事件ファイル♯13 暮れなずみの空。夏の終と謎の匣。(6/10)
「おべんと、おべんと♪」
ミラカが包みを広げる。
ちなみに、全員分のお弁当を彼女がずっと大切に運んでいた。我ら探検チームの食事大臣だ。
ぎっしりお宝のつまった箱を開けると、銀のおにぎりと金のだし巻き。
それに宝石のような煮物と、魚のミイラたる煮干しが姿を現した。
「わあ、このおにぎり可愛い!」
ウリュウさんが声をあげた。
おにぎりはタワラ型で、海苔を上手に切って顔が作ってある。
「おにぎりはおねえさんが作りマシタ!」
「ミサキちゃん、器用なんだねえ。可愛くて食べるのがもったいない……」
などと言いながらもウリュウさんは、さっそく顔の付いたおにぎりを丸かじりしている。
「お弁当、ちょっと練習したことがあって」
はにかむミサキさん。
「ミラカは卵を巻き巻きシマシタ! 煮物はおばあちゃん!」
「どれも美味しい……うっ!」
ウリュウさんはアレもコレもおかずを口に入れて、目を丸くして胸を叩いた。
「お茶もどうぞ」
ミサキさんが水筒を差し出す。
俺たちは山の斜面に腰掛け、村を見下ろしながらお弁当を食べた。
かつては栄えていたという鈴沢村。
川が流れ、それに沿うように人々が暮らした痕跡が残る。
水車や古びた酒蔵、家畜舎も見える。
彼らは自然と共にあったのだろう。山でイノシシや山菜をとり、川では魚、土は米や野菜を育てた。
食べ物ばかりじゃない。
人間社会的な豊かさではあるが、鉱山から出た金銀宝石だって自然の恵みだ。
散々世話になったというのに、それらすべてをダムに沈めてしまう、か。
「アッ、タヌキデス!」
ミラカが指さす木の下に、三匹の子を連れたタヌキが居た。
「可愛いねえ。なんだか親近感を覚えるなあ」
タヌキオヤジがニコニコして言う。ミサキさんがこっそり笑った。
「編集長、卵焼きをクダサイ!」
「エサにでもするのか? なんで俺のなんだよ」
俺は弁当箱をミラカから遠ざける。
「ミラカのはあげたくないので」
「正直すぎるだろ。ダーメ。野生動物だし、自分たちでどうにかできるだろ。公園のネコじゃないんだぞ」
「エー! エサやりしたいナー」
「だめだめ」
俺はだし巻き卵を頬張る。残るひとつは最後のお楽しみだ。
「デハ、ミラカが食べるのでクダサイ」
「なんでそうなる!」
俺が大声でツッコミを入れると、タヌキの親子は慌てて山の奥へと消えていった。
「あーあ、行っちゃった」
残念そうなウリュウさん。
「ネー、編集長」
ミラカがこっちを見ている。だし巻きはやらんぞ。
「このあたりもダムに沈んでしまうんデスヨネ? 動物たちはどうなるのデショー?」
斜面の上の村も立ち退いているから、ここもダムの範囲内なのかもしれない。
水がせき止められ水量がコントロールされれば、下流の生物にも影響が出るだろう。
「水が入れば一応は逃げると思うが、生態系が変わってしまうからな。適応できない動物は……」
「ソーナノデスカ……」
ミラカはタヌキの去ったほうに寂しげな視線を送った。
「代わりに栄える動物もいるかもしれないがな。人間も自然の一部だ。弱肉強食だよ」
ほんの気休めの言い訳だ。俺だっていい気はしない。
だが、割り切るしかない。俺たちが騒いでもどうにもならない。
当事者である村民たちが踏ん張っても計画は進み続けているのだから。
俺は苦くなった口をうるおそうと最後のだし巻きに箸を伸ばす。
……箸は空を切った。
「あれ?」
「ゴチソーサマデス」
俺の横では口をもぐもぐ動かしている小娘の姿が。
「俺のだし巻きを!」
「弱肉強食デス」
ミラカは口を開けて、咀嚼しかけのだし巻きを見せびらかした。
「そういえば、ダムに反対して頑張ってる人たちが最後まで立ち退かなかった場合は、どうなるのでしょうか?」
ミサキさんが言った。
「んー、昔はねえ、バブルのころは家を無理やり壊して立ち退きさせたりとかあったみたいだけど、今はどうかな。行政が絡んでるから役所の人が追い出しに掛かって、それを邪魔したら公務執行妨害で逮捕! とかになるんじゃないかなあ」
ウリュウさんが答える。
「そうなんですか。じゃあもう、ここが沈むのは、決まってるんですね」
村を見つめるミサキさん。
風が吹き黒髪を散らす。彼女はわずかにまぶたを伏せて指で髪を戻した。
「エメラルドの塊が見つかったら、お金の力でやめさせれるかもしれないよ!」
ウリュウさんはそういうが、実際どうなのだろうか?
