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本来の在り方

 日も暮れかけてきた夕方頃、父が帰ってきた。


 すでに学園から帰ってきていた弟と共に、父を出迎えると、父はどのような話となったのか私たちに教えてくれる。


「紆余曲折あったが……ヘリアン殿下とサフィーア殿下が、ラーメン屋の臨時の手伝いをすることについて、国王陛下から許可が下りた。テオバルト第三皇子殿下も同様だ」


 話を聞いていると、どうやら「万全の警備体制を整えるのならば、問題ないとする」ということになったらしい。


 私が早退した後、テオバルト皇子も帰り、そしてそのまま宮廷に訪れて直談判を行なったようだ。


 ……なかなか行動力が高い皇子である。

 しかも、それに加えて放課後になって学園から帰ってきたヘリアン王子とサフィーア王女も、国王に頼み込んだらしい。


 なので、国王としても「……そこまでいうのなら、条件付きで許可する」と折れてしまったらしい。

 三人は、とても真剣な表情で国王に頼み込んだとのことであった。


 国王が、そう決めたのなら、私たちはそれに従わねばならない。


 しかし、テオバルト皇子はともかく、ヘリアン王子とサフィーア王女は、何故そうまでして、臨時の手伝いがしたかったのだろう。


 父から聞いた話だと、二人は「そうすることで、ハノアゼス帝国の現状の問題を早期に解決出来るかもしれない」と力説したらしいのだが……本当にそれだけなのだろうか。


 確かに、この国にいる皇帝がハノアゼス帝国に戻れば、現状の問題はほぼ全て解決すると言ってもいいだろう。手伝いをするなら、当日中、皇帝(仮)が本物なのかどうか確認するチャンスが何度も訪れるだろうし、二人の言葉は理にかなっているとは思う。

 故に、現状の問題を解決出来るなら、たとえリスクを背負ってでも成し遂げなければならないと、そう思っても不思議ではない。


 けれど、何かが引っかかるような気がする。

 二人の性格からその理由が建前ではないことを理解している。だが、何というか……あくまで本音の一つだ、と言うような感じがするのである。


 別に彼らを疑いたいわけではないが、二人には何か思惑があるのではないか?

 そう思ってしまうのだった。


 ……まあ、今はそのことを考えても仕方がないか。


 話を戻そう。

 当初の予定として、当日は騎士たちが身を隠したり、変装を行なって周囲の警備に当たり、襲い来る可能性のある襲撃者に備えるという計画であった。


 なので、手練れの騎士を二十名ほど周囲に配置した状態で、当日ラーメン屋の手伝いを私が行う、ということになっていたのだが――


 ヘリアン王子たちが、手伝いに加わるということで、計画が変更されることになる。


 周囲には、五十名以上の第一騎士団の騎士たちが配置されることとなった。

 そして、ラーメン屋から少し離れた距離には、逃走ルートを潰す形で第二騎士団の者たちが百名ほど配置される予定らしい。


 ……かなり、大掛かりな話になってきた。

 いや、万全の警備体制なので、これくらいは当然の話だけれど。


 ということで、私たちは大勢の騎士たちに見守られながら、ラーメン屋の手伝いをすることになるのだった。


 いやあ、凄いなあ。もう、これ私の出る幕無いなあ……まあ、その方がいいんだけどさ。


 元々、私たちの仕事は皇帝を見つけることだけだったので、襲撃者対策は完全に騎士団任せだった。

 なので、役割分担は、きっちりこなしているということで、不満はないし、むしろ大満足だ。

 ……というか、今思うと準備期間が明日しかないけど、何とかなるんだろうか。いや、何とかするのだろう。騎士たちには、頑張って欲しい。


 さて、この警備の計画なら、ヘリアン王子たちも、気兼ねなくラーメン屋を手伝うことが出来るだろう。


 そう考えると、「あれ?」とふと思ってしまう。


 ……というか、これが本来の在るべき姿なのでは……? 王族に降りかかる厄介事を直接私たちが対処していたのが、おかしかったのではないのだろうか……?


 いや、おかしかったというより、運が悪かったといった方が適切か。

 普通は、単身で王族の誘拐犯を全滅させないといけない状況に追い込まれることなんて、なかなかないだろうし。


 本来は、今回のような形になるのが、正しいというか基本なのだ。


 そう思うと、過去を振り返って溜息を吐きたくなったが、ここは我慢する。


 とにかく、当日私たちが集中しなければならないことは、ラーメン屋の手伝いである。


 ――クビにならないよう頑張ろう。


 そう私は意気込んだのであった。


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