終わらすな!」


息の合った台詞、ディルガルドのツッコミに三人の女性は笑い合った。


「ともかく街道を行けばどこか知ってるとこに出るでしょ」

「また歩くしかないのか……」

「さっきより雪は少なくなったし、頑張ろうシルレリア」

「はぁーい」


気休め程度だが整備された街道、それをリズが手書きで紙に書き込んでいる。マップが機能しないから地図を手書きをするなんて、すごい気配りさんだなあ……と、シオンはリズの頭を撫でた。可愛いので。


「?」


何故撫でられたのか分からないリズは、頭に?マークを浮かべる。

その困惑する姿も可愛い。癒されるシオンを傍目に、ディルガルドは複雑な溜息を吐いた。リアルを知っているからこそである。

ともかくディルガルドがしばらく先頭を歩いていくと、積もっていた雪も消えて歩きやすい平地に出た。


「……向こうに森が見える。町はまだないね」


近くの木に登ったリズが遠視で周辺を確認しているうちに、シルレリアも探索(サーチ)するが、めぼしいものは何もないようだった。とりあえずその森方向に歩いていくことにして、シオンは今回のアップデートに不満を漏らす。


「ボス戦は楽しかったけど、もうちょっと強くてもよかったなー」

「確かに、俺らにはちと物足りなかったかもな」

「新規プレイヤーが増えてたから、<大地>はそっちに合わせたんだろうね。他の国に行ってみようよ。運営があれだけ『楽しみにしてて』って言ってたんだし、<火>とか<闇>は強いのがいるかも」

「血沸き肉躍る戦いがしたい……」

「やだ、シオンさん目が怖いですよ」

聖職者(プリースト)にあるまじき台詞」


パーティの中で一番好戦的なシオンに、三人は苦笑いする。

だが物足りなさを感じていたのは三人も同じだったので、シオンの言葉に心の中で同意するのであった。


そんなパーティの願いが叶ったわけではないが、モンスターの出現だ。

森が近くなってきたのでそこから四人の気配に気付き襲ってきたのだろう。けれどディストウルフ(黒い瘴気を纏った狼型モンスター)はディルガルドの黒剣によって一撃で消滅してしまった。


「一匹だけ?」

「じゃあ斥候だ」

「ワラワラ来るぞ、気を抜くなよ!」


怒号と共に、ディストウルフの群れが襲い掛かる。

ディストウルフ自体は脅威ではなく初心者でも狩りやすいモンスターだが、数が多いのが難点で少し判断を誤るとパーティの連携が乱れてしまう。そこから総崩れ、というのもよくある話だ。

しかし、レベルがカンストしてしまった四人に敵うはずもなく、ほぼシルレリアの攻撃魔法とディルガルドの剣技で一掃できてしまった。シオンは二人に支援魔法でバックアップして、リズは二人が取りこぼしたモンスターを各個撃破したりと、慣れた手つきでディストウルフを討伐し終えた。


「おつかれー」

「珍しく数多かったね。ちょっと敵が抜けちゃった、サポートありがと、リズ」

「いえいえ」


親指を立てるリズに、シルレリアも同じようにグッと親指を立てて返した。


***


太陽の位置から把握して、西に鬱蒼とした暗い森が広がり、街道は南北に走っている。北に向けて歩いているが、町はまだ見えてくる気配がなく、仕方なくここでキャンプを張ろうということになった。

そろそろ日が傾いてくる頃なのでモンスターが活発になりやすい。だがこういう時の為に結界魔法やモンスター避けのアイテムも存在する。森の入り口だろうがダンジョンの中だろうが、安全地帯は作れるのだ。(ただし完全にというわけではないが。)


手早くテントを広げ、薪も集めて火を入れた。

肉入りスープを作ろうとシオンが早速張りきっているので、シルレリアも手伝うことにした。

残りの二人は周辺を警戒しつつ、自分達が休む場所の準備だ。

食事も睡眠も、この世界では実装されているが必要のない行為ではある。魔法で回復すればいいだけだ。だが、あるなら使おうというのが<チーム・青二才>の信条である。無駄とも呼べる<料理>も楽しんでやる、この世界(ゲーム)を『ロールプレイ』する、これが四人で決めた"絶対"だ。


「出来たよ~! パンも用意したからお好みで」

「ありがとうシオン」

「私、固いパンがいいな。スープにつけるとちょうどいい具合になるのよ」

「俺もそれ好きだわ」


日が落ちるのは早く、もう周りは暗くなっていた。

パチパチ音を立てる火を囲み、四人はのんびりと食事を楽しんでいた。


――そこに、馬車が通りかかった。


「ゲームの中にいてもちゃんと生活をする」を基本に、4人は楽しくプレイするスタイルです。


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