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協力の提案

 王族二人の来訪理由。


 それは――私たちに会いたかったから。


 そう、言われて私と弟は、ぽかんと呆けた表情になってしまう。


 ヘリアン王子とサフィーア王女は、「そういうこと」なのだと、若干頬を赤らめる。


 私たちもそれを見て、少し恥ずかしい気持ちになるのだった。


 そ、そうなんだ。そうなんだ……。


 ヘリアン王子たちが、私たちに……。


 とても嬉しい、そのような気持ちが心の底から溢れてくる。


 私たちは、今どのような言葉を返せば良いのだろう。


 素直にありがとう、というべきなのだと思う。

 けれど、気恥ずかしくて、私たちも俯いてしまうのだった。


 その結果として、私たち四人は黙ってしまう。


 しかし、そのぎこちない空気の中、サイラスが「一つご提案があるのですが」と口を開く。


「ヘリアン殿下とサフィーア殿下には、是非ともカティアお嬢様とレイン坊ちゃんのレッスンでの練習相手になっていただきたいのです」


 そう言ってサイラスは、マリーとともに頭を下げるのだった。


 それを聞いて、私たちは「えっ!?」と驚いて顔を上げることになる。


 ヘリアン王子とサフィーア王女が、私たちのレッスンに……?


 それは、あまりにも予想外の提案だった。


 何故なら、メアリクス家は秘密主義だ。

 そのため、私たちが行なっているレッスンだって、メアリクス家が秘匿すべき極秘情報だろう。


 それを親しいとはいえ、無関係の彼らに……。


 ……いや、そういえば全然無関係ではなかった。

 そもそも、メアリクス家は国の命令によって『悪役』という使命を全うしているのだ。


 そして、サイラスとマリーも国の命令によって、私たちを教育している。


 むしろ、王族は本元というべき存在だった。

 でも、サフィーア王女はともかくヘリアン王子は、メアリクス家の使命について未だ気がついてはいないけれど……。


「確認だが、それは二人が行なっているレッスン……? に、ぜひ協力して欲しいと言うことだろうか」

「もしかして、それってカティアさんが行なっていると以前言っていた例の、ですか……?」


 二人の言葉にサイラスとマリーは、「はい」と頷く。


「実は今、カティアお嬢様たちは、新しく今までとは異なるレッスンを始めたばかりなのです。ですが、少々苦戦しておいでのようでして……なので、練習相手と呼べるような方がいれば、カティアお嬢様たちもより上達することが出来るのではないかと考えている最中なのです」

「なるほど……」


 ヘリアン王子とサフィーア王女は、一瞬考える。


 そして、言った。


「分かった。二人のためになるのなら、もちろん協力させてもらおう」

「私も同じ考えです。是非ともよろしくお願いします」


 王族二人はそのように気の良い返事をかえしたのだった。


 そのため、私たちは驚きながらもサイラスとマリーに視線を移すことになる。


 ――えっ、これって本当に良いの……?


 と。


 正直、驚きながらも嬉しい気持ちであった。

 有難い申し出だと思う。


 ヘリアン王子たちが私たちのレッスンに協力してくれることになんて。


 けれど、


 メアリクス家で行われているレッスンを王族とはいえ、メアリクス家以外の人間が行うなんて今まで聞いたことない。


 だから、思うのだ。


 それって大丈夫……? と。


 すると、サイラスは言った。


「問題ありません。奥様もレッスンについては、ご結婚前に行っておりますので」


 ん? それって結婚することが決まったからじゃないの……?


「おっと、そうでしたか。では、サフィーア殿下には、いずれメアリクス家の一員になっていただくしかありませんね。それとヘリアン殿下については、メアリクス家の人間とご結婚なさるのであれば、夫として、そして未来の国王としてメアリクス家の全てを知っておく責任が生じるはずです。ならば、結局のところ問題はありません。そうでしょう?」


 サイラスは、私と弟に聞こえる程度の声量でそう言った。


 マリーも、「私もそう思います」と同意する。


 その言葉によって、私たちは気付く。


 ……間違いない。

 従者二人は、確信犯だった。

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