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茶吉の日常

初夏の風物詩

作者: 茶吉

茶吉にとって、初夏の訪れを感じさせてくれる光景とは、

クロ美が、廊下の先で、ガレージの入り口でぶっ倒れている光景である。クロ美はもう若くないので、身体はすっかり老猫である。以前は漆黒の毛皮が黒光りしてたが、いまでは白髪がちらほら混じり、ところどころ禿げ、筋肉もすっかり落ちて身体はゴツゴツ骨ばって、関節はリウマチで曲がっている。そんな身体が、魂がすっかり抜けた状態で放置されていれば、見てしまった人はギョッと驚かされる。

クロ美だって、魂が中に入っている状態つまり起きている時には、背筋もピンと伸びた姿は凛々しく、また、シャンと座って、尻尾を脚くびに巻きつけて、長いまつげもピンと上向きにカールしていれば、繊細で可憐で涼しげな、絶世の美女に見えるのだが。

以前、一度だけ聞いてみたことがある。「クロ美は世界でいちばん美しい猫だね。どうしてそんなに美しいの?」と。

クロ美によれば、「わたしよりも美しい猫はコロしてきた」からなのだと言う。

「...え。こ、ころす?」

「わたしより若いメスはコロす、わたしよりかわいいメスはコロす。それは相手も同じこと。美しいわたしをコロす気でくる。チカラおよばず、コロされかけたわたしは死ぬしかなくて縄張りを追われこの家に逃げて来た。この世とはこの縄張りという意味。視界から去れば、死んだと同じ。」

「え?それじゃあ、ケンカ別れした相手は死んじゃったのと同じってこと?」と茶吉が聞くと、

「死んだ。」のだそうだ。

「え。でもさ、昔の恋人とまた再会したりするよ?そういえば、俺がよく行くコンビニのレジ係が変わったなと思ったらさ、俺の昔の彼女でさ、でもそれが今じゃあすげえ太っててさ、おばちゃんになってたのよ。」

「じゃあコロす。」

「いやいや殺さないってば。こっちだって禿げちゃってるしメタボだし、人のことは言えないけどさ、でももう昔の彼女ではなくなっちゃってたんだよなぁ〜。」遠い目で茶吉が語ると、

「それはコロしたのと同じ。」なのだそうだ。


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