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全銀河宇宙大戦 決戦開始⑦

猫族の族長のアシュバスは無事に救い出された。しかし戦いはまだ佳境です。

4-4-12  全銀河宇宙大戦 決戦開始⑦


 宇宙の艦隊行動は海中の魚の群れに似ている。帯状に、球状になって“敵”と戦うのだ。そして魚の群れと同じく、弱ったものは集団から離れていく。それを助けられるものはいない。

 今、猫族総旗艦アシュバスガは艦隊から離れ、宇宙の深淵に向けて沈んでいこうとしていた。


 龍族艦隊旗艦シヴァイガの戦闘艦橋ではその様子がモニターされていた。戦闘艦橋にいる猫族の四人は食い入るように見つめている。彼女たちにとってアシュバスガはただの職場ではなかった。仲間や家族と過ごす家でもあったのだ。またシヴァイは知らなかったがアシュバスにとっては祖母と母から引き継いだ歴戦の戦艦でもあった。改修に改修を重ねてきた猫族の象徴。それを沈められた悲しみと怒りは深く巨大であった。

 アシュバスの歯ぎしりの音が聞こえる。声を押し殺し、流れる涙を拭こうともせず彼女は消えゆく自分の家を見つめていた。

「全員、アシュバスガに敬礼。」

 シヴァイの声が静かに響き渡る。戦闘艦橋の全員が手を止めて拝礼をする。

「シヴァイ、ありがとうにゃ。」

「その怒りを、一緒に“敵”にぶつけましょう。」

アシュバスガの最後の光が大きく輝いた。


 戦闘は激しく続いている。龍族と猫族が停滞していた間、鎧獣族の堅牢さが全体の崩壊を何とか防いでいた。しかしそれも限界が近づきつつあった。

「ガネーザ閣下、お待たせした。アシュバス様は無事に救出出来ました。」

「おお、それは重畳。戦線復帰をお待ちしていましたぞ。」

シヴァイの通信に喜びを隠さないガネーザであった。彼は全艦隊に声を張り上げる。

「皆のもの、アシュバス様は健在なり。これからシヴァイ閣下が魔術を見せて下さるぞー。」

 それが届いた各艦の各所で喜びの声が上がった。部下の士気ひきあげる名将の一言である。

 戦艦シヴァイガでは指揮官が苦笑いをしていた。

「ハードルをあげられてしまいましたね…。」

「でも事実にゃ。ここから大逆転する作戦をもっているはずにゃ。」

「ハードルを上げる人しかいないのか~。」

 “敵”艦隊はまだ味方の数倍を残している。味方艦の活動限界点は目の前に差し迫っている。艦員の気力と体力、そして弾薬は無限ではない。

「では、最後の仕込みに入りますか。銀髪さん、各艦隊の状況を教えて下さい。」

 その声に間髪おかず膨大な、様々なデータがシヴァイの脳に注ぎ込まれる。真の“妖精”だけが出来る能力である。

「7,8、9艦隊はもう無理ですね。アソオスさんのお父上は流石、まだ七割を残していますか…それでも足りないか…。」

 勇猛を誇るヨンガンの第1艦隊はシヴァイの艦隊と肩を並べて戦い続け、損耗率が高い。シヴァイの期待が一つ失われたわけである。そのかわりにアソオスの父、イビオスの第5艦隊が作戦に使えると再計算をするシヴァイであった。

「いや、それでも足りない…。」

 戦闘不能になった艦には下がれと命じているシヴァイである。命と引き替えの特攻は消して許さないと彼には相応しくない強い態度で常に命じている。今急速に味方艦は減りつつあった。残された艦艇で最後の総攻撃は難しい。正直、困り果てているシヴァイであった。そこに聞き慣れた声が届けられる。

「お待たせしました。シヴァイ閣下、第2艦隊リュトゥー、参陣いたします。」

 戦闘艦橋に、「おおー」と喜びの声が一斉にわきあがった。その言葉通りに、第2艦隊は強烈な火力で“敵”艦隊の数を減らしていく。たちまちシヴァイ、ヨンガン艦隊の隣に位置し、戦線を支えるリュトゥー艦隊であった。

「リュトゥー閣下、アフマール様の近衛の役割はいかがした?」

「ヨンガン様、そのアフマール様より直々のご命令でした。『余は最後衛である。前線の兵全てが近衛である。助けに行け。』とのことです。」

「…ありがたし。」

 その通信を聞いている間に、シヴァイは作戦を再構築し終えた。最後の一撃を最大限に発揮する駒がそろったのである。シヴァイも通信に入る。

「リュトゥー殿、お力をお借りする。」

「シヴァイ閣下、全力でお応えいたします。」


 幅広く帯状に広がっていた“敵”艦隊に一瞬のとまどいが生まれていた。自分たちより少ないの相手が半包囲隊形に移行しつつあるのだ。ピラミッドを逆さまにしたような隊形で包み込むには数があまりにも少なすぎる。その層の薄さは絶好のチャンスに思える。“敵”艦隊も集中攻撃に向けて、戦闘隊形を変化させることにした。


 龍族、猫族、鎧獣族の各艦では艦外情報員の声が一斉に響き渡った。

「“敵”艦隊、密集隊形に移行中です。大戦艦級を中心に固まっていきます。」

 シヴァイはつぶやく。

「やはり、“敵”は“虫”なんですかねぇ。集まる習性があるように思える…。」

それが聞こえているかのようにリュトゥーの声が届く。

「シヴァイ閣下、打ち合わせ通りになりそうですね。“敵”の中心部、大戦艦級に向けて、作戦を開始いたします。」

「うん。ただし、お得意の料理でもいつもいつも出していると飽きられてしまうかもしれない。ひと味変えていきましょう。」

「了解です。」

未だ、倍以上の無傷に近い“敵”艦隊にシヴァイの作戦は通用するのか。最終決戦が始まる。


 日本は宇宙人に侵略されました。宇宙の戦いはまだ決着がつかない。


ご訪問ありがとうございます。

新しいキーボードに慣れず、なかなか筆が進みません。それでも頑張って定期更新に努めますので、今後もよろしくお願いいたします。

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