仮にエメラルドが億を超える兆の額のシロモノだとしても、簡単に買い手がつくワケじゃないし、「ダムの事業に数千億増額」なんてニュースも見たことがある。
たしかにダムは生態系やその地に根付いた人にとっては悪かもしれないが、カネを動かすことによる経済効果もあるし、本目的である貯水や治水による災害対策など、単純な金額でトレードできるハナシでもない。
まあ、キーになってる政治家や会社役員に数十億円分の翡翠のカケラを袖の下すれば分からんが。
「関係者みんながお金持ちで、村の人も暮らせて、動物たちも死なない! ハッピーじゃない?」
ウリュウさんが屈託なく笑った。
本当に信じているのだろうか。そんな彼を見るミサキさんやミラカの表情も悪いものじゃない。
捕らぬ狸の皮算用だろうが、想像を巡らせて楽しむのも価値の一部か。
ダム予算に届くかくらいの大金を手にしたら、俺なら何に使うだろうか……?
「ウリュウさんは、財宝が手に入ったら何が欲しいデスカ? ミラカは自分専用のB・Tを作って貰いマス!」
「あはは、さっきも言ってたよね。B・T好きなんだね、ミラカちゃん」
ミサキさんがお腹を抱えて笑う。
「じつはね、僕は、財宝の使い道は決めてあるんだ。そんな、何億とか何千万とかいう大金は要らないんだけど……」
「ナンデスカ?」
「うん、じつはね。僕の姉に病気の娘がいてね。ちょっと難しい病気で。死んじゃうような病気じゃないんだけど、治すのにとってもお金が掛かっちゃうんだ……」
頬を掻く小太りのオジサン。
「そっか。ウリュウさんは姪っ子さんを治すために財宝を探しにきたんですね!」
ミサキさんはパッと笑顔を満開にする。
「う、うん。じつはそう。恥ずかしいから内緒にしてたけど」
ウリュウさんは赤くなって背を丸め、汗をぬぐった。
「全然恥ずかしがること、ないじゃないですか!」
俺はウリュウさんの背中を叩く。手が汗で濡れた。
「ヘヘ。じつはね、病気の都合で肌も弱いから、あまり外に出て遊べない子で」
ウリュウさんはミラカを見て言った。
サイトにも日光に弱いという設定や、日にやられて調子を崩したというエピソードが掲載されている。
「ミラカと似てマス」
「うんうん。でも、ミラカちゃんほど美人じゃないんだけど。姉も僕とけっこう似てるし。死んだおふくろやおやじも、なんでか姉の旦那さんも似てて。性格までみんな似てたり……」
ため息をつくウリュウさん。
「ウリュウさんはいい人ですから、みんないい人ですね!」
ミサキさんが笑顔で言う。
「そうかなあ」
ウリュウさんは照れ笑いを浮かべた。
「そうですよ」
ミサキさんは重ねて肯定する。
