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休日 1

 晴れ晴れとした青空の下、サフィーアは、待ち合わせの場所でカティアの姿を探す。


 時刻は、もうすぐで待ち合わせの時間となるところであった。


 彼女は来ているだろうか、そう思いながら人だかりの中を歩く。


 サフィーアが今いる場所は、王都の中央通りの中でも特に有名な広場であった。

 待ち合わせの場所によく使われ、そして中央通りの中間地点にあるため、人々の憩いの場所としても用いられている。


 人の行き交う道はカラフルなレンガで舗装され、周りは華やかな花壇や青々とした芝生で囲まれている。


「――あっ、『カティ』さん」


 見つけた。

 カティアは噴水の側に置かれたベンチに腰掛けて、本を開いていた。


 声をかけて歩み寄ると、こちらに気付いたようで本を閉じて立ち上がる。


 彼女は、自分と同様にドレスではなく平民の娘らしい格好をしていた。


 カティアは、いつもの調子で「ええ、こんにちは、『サフィ』さん」と挨拶をしてくる。


 両者の呼び名は、本名そのままではあまりよろしく無いということで、お互いに決めたものだった。


 騎士団員からは、「アティカさんとアーフィサさんでどうでしょう?」という提案を受けていたのだが、少し呼びにくいと感じた二人は、結局思い思いに相手の呼び名を考えることにしたのだった。


「はい、こんにちは。あの、もしかしてお待たせしてしまったでしょうか……?」

「いいえ、私も今来たところなの」


 サフィーアの言葉に対してカティアは首を横に振る。


「そうですか、それなら良かったです」


 ほっと胸を撫で下ろす。


 カティアは、こちらを見て「それでこの後、どうするの?」と聞いてきたのだった。


 それに対してサフィーアは、「うーん」と少し考えた後、こう答えた。


「そうですね、やはり皆さんとの打ち合わせ通り、ここから近いお店から見て回ろうと思います。カティさんは、それでもよろしいでしょうか?」

「異論は無いわ。それで行きましょう」


 カティアはその言葉に賛同する。

 そして、先程読んでいた本をサフィーアの目の前で広げた。


 その本は、王都の観光巡りについて書かれた本であった。

 所々付箋や書き込みがされており、そこからカティアがこの本を深く読み込んでいることを察することが出来る。


「ここは闇雲に回るより、ある程度候補を絞った方がいいと思うの。一応、前もっていくつかピックアップしてきたから、意見を聞かせてくれる?」


 カティアの言葉に、サフィーアは「はい、私で良ければ喜んで」と笑みを浮かべた。



 ♢♢♢



 一方、レインたちは「今現在、珍しい経験をしている」とテンションが爆上がりであった。


 一度下見はしたが、やはり休日は朝より昼前の方が人通りも賑やかである。

 そのため、今は沢山の露店や大道芸人が広場に集まり、三人の興味を強く引いたのだった。


 傭兵稼業を行なっていたケルヴィンはともかく、ヘリアンとレインの視線はあちらこちらに移ろっていく。


 中でも、ヘリアンは様々なことに興味を抱いた。

 何度か、騎士団員と共に街中に来ているのにもかかわらず、彼は目を輝かせる。


「店主、これは何だ。今回初めて見たな。クッキーか? 池の魚用のクッキーなのか!? 凄いなっ! 魚がクッキーを食べるのか! ちょっと来てくれ、『レイ』! 魚用のクッキーだ! 魚用だが、とても美味しそうだぞ!!」

「黙れ、大声を出すな『リアン』。――店主、一つ聞きたい。このクッキーは、人が食しても問題は無いのか? そこの馬鹿が食いたそうにしている。一袋買いたい」

「いやいやいや、だから『魚用』ですって、お兄さん方……。人の口に合うクッキーなら普通に、近くのお店で買って下さいよ……」


 二人の言葉に困惑する露店の店員。


 それを見たケルヴィンは、二人を指差して「こっ、こいつら馬鹿だ、馬鹿すぎる!」と大口を開けてゲラゲラ笑うのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仲良しな少年達の微笑ましい風景(のはず)。 悪魔のように微笑んで、魚の餌を与えるカティア、嬉しそうに魚の餌を、頬張る金髪碧眼天使顔の王子。 なんだろう、凄く良い。
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