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継続

 時刻はもう夕方に差し掛かっていた。

 そのため、今日のレッスンは終了となる。


 私と弟は、溜息を吐く。


 ヘリアン王子とサフィーア王女。


 ――二人の王族は、やはり優れた才能を有していた。


 そのため、私と弟は互いに目を見合わせる。


『ねえ、レイン。何で、サフィーア殿下に勝てたの……正直、勝てる気がしないんだけど?』

『それはこっちの台詞だよ。ヘリアン殿下、強すぎるって……本当何で毎回決闘で圧勝出来たの……? おかしいよ』


 私と弟は、互いに超えるべき目標の壁の高さを痛感することになる。


 ヘリアン王子とサフィーア王女は、私たちから見て驚くほどに凄かった。


 何しろ、私たちが今現在苦戦しているレッスンを試しに受けてみたら、すぐさまこなしてみせたのだから。


『サフィーア殿下、神経衰弱強すぎない……?』

『それを言ったら、ヘリアン殿下だってサイラスの足払いをちゃんと避けられてたし……』


 本当にスペックが高い二人だ。


 そのため、私たちは肩を落とすことになる。

 何て強力な助っ人であり、好敵手なのだろうか。


 嬉しい反面、悔しい気持ちになる。


 競い合ってみて分かった。

 私たちは、二人に全く敵わない。


 二人の背中は、今の私たちにとって、恐ろしく遠かったのだ。


 もっと頑張らなければならない。


 私たちは、そのように意気込みながら、王族二人を見送る。


 もう帰る時間だった。

 なので、「二人は楽しい一日だった」と私たちに告げて帰ろうとしたのだが――


 しかし、二人は途中で立ち止まる。


 そして、馬車の前で私たちに向き直ったのだった。


「一つ、頼み忘れていたことがある」


 ヘリアン王子が言った。

 そしてサフィーア王女が、その後に続く。


「良ければ、明日もお二人を訪ねてもいいでしょうか?」


 ――え、明日も……?


 私と弟は、驚き目を見開く。


「実は、父上から一ヶ月ほど公務を休んでいいと言われた」

「それで、その……出来れば、また是非ともお二人のレッスンの練習相手になれれば、と思いまして……」


 なるほど、だから、こうしてメアリクス家の屋敷に訪れることが出来たのか。


 そして、学園が始まるまで私たちのレッスンの練習相手になりたい、と……。


 ――え、本当にいいの? 二人とも……?


 私たちは、申し訳なさで一杯になる。

 彼らは、私たちのために休日を使いたいと言ってくれているのだ。

 他にも、色々としたいことはあるだろうに。


 けれど、彼らは私とその時間を過ごすことを選んでくれた。


 私たちは、何度も深く感謝することになる。


 咄嗟に顔を俯けて、隠したが、正直に言って私たちは、涙目になっていた。


 そして二人は「それではまた」と言って、馬車に乗り、去っていく。


 私たちは、彼らの乗る馬車が見えなくなるまでずっと見送りを続けたのだった。

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