「……僕はね、子供のころからすっトロくて、何かに気づいたときには手遅れってことも多くって、あとで、ああすればよかった、こうすればよかったって、よく後悔しちゃうんだよね。だから、姪には子供のうちに病気を治してもらって、いろんなことを体験してもらいたいんだ」
ウリュウさんはお茶の入ったカップを抱え、遠くの空を眺める。
「今はあまり外で遊べないから、本やゲーム機ばかりだけどね。アシオ君とミラカちゃんのサイトも毎日見てるよ。僕が教えたんだ。『オカルト寺子屋』は、姪っ子にも安心して見せられるいいサイトだ」
彼は空から俺たちへと視線を移した。
「何だか、照れくさいですね」
今度は俺が頬を掻く番だ。
「単によいしょしてるんじゃないよ。オカルトってどうしても、後ろ暗い話や、物騒な話がでてきちゃうでしょ? 恨みだとか、殺人事件だとか。元を辿れば、病気の人を笑ったり、差別したのが始まりだったりすることもあるし……」
ウリュウさんの言う通りだ。
オカルトには、そういう他人の闇や不幸を楽しむという側面もある。
実際、それで飯を食っているのだ俺は。
過去にはそういったことに苦言を呈したお説教を賜ったこともある。
ミラカといっしょに更新するようになってから、そういう手合いは減った。妬みっぽい嫌がらせはたまにあるが。
だが、明確に飯のタネとなっている今、誰かにそれを突き付けられれば、ちゃんとした返事ができる自信はない。
「だから僕も、子供たちが笑ってる写真が載ってたり、呪いの儀式をした人を神社が赦したエピソードが載ってたりするようなアシオ君たちのサイトが大好きなんだ」
俺はウリュウさんのあまりにもまっすぐな視線に返事ができなかった。
「ヘヘ、アリガトウゴザイマス」
代わりにミラカが礼を言う。
「だから、この財宝探しの記事も楽しみにしているよ!」
「……はい!」
俺は心の底から返事をした。
それから数時間。陽が沈みかけ、夜のとばりが村を覆い始めたころ、事件は起こった。
昼食を終えて屋敷に戻り、ミラカとミサキさんはバアさんの手伝い、俺は今日の出来事をノートパソコンにまとめる作業、ウリュウさんは本の解読の続きに取り掛かっていた。
そこに、奥只見のメリーが駆け込んできた。
「ねえ、トクヤマさん、帰って来てない?」
彼女は息を切らし、塗りたくった化粧が汗で崩れるのも気にしていない。
「見てませんよ。俺たちが帰って来てからは、誰も戻って来てません」
「アタシたち、秘密の扉……じゃなかった。匣を手分けして探してたんだケド、落ち合う予定の場所にいつまで経っても戻って来ないのよ!」
やはりカギを持ち出していたのだろう。持ち逃げでもされたか?
