その2(全5回) 天の時、地の利、人の和、この三拍子をそろえる
話は少しさかのぼる。
シャオ隊長と、その仲間たちは、「即席の城」作戦での軍功により、まずは傭兵として、北部辺境守備軍の軍人として取り立てられることになった。
「本来なら、きちんと推挙して、帝都で査問を受けさせたいところだが――」
フミト皇太子は、採用辞令交付式の場で、「傭兵代表」のシャオ隊長に言った。
「――今はひとりでも多くの使える人材が欲しいところだ。きみらにここを離れられては困る。中途半端で申し訳ない」
「いえ、どうか殿下、気になされないでくだせい。こうして採用されただけでも幸せです――であります」
「うむ。軍功をあげれば、正規兵への昇格もあり得る。しっかり励めよ」
ヤマキ中将が言う。
「へぇい。分かっておりますともよ、副司令官閣下殿」
あからさまに無気力な返事をするシャオ隊長。
「ぐぬぬっ、貴様ぁ……」
「とにもかくにも、殿下のご期待に添えますよう、全力を尽くしますっ!」
「ははは。よろしく頼むよ」
かくして、シャオ隊長たちに与えられた最初の任務は?
『シャオ傭兵隊長は、みずから会長となり、民族自治会を組織し、捕虜たちの福利厚生の向上に努めよ』
つまり、捕虜たちの世話役みたいなものだ。
司令部で任務を通達されたシャオ隊長は、その足でクリーのところに向かった。
クリーの住居は、城塞都市内のアパートにある。そのアパートは、北部辺境守備軍が丸ごと借りあげてくれたもので、そこにアルキンと百人隊の戦士たちも住んでいた。
シャオ隊長がクリーの部屋を訪ねると、アルキンが出迎え、クリーの私室まで案内してくれた。シャオ隊長は、クリーに相談があるらしい。
「なあ、軍師殿、殿下はオレら捕虜のことで、困ってんだろ?」
「うん。すごく困ってる」
「だったら、オレらがうまく捕虜たちを世話すりゃ、殿下は助かるよな?」
「うん。助かると思う」
「そっかぁ。助かるかぁ。ふふふ」
シャオ隊長は、ひとりでうれしそうにしている。
「実はなぁ、オレはよぉ、殿下に惚れたちまったんだ」
「!」
クリーは、ぎょっとしてシャオ隊長の顔を凝視する。
その顔は真っ赤だ。そして、ぽつりと言う。
「……ボーイズラブ?」
「はい?」
しばしの沈黙。
「おい、おい、おい。なに言ってんだよ、軍師殿。かんちがいすんなよ」
あたふたするシャオ隊長。
「これは、シャオ隊長が殿下を尊敬しているという意味だ」
アルキンが、ほほ笑みながら言った。
「そ、そうか……。ごめんなさい」
「ったく、軍師殿は、どこまでウブなんだよ――」
ひとり納得するシャオ隊長。
「――ともあれ、オレは殿下を尊敬している。だから、殿下の役に立ちたいと思っている。だけどよ、オレには知恵がねぇ。それで頼みだが、知恵を分けてくれ」
「そう言われても困る。ない」
「おいおい、冷てぇなぁ。オレら友だちだろ?」
「友だち? ありがとう。うれしい」
ニコッとするクリー。
「へぇ、軍師殿も、そういう顔ができるんだな。……って、違う。なんかあるだろ? ほら、成功のヒケツとかよぉ」
「成功のヒケツ……。そう言えば、成功するために必要なことは、グッドタイミングをつかみ、ベストポジションに立ち、チームワークをよくすることだ、と教えらえたことはある」
「おお、あるじゃねぇか、出し惜しみすんなよ。で、どうする? これで、どうすりゃ、殿下の役に立てる?」
「わたしは、政治のことは分からないけど、みんなが困っているので、ちょっと考えてみたことがある。まちがっているところがあれば、教えてほしい」
クリーは、そう前置きしたうえで、思いついた作戦を話して聞かせた。
「おお、それ、いいじゃねぇかよ。ありがとよ」
シャオ隊長は、クリーの説明を聞き終えると、うれしそうに言った。




