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仮想現実の魔獣使い  作者: 綾川智樹
1/2

魔獣使い始めます!

まだ始めの方なので話は大きく進みません。

そこそこのペースで書いていきたいと思うので評価を頂ければ幸いです。

 教室の前から後ろへと並べられた長机と椅子には、緊張した面持ちの少年少女たちが座っていた。魔力で浮き上がっている教室正面の映像には、スピカの二つ左に座っている少年の顔や身長などのデータが映し出されている。当の少年はそわそわと落ち着かない様子で画面を見ている。映像の横で腕組みをし、硬い表情で生徒たちを見つめる女性は、笑みを浮かべたかと思うと高い声で告げた。

「ラス・シンフォールド。前衛兵-剣術コース!」

 一瞬、教室の空気が震えた。少年の周りからは感嘆のため息が聞こえ、名前を呼ばれた本人も嬉しさを噛みしめるようにこぶしを強く握りしめている。


 近年諸国間で行われている仮想現実戦闘。通称VRFは、現実の自分が完全にバーチャル世界へと投影される。己の肉体から足の速さ、知性、魔術能力。その他すべてのものがそっくりそのままである。その点で、敵と戦闘になった際もっとも観客からの注目を浴びるのが剣術使いである。魔術使いなどは本人ではなく魔法の発動先へと目が向けられる。そう言った意味では目立ちたがり屋が前衛兵に向いているともいえる。何はともあれVRFの花形は剣術なのである。

 この戦争の絶えなかった世界はVRFの誕生で大きく変わった。以前は各国で戦争が数百年に続いて行われ、いくつもの国が栄えては消えていった。戦争がこれだけ続けば誰もが辟易し、戦争の無意味さに気づいている。毎日誰かが死に、悲しみに暮れる。しかしこれは麻薬である。仲間が死ぬと悲しむ一方で相手を憎む気持ちが生まれる。止めるべきだとわかっていても止められない。これが未来永劫続いていくと思われていた。

 ある中立国の魔術師団体は、この麻薬的感覚を人々の中から奪い去るのは不可能だと考え、仮想現実世界に人々を一時的に移す魔法陣を創り出した。戦闘者は国が用意した魔方陣に入り、詠唱することで仮想現実世界に意識ごと入り込むのである。

 当初は誰も魔方陣に見向きもしなかったが、中立国の努力もあり徐々に浸透していった。始めは実際の戦闘に対する訓練として使われていたようだが、同盟国間で共同訓練として使われるようになり国から国へと伝わっていったようだ。諸国の皇はVRFで土地の権利から資源、ありとあらゆるものの所有権が決定されることを飲み込み、調停を結んだ。

 それ以降500年に渡り、国と言えない小さな民族間での戦争はあるものの、大きな国同士での戦争の歴史は幕を閉じた。

 

 張り詰める空気の中、スピカは画面に映し出された自分の情報を見つめていた。この時のために田舎の村から出てきたのだ。VRF専門校に通って無事に卒業できれば将来の安定は約束されているようなものだ。正直なところ、スピカの生まれたフェルト共和国の情勢は悪い。VRFで負け続け、諸国に資源や食料を奪われ続けている。仮想戦闘の誕生によって死ななくなった人たちで国は溢れかえり、物資と人口の調和がとられていない。共和国はこの状況を打破すべくVRFで勝つために専門校をいくつも建て、生徒や卒業した戦闘員には多額の金をかけている。

 スピカが入学したフェスティック専門校は歴史の深い学校であり、VRFの誕生前から続いている。つまり、実践訓練をしていた学校が時代の流れに合わせてその形態を変えたのである。ここでは1年間の戦闘訓練、適性検査を経て2年目が始まる前にコースが言い渡される。

 今日がその日なのである。

 スピカは両目をぎゅっと閉じて祈った。

(お願いします!1年間の厳しい訓練に耐えてきました。なので私を後衛兵-魔術コースに進ませてください。無理なら弓術でもいいです。後ろの方で楽をしたいです。だから…だから…。)

 そしてコースが告げられる。

「スピカ・ブラン。前後衛兵-獣使いコース!」

 ガタッと大きな音を立てて立ち上がってしまった。教官の口元に笑みはない。大きく周りを見回すが周りの生徒たちは気まずそうに下を向いている。

「スピカ・ブラン。前後衛兵-獣使いコース!分かったら座らないか!」

「エ…エッーーーーー!?」

 高く大きく怒気を孕んだ声で教官が叫んだが、それに負けないほど大きな声でスピカは叫んだ。



 


 

 

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