「財宝を見つけて持って逃げたとか?」
ちょっと意地悪をしてみる。
「……アッ! それは考えなかったわ。あのハゲオヤジならやりかねない! ……でも、もしかした襲われてどこかでぶっ倒れてるかもしれないのよ!」
「あはは。サスペンスドラマじゃないんだからあ」
騒ぎを聞きつけてやってきたウリュウさんの笑い声。
「倒れてるだけならまだいいわ。殺されてるかもしれないのよ! っていうか、絶対殺されてるわ。アタシ、霊感が強いほうだから分かるのよ」
「霊感じゃなくて、証拠で頼みますよ。何か根拠は?」
騒ぐばかりじゃ何も分からん。面倒だが訊ねてやる。
「誰かがアタシたちをつけてたのよ。アタシ、怖いから黙ってたんだけど、ふたてに分かれたときにはもう居なかったの。だから、トクヤマさんのほうをつけたんだわ」
メリーは部屋の中で右往左往する。
「誰がつけてたんだろう?」
ウリュウさんが訊ねる。
「分からないわ。でも、絶対つけられてた。アタシたちを目の敵にしてる村の連中か、……あの陰気クサい男! タカセよ。そうよ! きっとアイツだわ! アタシたちが宝の部屋のカギを手に入れたから、それを奪おうとして! わざわざ殺してでも奪ったのは、部屋の場所を突き止めていたからだわ!」
ぎゃあぎゃあ言うメリー。
化粧を崩して髪を振り乱す姿は現代のヤマンバか。
「宝の部屋? 秘密の扉? ……カギ?」
俺はワザとらしくカマを掛ける。
「うっ……。白状するわ。アタシたち、お昼ごろに蔵を探っていたら、カギの束を見つけたのよ。お宝探しで蔵からカギなんてドンピシャじゃない? だから、ふたりして屋敷のあっちこっちでカギを試したの。そしたら、いくつか正体不明のカギがあって……」
「あれはお屋敷の古いカギだよ」
ウリュウさんが笑う。
「フン。そんなの見たら分かるわよ。でも、カギを使ってあっちこっち屋敷を漁っていたら、別のカギが出てきたのよ。古ぼけた箱に入ったカギがね。ご丁寧におフダまで貼ってあったの。それで、そのカギの合う場所を探して今度は屋敷の外にも範囲を広げて探してたってワケ」
「それ、本当!?」
ウリュウさんが声をあげる。
俺たちが隣村で浮足立っていたころに、メリーとトクヤマは匣へと近づいていたらしい。
中身は開けてみればわかることだ。彼らの体当たりの捜査のほうが上手だったということか。俺もヘコむ。
「とにかく! 大事なカギが奪われるか持ち逃げされちゃうのよ! トクヤマを探すのを手伝って!」
「なんだい、騒々しいね」「ドーシマシタ?」
台所からミラカとバアさんがやってくる。
「なんか、トクヤマさんが行方不明だとかで……」
俺はふたりに事情を話した。
「ふーん。ま、村のヤツがトクヤマのバカを殺したということはないだろう。疑うならタカセの幽霊のほうだね。アイツはどうも気色が悪い」
「そんな、堂々と言っちゃいますか。それに、まだ死んだと決まったわけじゃ」
俺はバアさんの遠慮のなさに苦笑いした。
「田舎じゃ他人は疑って掛かるもんさ。疑いを晴らすために挨拶や普段の付き合いだってマジメにやるんだ。タカセはそれを怠ってるからね」
バアさんは真顔で続ける。
「でも、人殺しが潜んでるとなると、ミサキが心配だね」
「え? ミサキさんはいっしょじゃ……」
俺は背筋に冷たいものが走った。
「ああ、言ってなかったっけ? ミサキちゃん、気が変わったみたいで、もう一度お母さんのことを訊ねてくるって、出かけてったんだ」
ウリュウさんが言う。
「何を呑気な! じゃあ探さないと!」
「アシオ君、落ち着いて。ミサキちゃんはヒントになる物を何も持ってないんだよ。仮にタカセ君が犯人だとしても、襲われる理由がないよ。村の人だっていっしょなんだし」
「どちらかというと、パズルを持ってるオジサンのほうがヤバいデスネー」
ミラカも慌てていない。
「パズル? 何それ、アタシそんな話聞いてないんですケド!? 情報は共有しましょーよ!」
メリーが口を尖らせる。どの口が言うんだ。
「ギャーギャーうるさいよアンタたち!」
ナラマタのバアさんの一喝!
