合同レッスン 4
一方、レインとヘリアンは、木剣を持って向かい合っていた。
二人は、剣を構えて相手の隙を窺う。
「来ないのか? かかって来ないのなら、こちらから行かせてもらうが?」
「いいや、その必要は無い――」
レインが、そう言った後一気呵成に踏み込む。
ヘリアン目掛けて剣を振り下ろす。
しかし、
「甘い!」
ヘリアンは、その一撃を受け止めたのだった。
レインは、それを見て舌打ちする。
そして、その後、何度もヘリアンに向かって剣を打ち込む。
けれど、攻撃を受けるヘリアンはその全てを難なく防ぎ切ったのだった。
「――攻撃が軽い。剣速も遅い。視線と予備動作で何がしたいのかまる分かりだ。それでは、僕には届かないぞ」
そう言って、ヘリアンはレインを剣ごと押し退ける。
「ぐっ……!」
レインは、一度後退する。
連撃を行ったため、多くの体力を消費した。
そのため、少しでも回復しなければ。
そう判断した結果だった。
だが、ヘリアンはそのような機会を与えない。
今度はヘリアンが、激しくレインに対して剣を打ち込む番だった。
レインは、それを歯を食いしばりながら、必死になって防ぐ。
――気を抜けば、崩される。
そう思えるほどの激しい連撃。
レインには、それを止めるための術がなかった。
そのため、ヘリアンの体力が尽きるまで受け続ける以外にない。
だが、ヘリアンはさらに剣を振る速度を早める。
レインは、それを見てさらに舌打ちをする。
このままでは、ヘリアンの攻撃に対応し切れなくなる。
そう考えて、レインは捨て身覚悟で踏み込んだ。
負けと判定されるようなダメージを受けないよう気をつけながら、ヘリアンに反撃の一撃を繰り出す。
しかし、
「――それは来ると分かっていた」
ヘリアンは、突然攻撃を止めた。
そして、素早く動いて的確にレインの首元に剣をあてがうのだった。
「いい勝負だった。でも、僕の勝ちだ」
ヘリアンは、勝利宣言を行う。
レインは手も足も出なかったのだった。
「……強い、な……」
レインは負けを理解し、剣を置く。
しかし、ヘリアンは首を横に振った。
「まだまだだよ。僕の強さは、この国の騎士の階級に例えても下級がせいぜいだ。それに――」
ヘリアンは、言う。
「君の姉とは、実力差が文字通り大人と赤子の差ほどの開きがある。僕は彼女には一度も勝ったことがないし、勝てるビジョンさえも思い浮かばない。だから、僕もまだまだ精進しなくてはいけないんだ」
勝負に勝った。
嬉しいという気持ちは多分にある。
しかし、驕る気にはなれない。
彼には目標があったからだ。
それを見て、レインは目を細める。
そして、宣言した。
「いつか、必ず追いついてみせる」
ヘリアンは、応える。
「期待しているよ。必ず待っているから」
二人は約束をする。
そして、握手を交わしたのだった。




