一話:今日の朝
ジリッリリッリ…ジリッリリリッ
枕元の目覚まし時計が鳴り出した。電池でも切れかけているのだろうか、ひどく調子外れで不規則なリズムを刻み決して正常とは思えない音がする。
とりあえず布団を上げて、上半身を起こす。眠たくてまだ周囲はぼんやりとしか映ってなく、そんな目をこすりながら時計のスイッチを切る。
携帯電話のメールをチェックしようと携帯を開いた。その瞬間、ふと不吉なものが目に入ってきた。
「A.M.10時25分」
そっと布団を掛け直して目蓋を閉じた……………
「って現実逃避かよ!!」
いきなり布団を引き剥がされて、誰かと思えば我が弟の友也だった。
「おお、このかっこいい兄ちゃんのためにわざわざ起こしに来てくれたのか!」
「兄さん、今日もいつも通りキモイね。」
……ぐさっ、そんなに爽やかな笑顔で、そんなことを、そんなにさらりと朝から言われるなんて(泣)。
「まぁ、冗談はいいとして早く学校いったほうがいいと思うよ、せめて午後の授業だけでも受けてきたら?」
「ほっ、やっぱりさっきのは冗談だったのかやっぱりお前はかわいいなぁ」
「うん、さっきのは冗談だったよ『今日もいつも通り』の部分が、正しくは『今日は群を抜いて』だね。」
…ぐさぐさっ、(くそ、精神的ダメージが大き過ぎて耐えきれない、頑張れ!俺!)
ガチャ、俺が泣きそうなのを必死に我慢していると部屋のドアが開いた。
「友也、さっさとお兄ちゃん起こしてきてって言ったでしょ」
「涼、そんなこと言ったって仕方ないじゃないか、だって兄さんキモいんだもん。」
「何言ってるの!?」
(さすが我が最愛の妹、涼。友也と違って俺のことを尊敬してるにちがいない)
「お兄ちゃんがキモいのなんていつものことじゃない!」
「ごめん、それもそうだね。すぐに強行手段を取らなかった僕が悪かったよ」
…ぐさぐさぐさぐさっ(駄目だ!心の痛みが許容範囲を越えた、もう立ち直れない)
「「あっ」」
「友也がひどいこと言うから遂にお兄ちゃんが泣いちゃったじゃない」
「涼のせいだろ、僕は加減したほうだよ」
「うっうっ、グスグス」
「仕方ないないな〜、ごめん兄さんちょっと言い過ぎたよ」
「うん、お兄ちゃんはそんなにキモくないもん」
「ところで、なんでこんな時間にお前らが家にいるんだ?中学校行かなくていいのか?」
((立ち直り、早!!))
「え、えーと、最近学校で風邪が流行っててそれで今日は学級閉鎖なの」
「ふ〜ん、そうか〜」
「っていうか兄さん、学校行かなくていいの?そもそもなんで平日にこんな時間まで寝てたの?」
「そう、それなんだよ!何故か時計が壊れてて時間が遅れてたんだ」
「なんか、お兄ちゃん昨日から災難続きね」
「うっ、そのことは言わないでくれ、人間には誰にでも忘れたい過去というものがあるんだ。」
「何勝手にシリアスな雰囲気作ってるのよ」
友也がちらっと時計のほうに目をやった。
「兄さん、もう11時だよ」
「ヤバっ、さすがにもう休もうかな」
「ふーん、今日の晩御飯いらないんだ。」
「行ってきまーす!」
((わかりやす!!))