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ブスはダメなの?②

日本は宇宙人に占領されました。

その前にあった、普通の情景です。

4-2-② ブスはダメなの?②


 いつもより、少しだけ早く起きた。そしていつものようにお弁当を作る。中身はいつもと少し違うけれど。

 そして今日は二人分。昨日買ってきた使い捨て弁当パックにご飯とおかずを詰めていく。私のお弁当より少し多めに。もしかしたら必要ないかもしれないけれど、その場合は持ち帰るか捨てればいい。

「あれ、お姉ちゃん。運動部にでも入ったの?」

 妹の素っ頓狂な声がした。妹の美織はバスケ部に入っている。私と同じように背が高いからいいことだと思う。でも、このタイミングで声を出してほしくはなかった。お弁当を造りながら、ちょっと赤面していたからだ。バレてないかな。

「友達の下宿生にあげるんだって。釜谷さんだっけ?」

 お母さんの声が助け船だった。昨日の夜に言ったウソが通じているようだ。

「ふうん。私みたいに2つ作るから勘違いしちゃった。まぁ、お姉ちゃんは運動部向いてないし…。」 

 どういう意味か気になったが、今は妹や母に気づかれなくて安心した。妹の鈍感に感謝。

 いつも通りの時間に家を出る。いつもと同じ電車。なのにカバンの中にある二つ目のお弁当が私の心を温めてくれていた。

 1時間目は基礎教養の授業だったので、彼…日野くんとは会えなかった。2時間目は専門だから同じ教室になるはずだ。そう思うと、何故か緊張して授業が頭に残らない。大学の講義は高校のように指名されたり、意見を求められなくてよかった。

 2時間目、釜谷さんと2階の教室に入ると、日野くんはすでに教室にいた。相変わらず、両手でお腹をかかえて、机に突っ伏している。周囲に男子の人影はない。(男子の少ない学部・コースを選んだおかげだ)

 私は釜谷さんにちょっと断ってから、日野くんに近寄った。

「日野くん、生きてる?」

「ああ、藤井さん…昨日はありがとう。」

 顔を上げた瞬間は目が虚ろだった。ゾンビのよう。でもすぐに一変して、私に向けてやわらかな笑顔で答えてくれた。

 ドキドキした。

 男の子に真っ正面から笑顔を向けられるなんて、いつ以来なんだろう。あれ、これはデジャヴ?

「あれから、水しか飲んでないけど。藤井さんのおかげで生き延びています…でも、もうおなかペコペコ。」

 言葉とは裏腹に、彼の明るい笑顔は途切れない。

 普通の友人同士のたわいない会話。でも男女間でこんな会話はできるものだったのか。うれしくなって慌ててカバンから取り出す。

「これ、あげる。ハンカチだけあとで返してね。」

「えっ?」

 慌ててハンカチの隙間から中身を確認する彼。再び私に顔を向けたその顔は満艦飾の笑顔だった。

「いいの、いいの?ホントに!!ありがとう~。ありがとうございます。神さま、仏さま、藤井さま~」

「いや、その大声はやめて。」

 周囲が何事かとチラ見している。でもそれも少しうれしい。彼の不幸が私に幸せをもたらしたって事実は何か悪い気がするけれど、でも彼の喜びようは素直にうれしかった。

「あー、そういうことなんだ。藤井ちゃんって優しいね。」

いつの間にか忍び寄ってた釜谷さんがつぶやいた。

「いや、日野くん昨日『死にそう』って言ってたじゃない。」

「うん、今も死にそうだった。でもこれであと1時間頑張れる。藤井さん、ありがとう。」

 素直な彼の一言に釜谷さんは、うんうんと肯いていた。この人もいい人だと再確認できた。

 2時間目の講義が始まった。そして、終わった。

 驚いたことに、彼はお弁当を持って、私たち二人の横にやってきた。

「ご一緒よろしいでしょうか。」

 あっけにとられる私。釜谷さんが即答する。

「うん、いいよ。」

「いやぁ、ホントうれしいわ。…実はちょっとだけ期待していたんだけどね。藤井さんに感謝いたします。」

 彼は昨日のように行儀良く手を合わせて「いただきます」をつぶやいた。私たちもお弁当を広げて「いただきます」とつぶやいた。なんか小学生みたい。でも、ほんのり温かい気持ち。

「うわぁ、豪勢だー。俺、お金あるときでもこんなの食べてないのに~。ありがとう。」

「えー見せて見せて、あ、なかなかいいね。肉も野菜も…沙織ちゃん、料理上手だね。」

「そ、そんなことないって。」

「いやぁ、いい奥さんになれるよ。うん、俺が保障する。」

 

 なんでこの人はこんなドキドキすることをさらりというんだろう。

 

 そのあとも3人で楽しく会話しながら、食べ続けた。日野くんは自分からはあまり話し始めないけれど、いつも話し手の方を向いて、にこにこ聞いてくれる。笑うときは心からの笑顔だ。

 そんな観察をしていたせいか、私は食べ終わるのが一番遅かった。

「さて、アイスでも食べに行こうか。」

 日野くんの状況を忘れたのか、釜谷さんは何気なく言った。でも彼は気にするでもなく「いってらっしゃい」と手を振る。

「あ、ゴメン。何か買ってこようか?」

「いや、藤井さんのお弁当で大満足しているから。きみらも次の授業、この教室だろ。またね。」

 お弁当箱を捨てに行くのか、彼は立ち去った。

「沙織ちゃん、ごめんね。」

「何が?」

 確かに、ちょっと残念だった。もう少し彼と話していたかった。でも釜谷さんも大切な友達。私はいい人と巡り会えた。

「さ、コンビニに行きましょう。」

 コンビニでアイスを買った私たちは、しばらく芝生の上で女子トークした。日野くんの話題も出てきたが、彼のいいところを釜谷さんも認めてくれていて、ちょっとうれしかった。

 そろそろ教室に戻る時間が近づいたので、私はもう一度店内に戻った。菓子パンと、カップラーメンをレジで袋に入れてもらっていると、釜谷さんが近寄ってきた。

「ふうん…沙織ちゃん…。」

「な、何よ。」

 二人で教室に向かって歩いていたら、釜谷さんがぽつりと言った。

「あんまり、餌付けすると、まとわりつかれちゃうよ。」

「ど、どういう意味?わ、私は日野くんが可哀想だから。バイト料入ったら返してもらえばいいし。」

「ま、そういうことにしておきましょうか。沙織ちゃん、かわいいね。日野くんなら、いいと思うよ。」

 身長175cmの大女に向かってなんてこと言うのだろう。

 それにしても、いつから藤井さんから沙織ちゃんになったのかな。

 これも日野くんのおかげかな。

 餌付けされたのは私の方だって気がした。彼の笑顔に。


 日本が宇宙人に占領されるちょっと前のお話です。


今日もごらんいただいた方、ありがとうございます。

この章は難しいです。

戦闘場面はもうすぐです、そっちを期待している方、あと少しご辛抱下さい。

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