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今後の不安

 ――はあ、何とか終わった。


 私は、残り一人となった敵と一騎討ちをして、無事勝利を得る。


 正直、かなり強かったと思う。

 おそらく一般騎士数人と対峙しても、この敵は逃げおおすことが出来ただろう。


 本当、私が追いかけて良かった。


 もしかしたら最悪こちら側に犠牲が出ていたかもしれない。


 そう思いながら、倒れている敵たちの武装を解除して、一人ずつ拘束していく。


 もちろん、命を奪うことはしない。

 だってそれだと尋問が出来ないし。


 見た感じ、尋問や拷問の訓練は一通り受けているだろう。

 なので、今回も弟の出番がやってきそうだな、という感想が頭の中に浮かぶ。


 それにしても、今回は必死に走って少し疲れた。

 しかも、敵がいたのはまさかの屋根の上だ。


 私が彼らなら、確かに少し離れた場所から屋敷を観察したいので立地的に当然、ここら辺りの屋根の上から様子を伺うだろうなと思ったけれど、まさか本当にいるとは思わなかった。


 予想が的中して、少しびっくりしてしまう。

 もしかして、私にも父と同じような予感が……?


 いや、しかしこれはあくまで合理的な判断に基づいた推測であって、あのようなスピリチュアルに片足を突っ込んでいるような代物ではない。……ないはずだ。


 でも、この敵たちが襲撃してくる前に、明らかに嫌な予感がしたんだよねぇ……。


 自分も今後、何かのお告げ的なアレを受け取ることになるのかと思うと、ちょっと怖くなってきた。


 なので、私は別のことについて考える。


 テオバルト皇子の言葉が正しければ、今回襲撃してきた敵は全員倒したことになる。だが、これはあくまで一時しのぎでしか無いと思っている。


 私が、今回追撃を行なったのは、今後も襲撃が続くと予想しているからだ。

 おそらく相手が、この程度でテオバルト皇子を狙うのを諦めることはしないだろうと。


 なので、出来るだけ次の襲撃を長引かせるため、今回の敵を全滅させる必要があった。


 後は、私がいる場で襲撃してくるとは良い度胸だという気持ちと、そっちの事情は知らないけどヘリアン王子を危険な目に遭わせるとは覚悟は出来ているんだろうなという気持ちとか、とにかく色々な感情が私の中に有ったからだ。


 ――しかし、今回は何とか方がついたけれど、先が思いやられるなあ。


 今後のことを考えて、そう思ってしまう。


 実はテオバルト皇子は、まだ学園に通ってはいなかった。

 何か通えない理由があるのだろうと思っていたのだが……この通り、なかなか深刻な理由であった。


 留学のためこの国に滞在している以上、テオバルト皇子はいずれ学園に通わねばならない。

 周囲から不要な勘繰りをされないためにも。


 そして、その際にまた襲撃が遭ったら――


 ああ、本当に嫌だなあ。思わず、げんなりとしてしまう。

 もしも学園の中で襲撃が起きたなら、それはもう最悪中の最悪だ。


 相手が、なりふり構わない相手ではないことを祈るしかない。

 ……でも、今回他国でもお構いなしに襲撃してきたし、そのことを考えると多分無理かなあ。はあ……。


 なので早いところ、この国にいるらしい皇帝を見つけるしか道はないだろう。正直言って、それが一番丸く収まる方法だと思う。


 そう思いながら、私は戻ろうとして、ふとあることに気付く。


 ――あれ? この人たち、どうやって下まで運べばいいんだろう……?


 担ぐことは出来るけれど、手を使わずに下まで降りるのは結構危ないし、高さがあるので流石に投げ落とすことも出来ない。


 ちょっと、これは困ったぞ……。


 そう悩んでいると、私と敵を追いかけて屋根まで登ってきたのか、数人の騎士が丁度こちらに向かって走ってくるのが見えた。


 数は六人。これならば、捕らえた襲撃者たちを問題なく下に降ろせるだろう。


 あ、良かった。助かった――


 そう思った瞬間、騎士の一人が運悪く痛んだ屋根の一部分を踏み抜き、落下してしまう。

 そして、「うおおーっ!?」と驚きながら落ちていった騎士が今回の先頭であったため、後ろにいた他の騎士たちも「ぎゃあー!?」、「なあっー!?」、「ひえー!?」と巻き添えを食って次々と落下していく。


「おい、大丈夫か!?」

「今、助けて――」


 運良く巻き添えを食わなかった騎士二人が、落ちていった騎士たちを助けようと駆け寄った瞬間、一人が慣れない不安定な足場のせいで足がもつれて転んでしまう。

 そして、すぐ前にいたもう一人の騎士にタックルする形となってしまい、そのまま二人とも屋根に開いた穴へダイブしていったのだった。


 結果、騎士たち全員が穴に落ちてしまった。


 ――え、えぇ……。


 一連の流れを目撃してしまった私は、「嘘でしょ……」とただ呆然とするしかなかった。


 そして、私は我に返るとすぐに、助けに来た騎士たちを助けに屋根に開いた穴へと走ったのだった。

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