第一次戦闘終了
世界中に降下した“敵”たち。日本に降り立った“敵”を相手に高校生達が戦いの前面に立つ。その結果は?
4-6-⑦ 第一次戦闘終了
僕は座り込んで動けなかった。それなりに訓練に参加して、のりきったつもりだった。でも運動部員のタフさ加減はハンパじゃない。彼らはすでに撤収態勢に入り、機材の片付けや“敵”サンプルの回収を行っている。
ぼーっと、それを眺めていると隣に人の気配。村上さんだ。
「すごかったわよ。」
「うん。みんなの戦いぶりはすごかった。」
「俊クンもがんばったわ。」
「ありがと。でも出来れば戦いはもういいや~。」
大の字に手足を伸ばして寝転がる。まだ力が入らないや。
「福田さん達もすごかったのよ。ケガ人が出るたびにバレー部は二人一組で戦場に突っ込んでいって、一人が重傷者を抱きかかえて、一人が援護して…結局全員回収したの。」
「え、じゃあ…。」
「うん、死者はゼロ。」
僕は心の底から安堵した。よかった…本当に良かった。ケガ人は戦闘中にもたくさん見ていたので、実は不安だったんだ。・・・誰も死ななかった。それは本当によかった。
「素晴らしい働きでしたよ、王塚くん、村上さん。」
二人の後ろから声がかけられた。エリア・マネージャーだ。その白服は一カ所の破れ目も、返り血の一滴も存在しない純白のままだ。少し複雑な思いがした。
「死者ゼロというのも快挙ですが、学生戦闘員だけで“敵”を完全に撃破したのは日本、いや世界中でここだけです。」
「あ、O市はどうなったんですか?K市に一部が向かったと戦況報告聞きましたが。」
村上さんの親戚はO市やK市に多い。心配なのだろう。
「O市は自衛隊が最前線に立ち、学生戦闘員は後方援護だけだったそうです。ここと同じように数百単位で散らばった“敵”に対しても、学生戦闘員は戦線維持が精一杯で、自衛隊の到着で決着をつけていったそうです。K市も同じようです。一般市民などに人的被害はゼロです。」
家が壊れたりはかなりあったのだろうなぁ。田舎のこのあたりと違って市街戦バリバリだったろうし。それでも村上さんのほっとした表情はとても温かみがあった。日頃は見せようとしない素直な姿は、それを見ているとこちらも温かい気持ちになった。
「ほんと、お二人の戦闘指揮ぶりは話題になっていますよ。俊クンの戦法なんて早速、戦闘教本ものです。」
え、そうなの?僕、どんな戦い方したっけ?
「村上さん、ひとつ質問なのですが、途中で王塚くんに指揮を委譲したのはどうしてですか。」
「ああ。私たちはシミュレーションで万単位の“敵”との戦いを訓練してきましたが、数百単位の戦闘で圧倒的に勝率が高いのは俊くんだったのです。事実、序盤戦で“敵”を切り崩していったのは彼の班だけでした。それで大隊長と相談して決定しました。」
「なるほど、合理的で理性的な判断ですね。それもまた素晴らしい。お二人は名コンビですね。」
そんな会話をしているうちに、戦場から次々と仲間は撤収していった。反省会、というのが有るらしい。(そのあと、疲労回復焼き肉食い放題大作戦、というのもあって、かなり驚いた)
「お二人は私の車で運びますよ。どうぞ。」
僕たち三人も反省会場に向かった。
「九州に降下した“敵”は全て自衛隊の戦力で全滅させました。地形的な理由が主ですが、民間戦闘員の運用はまだまだ難しいと報告があがっています。」
「関東も海上から陸上への戦地移動など、自衛隊の火力で対抗しました。宇宙技術の新型弾頭や大火力は圧倒的に有効だったとのことです。民間戦闘員は、援護射撃など戦闘参加はしましたが、被害はまったくのゼロ、つまり遠くから…していただけです。」
頭の切れる、以外に形容のしようがない男達が、日本地図画面にの情報に色々な画面を重ねていき、会議を続けていた。
「海外に関しては純軍事的に自衛隊と現地戦力で撃退したので予定通りでしたが、日本は民間戦闘員の存在は以後欠かせません。それなのに…難しいところです。」
「そう思うと、T市の学生達の戦闘は信じられないくらい優秀だな。O市駐屯地からの応援前に決着を付けてしまったとは。」
「アドバイザーの作戦、指揮官たちの指示、各小隊の力闘と全てが予想以上の働きぶりと戦果でした。広報班に戦闘記録をまとめさせていますが、事実だけでも十分盛り上がる内容とのことです。マスコミを使っての“学生戦闘員大活躍”というアピールに絶好です。」
日本は最初の戦いはなんとか終えました。
でも、今後色々とありそうです。いや、ほんと疲れました~。
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「戦闘ばっかりじゃないか」「戦闘終了早すぎ」どちらも正しいと思いますので、次回の戦闘場面にご期待下さい~(“次は頑張る”←テストと同じです♪)