「……いいかい。とにかく、あたしは役場に詰めてる連中のところに走る。そこにミサキやトクヤマが居なけりゃ、人手を集めて山狩りをする。暗くなってるから時間がない。もしも、悪いほうの予想が当たってる場合、探せる時間は限られてるんだ。死んでなくとも、ケガでもしてれば生死を分けることになるからね。オクタダミ、アンタはあたしと役場に来な。それから、残った連中は先に屋敷の付近を探しといてくれ。いいかい? 絶対に単独行動をするんじゃないよ!」
そう言うとバアさんは、まごつくメリーをひっぱたいてから腕をつかんで出ていった。
「よし、じゃあ、俺たちは近所を探そう」
ミラカと俺の顔を見合わせうなずく。
「ちょっ、ちょっと待ってもらっていい?」
ウリュウさんから待ったが掛かる。
「どうしました?」
「ずっと言いそびれったんだけどね。メリーさんも居なくなったし、ふたりにだけ話すね」
「ナンデスカ?」
「じつは、パズルの箱、帰って来たら無くなってたんだ。持ち歩いてはいないから、誰かに盗まれちゃったんだと思う。たぶん、タカセ君かキンさんかメリーさんかなーって……」
「急に情報量が多いな。とにかく、箱は後回しです! ミサキさんたちが心配だから、そっちを先に探しましょう!」
「僕はここに残るよ。どっちかが帰って来ても困るでしょ」
「単独行動はよせって言われたでしょう!?」
「そーだね、うん。ヒントの箱を無くした罪滅ぼしってワケじゃないけど……」
ウリュウさんはうなだれる。
が、表情を一変させて「ダイジョーブ、ダイジョーブ!」と笑った。
俺とミラカは反対を繰り返したが、沈むのを待たない陽を追い掛けるように屋敷を出ることとなった。
外灯もろくになく、無人の家屋の多い鈴沢村。
俺は懐中電灯の光を頼りに屋敷の周りを見回る。
「ミラカ、手を離すなよ」
「ハイ! むしろ編集長が迷子にならないように気を付けてクダサイ! ミラカ目もいいし、鼻もいいデスヨ!」
鼻をすんすん鳴らすミラカ。
俺たちは広い屋敷をぐるりと一周し、それから塀の外周の探索に移る。
「ミサキさーん。トクヤマさーん!」
「おねえさーん。ハゲのオジサーン!」
「ミラカ、それは失礼だろ」
「ヘヘ、怒って出てくるかと思いマシテ……」
耳を澄ませてみるが、「コラ」も「ぶっ殺すぞ」も聞こえてこない。
「返事はないな。ま、返事ができないだけかもしれないが」
俺は歩き出そうとする。手に抵抗。
「ん、どうしたミラカ」
ミラカを見ると、顔から笑みが消えていた。
彼女は鼻をひと鳴らしすると、俺の手を引き早足で歩き始めた。
「何か嗅ぎつけたか?」
ミラカは鼻がいい。とりわけ、血のニオイに関して。
「ハイ……。正直、あまり嗅ぎたくないニオイデス」
塀から離れ、木々の生い茂るほうへと踏み入れる。
「私、こんなに濃いのは久しぶりです……。どうにかなってしまいそう……」
ミラカがむせ返り、汗ばんだ手で俺の手を強く握りしめた。
俺は彼女を引き寄せて背をさすってやる。
「大丈夫か? キツイなら無理するなよ。大体の場所でいい、あとは俺が探すから」
「……アリガトウゴザイマス。頑張りマス」
ミラカは再び歩き始めた。それから二、三歩行っただけで足を止めた。
「編集長、ライトを貸してクダサイ」
俺は懐中電灯を手渡す。茂みを覗き込むミラカ。
そして、闇に呑まれた森の地面を電灯の光がなぞった。
土に吸われながらもそれと判別できる、血濡れの跡。森は蒸している。
臭気が俺の鼻をつく。ミラカでなくともむせ返る、濃厚なニオイ。
どこかでセミの声。ヒグラシ。
身体が警告するが、電灯は容赦なく太った男の身体を照らし出す。
「……!」
トクヤマは、天に向かってまぶたと口を大き見開いたまま、その表情を凍り付かせていた。
********




