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悩み多き昼休み

 ――学園長は、どうやら、授業を受けている私たちを見て学生時代に行っていた恋のキューピッド役の頃の記憶が刺激されたらしい。


 なので、私たちをランチに誘って自身の直感が正しかったのか直接確認を行いたかったというわけであった。


 すごい嗅覚だ……。


 これも、もしや私たちの持つ雰囲気で見分けたのだろうか。


 しかし、正直言って学園長が思っているところまで、私たちは進んでいない。

 そもそも、私たちは王族二人に対して、どのような「好き」であるのかも確認出来ていないというのに。


 私たちは廊下を歩く。

 もう少しで、昼休みが終わる。

 残りの時間は後、五分も無いだろう。


 結局、私たちはヘリアン王子たちにその真意を確認しに行くことが出来なかった。

 いや、仮に学園長が私たちをランチに誘わなかったとしても、私たちは彼らの元に足を運ぶことが出来ただろうか。


 正直言って、どうしていたか分からない。


 私たちはまだ朝から現実を呑みこめていない。

 だから、何を考えても堂々巡りになってしまう。


 ……何だか調子が狂ってしまって、自分が自分では無いみたいだ。


 いつも私たちは、ゴールを認識していた。

 だから、そこに向かって全力で走ることが出来た。


 しかし、今はそうはいかない。


 今後、何をすればいいのか。それが分からない。思いつかないのだ。

 ヘリアン王子たちに、真意を確認したとして、


 ――その後、私たちはどうすればいいのだろうか?




 ♢♢♢




 ヘリアンとサフィーアは、大食堂の一席にて、二人揃ってランチを食べていた。


 しかし、そこに会話はなくただ、ひたすら重い空気が流れていた。


「あのお二人、一体どうしてしまったのでしょう……?」

「兄妹喧嘩でもしたのかな?」

「でも、それなら一緒にランチっていうのはおかしくないか?」


 二人の様子を遠巻きに眺めながら、学生たちが口々に呟く。


 そして、すぐにあることに気付く。


 ――メアリクス家の二人の姿が無いことに。


「あれれー? おかしいなあー?」

「いつもは、四人で食べていたのに……」

「これは不可解ですね……」


 学生たちが、まるで探偵にでもなったかのように目を光らせ始める。


 ――もしや、王族二人が喧嘩をしたのはメアリクスの双子相手ではないか?


 そのように皆が考え始めたが、当人たちは周囲を気にしている余裕など無かった。


 何故なら、勢いで告げてしまったからだ。


 ――好きだと。


 二人は、朝のことを昼休みである今までずっと引きずっていたのだった。


 当然、今までの授業の内容もろくに頭に入ってこなかった。

 ここまで、集中出来なかったのは生まれて初めてだ。


 いや、ある意味最も一つのことに集中しているのが、今なのだろうか。


 そして、気分が落ち込むことになる。


 ――ああ、本当にその場の勢いに乗せられて、告白してしまった、と。


 あの場では、そうするしか無かった。

 しかし、今思うと自分たちが混乱していただけで、他に手があったと思うようになったのだった。


 たとえば、教師を呼びに走るとか。


 何も、彼らを止めるのは自分たちでなくても良かったはずだ。そう思ってしまう。


 しかし、同時に自分たちでなくてはならなかったと、思ってしまったりもした。

 彼らが納得して手を止めてくれたのは、自分たちだからだと。

 他の者たちが来ても、彼らは争い続けていたのでは無いかと。


 それに、やはり自分たちで止めるべきだという考えが心の中にあった。もしも、あの時他人を呼んでいたら自分たちは後悔することになっていたかもしれない。


 ――まあ、今現在後悔の真っ只中ではあるのだが。


 二人は、現在テーブル席で向かい合って座りながら無言でランチを口に運んでいた。


 いつものように、目の前にある料理は美味なはずなのに。

 でも、今はその味が全く分からない。


 彼らは、ずっと心配になって仕方がなかった。


 好きだと告げた。

 それにより、


 ――嫌われてしまったらどうしよう、と。

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