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二度目の告白

 ヘリアンと少女は向かい合っていた。


 ヘリアンが、真摯な口調で少女に語りかける。


「僕はもう君から逃げない。今この瞬間から、君と向き合っていくと、そう決めた」


 彼はそのように言った。


「今朝は、言い逃げのような形になってしまったから、もう一度言わせて欲しい。僕は、君のことが好きだ。最初は友達として、そして好敵手として君のことが好きだった。けれど、今はそうじゃない。今は――」


 ヘリアンは一度息を吸うと、そして、


「――君に恋をしている」


 そう告げた。


「これは紛れもなく僕の本心だ。嘘でもないし、揶揄っているわけでもない。僕は、この気持ちを君に伝えるのが怖かった。けれど、今は違う。君に聞いて欲しい」


 何かをして欲しいわけではない。

 ただ、自分はこのような気持ちでいることを知って欲しかったのだと、彼は言った。


「改めて告白させて欲しい。僕は君のことが好きだ、レイン・メアリクス。それが僕の今の気持ちだ。だから、君が傷つくのを見たくない。僕は、君たちが争わずに済むように話し合いで解決していきたいと思っている。どうか、少しばかり僕の話に耳を傾けて欲しい」


 彼は、そう心から願っていたのだった。



 ♢♢♢



 地面に倒れた状態で、サイラスはその言葉を聞いていた。


 そして、納得する。

 安堵する。


 ――ああ、彼なら安心だ。彼女のことを任せることが出来る。


 そのように確信したのだった。


 確かに、彼の実力は自分たちに遠く及ばない。

 才能はあっても、現状では精々下級騎士と同等程度のものでしか無い。


 しかし、彼について特筆すべき点は、そこではない。


 彼は心が強いのだ。

 少女と真っ向から向き合える心の強さを持っている。


 いや、その精神力はおそらく少女よりも強固なものだろう。


 ただ優しいだけでは無い。

 彼には、勇気がある。

 そして、相手に歩み寄り、理解を行う器の大きさもある。


 彼は王族だ。

 そして、次期国王なのだ。


 武力だけで彼を測ろうとすること、それ自体が烏滸がましい。


 サイラスは、そう思い、小さく微笑んだ。


 ――ああ、素晴らしいお相手と巡り会えましたね、我が主よ。


 彼は、心の中でそう呟いたのだった。



 ♢♢♢



 私は、彼の話を何も言わずに聞いていた。


 内心、薄々と分かっていたからだ。


 彼が今朝、わたしのことを『好き』だと言った後、その意味がどのようなものなのか分かっていない、と今までそのように思って行動してきた。


 しかし、最初から分かっていたのだ。


 彼が持つその気持ちの意味は、友情とは違うことに。


 恋愛的な意味合いである、ということに。


 結局のところ私はそのことについて、ただ目を逸らしたかっただけなのだ。


 現実を受け入れること出来ず、現状を維持することを望み、逃げることを考えた。


 おそらく彼は、今まで私と同じような気持ちでいたのだろう。


 そして、今日そのようにし続けることを止めた。


 だから、こうして彼は臆さず私に想いを伝えることが出来るのだ。


 彼は勇気を振り絞って私に告げた。


 なら、次は私が彼の気持ちに応える番だ。


「――分かった」


 私は頷き、サイラスと話し合うことに決めるのだった。



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