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戦い終えて

ダンゴムシとの戦いは終わった。しかし、戦士たちに休息はない。マクラナルドでの戦いが始まる。

5-2-⑧   戦い終えて


 宇宙局前のマクラナルドに僕は居る。

 前回と同じように宇宙局に呼び出され、感謝状と特別手当の明細用紙を受け取った。その明細はバイト料を偽装していたが、けっこうな金額で頬がゆるんだ。そのあと自衛隊の人たちにゴニョゴニョと言われたが、なんとか躱して、あわてて退室する。丁度そのときに携帯通信機が振動したので見てみると、幼なじみから「局前のマクラナルドに来ること」とシンプルな命令文。彼女だけならブッチも出来るが、背後に数名の気配を感じるとそんなこととても出来やしない。僕は注文カウンターに向かっていた。

 最近はマクラナルドも高くなっていて、男友達とだと「牛」系の店の方がコストパフォーマンス的に頻繁に利用するようになってきている。ハンバーガーなんて女子供のものである、とまでは言わないが利用頻度は落ちたなー。とか考えつつ、テリヤキとポテトLサイズ、コーラのセットを注文する。けっこうな金額になるが、バイト料も入ったことだし、たまの贅沢と考えよう。

 1階席を見渡してもいないので、前回と同じかと2階にあがる。いた。村上さんとまにゃ…石尾さんはうちの高校の制服だ。茶色の制服は伊庭さん。センスのいい、かわいらしい服装は豊根さん…女の子三人がキャッキャッと騒いでいる。あの輪に入っていくのは男子高校生としてはためらいを感じるのだが…。

「あ、来た来た。」

「よっ、最強の民間戦闘員!」

「まぁ、座りなさいよ。」

「何を今更遠慮しているの?」

 うわー名簿順に個性溢れる一言ずつが飛んできた。親愛にも満ちているが、同じくらい「からかい」もたっぷり。安物のコーヒーのように甘いんだか苦いんだか、わかんねー。

四人テーブルの横に腰を下ろす。その四人テーブルにはいくつかの新聞が開かれている。どこかで買ってきたのだろうが、スポーツ新聞を大量に買い込む女子高生かぁ、と溜息が出た。

「えーと『高校生戦闘員、見事に“敵”を撃退』だって。」

「こちらはねぇ『素晴らしい手際、市民にも戦闘員にも被害なし』とベタ褒めよ。」

「うふふふ『その人物は聡明なだけでなく、長身でハンサムの一高校生…そんな人は私の幼なじみにいないけどねー」

 大絶賛の記事でこんなにからかわれるなんて、考えたこともなかった。前回はもみくちゃにされて何が何だかわからないまま時間が過ぎていったが、今回は必死で躱したはずだ。自衛隊さんも「プライバシー」とか「今後の戦闘のため」とか言って、匿名にしてくれたはずなんだけど、マスコミは容赦がない。名前こそ出さないまでも小学校の卒業文集までさらけ出してくれた。ほんとに…マスゴミめ。

「えーと、この新聞は辛口よ『ダンゴムシとはいえ、宇宙人である。戦闘前にコミュニケーションはとれなかったのであろうか』だそうよ。」

「ダンゴムシと語り合えるか!!」

思わず会話に入ってしまった。

「うん。さすがサンゴ新聞ね。どこかに無茶なケチをつけてくるわねー」

女子大生は辛辣にコメントした。まったくだ。あんなモノとどうやって会話するんだ。お前らがして見ろと言いたい。

「俊、不機嫌ね。バイト料いまいちだったの?」

無造作に僕の右ポッケに手を突っ込み、明細書を取り出す。僕がそっちのポッケになんでも突っ込むことをこいつは知っているのだ。

「うわー。けっこうな金額じゃない。ここ、おごってね。」

「ごちそうさまー」

「ホント、私よりも多いわ。大隊長ってことでいい金額だと思ったのに。」

「さすが、最強の高校生ね。」

 不機嫌顔に拍車がかかる。拍車ってなんだ?「乗馬用の靴の踵に付いている突起。馬を刺激して速度を速めさせるのに使う」と、どこからともなく脳に知識が注ぎ込まれた。パンダ先生は近くにいるみたいだな。

「どうしたの?」

「かわいい女の子たちに囲まれているのに…」

「この四人だったら両手に花どころか全身お花畑みたいなものよ~。」

「今更、照れてるの?」

確かに。ビジュアル的には…両手に花です。クールビューティに眼鏡っこ、そばかす美人にきれいなお姉さんと個性豊かな四人です。でもね、どの花にもトゲが満載では、男子高校生一人では太刀打ちできません。

