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面談

 学園に通うようになって早半年が過ぎた頃。


 今の学園生活についてヘリアンとサフィーアは、国王からいくつか問いかけをされるのだった。


「我が息子たちよ、以前お前たちが話していたメアリクス家の双子はどうなっている? お前たちは、あの者達の態度を改めることは出来たのか?」


 おそらく全てをすでに知っている上での質問なのだろう。

 国王は、楽し気な様子でヘリアンたちに訊いたのだった。


「申し訳ありません、父上。僕では、彼らの心を変えることは出来ませんでした」

「私もです、お父様。本当に申し訳ありません」 


 謝罪の言葉を述べる二人。

 それに対して、国王は朗らかに笑った。


「そうか、それならば仕方ない。上手くいかないことなど、この先いくらでもあるだろうからな。精進するといい」


 その言葉に、二人は頷く。

 国王は、満足気な表情をするのだった。


 そして、ヘリアン王子に対して話題を振る。


「時にヘリアンよ。お前は、まだ婚約者がおらぬ身。学園では良い相手は見つかったのか?」

「いえ、まだです、父上。これから時間をかけて探していきたいと思っています」

「お前はどうだ、サフィーア?」

「はい、私もお兄さまと同じです」

「そうか、まだ急ぐ頃合いではないが、早めに見つかることを期待しておるぞ」


 そして、国王は目の前の二人には聞こえないように呟いた。


「――報告を聞いている限り、我が息子たちもアーロンの双子とならば、それなりに仲良くやってくれそうなものだがなあ――」



 ♢♢♢



「カティア、レイン。もう半年だ。学園ではきちんとお役目を果たせているのかい?」


 書斎で、そう聞かれて私たちは「もちろんです」と答えた。


 紆余曲折あって、当初に想定していた計画とは全く違うことになってはいるけれど、まあ概ね問題はない。

 私たちはメアリクス家のお役目である『悪役』をきちんとこなせていると思う。


「それならば、結構だ。サイラスとマリーからも、お前たちはお役目を立派に務め上げている、と話を聞いている。これからも日々この国のため頑張って欲しい」


 私たちは、「分かりました」と頷く。

 大変なことも沢山あるが、私たちの頑張りが皆に認められるのが嬉しかった。


 そして、父は何かを思い出したのか「ああ、そういえば、カティア」と言葉を続ける。


 それに対して「はい、お父さま」と弟が返事を返した。


「マリーに聞いたんだが、学園では一部の学生たちから、ヘリアン第一王子の婚約者に相応しいと評判らしいね」


 それを聞いた途端、弟の表情がわずかに引き攣る。


 けれど、弟はすぐさま何事も無かったかのように微笑むのだった。


「はい、確かに一部の方からは、そのように言われているようですね。ですが、私としましてはそれは過分な評価だと思っています。それに、ヘリアン殿下とはあまり面識がありませんから、ヘリアン殿下が私をどう思われているのか今のところ分かりません。やはり、実際に婚約するにしてもヘリアン殿下の気持ちが大事だと思いますので」


 どうやら弟は父の会話を先読みして、先手を打つことにしたようだ。

 それに対して、父は――


「――そうか、私としては、お前が殿下と婚約する方が望ましいのだがな……」


 一瞬、盛大に表情が引き攣る弟。


 ――れ、レイン! 平常心! 平常心! お願い、落ち着いて!


 私は心の中でエールを送る。

 今の私では、どうすることも出来ない。


 ――お父さま、本当に婚約することになったとしても、少しだけ待ってください。猶予を下さい。入れ替わったままの私と弟が元に戻るまでの猶予を……。


 心の中で、そう願うしか無かった。


 弟は「ぜ、善処いたします……」と父に対して言葉を返す。


 その話題については、どうやらそれで終わりらしい。

 父は、私に向き直って、言ったのだった。


「ああ、レイン。そろそろ、お前も準備しておいた方が良さそうなので、言っておこう」

「何です、父上?」

「近々、殿下が遠出することになっている。その時、迎えに行ってくれないか?」


 遠出? 公務とかで、どこかへ行くのだろうか。

 それにしても、なぜ私?


 どうやら馬に乗って一走りしてきて欲しいらしい。


 それに関しては別に構わない。乗馬の訓練はしているので、馬はそれなりに扱える。問題は特にない。


 しかし、一体どういうことなのだろう。


 普通に騎乗するより、馬車の方が負担は少ないと思うけれど。


「場所は、後日教える。頼んだぞ」


 私は頷いた。



 ――そして、あの時安易に引き受けなければ良かったと、心の底から思うのだった。



 一週間後、ヘリアン王子が誘拐される事件が起こった。

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