「なんだ、花が足りなければ、私も入れていいぞ。」 

返す言葉がなくて、また溜息をついた僕の目の前にもう一人の美女が現れた。野性味溢れる、長身のモデル系だ。外国人の顔つきであるが、この人は宇宙人のはずだ。

「あ、フー・スーさんも終わったんですか。」

「うん。諸手続は終わったのだが…石尾殿、本当にいいのか?」

「ええ。姉が嫁いで一部屋空いているから大丈夫です。お母さんも大歓迎だって言ってました。お父さんは美人に弱いし。」

何がどうなったのか、フー・スーさんは、まにゃの家に下宿するそうな。身の回りに美人が増えるのはうれしい。僕の目はうれしいと言っている。しかし

(この人、サーベルタイガーに変身したよなー)

 自衛隊とか、宇宙人とか、“敵”の“虫”とかと出会うようになったけれど、僕の感覚はまっとうな男子高校生のままだ。かわいい子や美人とお知り合いになれてうれしい気持ちは正直山盛りだけど、その人たちが戦闘力も山盛りでは、手が出せないというか、どうしていいのか。

「私の見る所、俊クン、だけでなく女子四人も見事な戦いっぷりだった。あの見事な手際は我が軍の中でもなかなか見られないレベルであった。」

 フー・スーさんは、日本を支配している宇宙人とは異なる種族だそうな。協力して“敵”と戦っているので問題はないとのことだが…そのあたりが一高校生にはよく見えていない。自衛隊のみなさんも、龍族の外交官さんもフー・スーさんにはえらく気を遣っていた。よっぽど階級が高いのかな?

「で、ここに五人に集まってもらったのはほかでもない…。」

 フー・スーさんのトレイにはバーガーが山盛りだ。彼女はこの地球を調査しているそうだが、今日はマクラナルドを全品完食するつもりなのだろうか。

「俊クンだけでなく、他の方々も、我が軍に入隊してはどうだろうか。」

 そのあと彼女が語った内容は、自衛隊の人たちもまだ知らない内容だそうな。現在地球には龍族の宇宙戦艦が最低限しかいないこと。銀河の片隅でかなり大きな大戦が繰り広げられていて、龍族はその最前線に立っていること。今回世界の各地がかなりの被害を受けたのは龍族の手が回りきっていないから。などなど。

「キミたちが家族や友人を守るために頑張ってることは承知している。だが、宇宙空間や大気圏以前で“敵”のシャトルを撃破しないことには、地上で完全勝利するのは難しいのではないか?“敵”の本隊はあんなものではない。数億から数百億の数が降下してくると、いかにこの五人でも…」

 そうだ、“敵”はまだ偵察部隊に過ぎない、と龍族の宇宙人さんも言っていた。自衛官のみなさんも青い顔で肯いていた。そんな大量の“敵”の“虫”に対する戦略は確かに想像もつかない。

「私は姫君に上奏した。『地球という星に、おもしろい存在を発見した』とね。キミたちが我が軍に入り、宇宙で活躍してくれるならば、龍族の代わりに虎族がこの地球の警護役を引き受けてもいいと虎姫様はおっしゃった。龍族と我が虎族が連係すれば、地上に“虫”どもは一匹たりとも降下させないはずだ。」

これを聞いて、アイスコーヒーを飲み終えた村上さんがつぶやいた。

「フー・スーさん、けっこう強引ですね。」

「うん。私はキミたちを見て新鮮な感動を覚えたからね。この地球はおもしろいことがいっぱいあるが、キミたちは最上級だ。」

伊庭さんと豊根さんが目を合わせる。

「私は、このメンバーならどこにでも行っていいけどね。」

「うん。私の方が年上だけど、村上さんは頼れるし、戦場の俊クンはカッコいいよ。」

いやぁ照れるなぁ。

「…私の力は、俊クンのひらめきを現実的に対処する能力です。俊クンが着火してくれた種火を大きくしているだけです。」

「俊クン、みんなこう言っていますが、どうする?アンタが決めることになりそうよ。」

 えっ、え?

フー・スーさんが僕の方を見る。その瞳はどう見ても猫科のそれだった。弄ばれていることがわかる。このあと、食べられるのか、ずっとオモチャにされるのか、どちらも怖いことじゃないかー

「俊クン、キミの決定次第だそうだ。どうする?」



日本は宇宙人に侵略されました。僕の運命は??


ご訪問ありがとうございます。

主人公たちも戦っていますが、我々も花粉症などとの戦いが始まりますねー。それでも早く春になってほしいです。

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