自分のするべきこと
宇宙人に侵略された日本人達は戦うことになります。
そのとき、誰か任せでいいのかどうか…戦うのはいやですが、戦わざるを得ない状況にされてしまったら。
3-9-③ 自分のするべきこと
背筋がきれいに伸びた自衛官さんが説明を続けている。
「陸上自衛隊、現在は銀河宇宙軍龍族旗下の自衛隊であるが、組織などはこれまでと変わりない。」
と、言われても、普通の高校生は自衛隊の組織なんて、就職を考えている者以外知らないのが普通だろう。という思いを見抜かれたのか、自衛官さんは少し微笑んで言葉を続ける。
「日本の人口百万人に一カ所、を目指して駐屯地を増やすよう鋭意努力中であるが、とうてい間に合わない。宇宙人たちの言う“敵”の侵攻は今すぐ起こっても不思議ではないそうだ。」
そこまで話した彼は空を見上げた。きれいな青空が広がっている。僕たちもなんとなく見上げてしまう。ついこの間まで見慣れていた空。同じ空なのに、巨大UFOが現れたあの日から、別の意味を持つようになってしまった。
空を見上げるとは、天気を見るだけでなく、警戒することも付け加えられたしまったのだ。
「社会人…成人も戦闘訓練はその援護の訓練は行っているが、対“敵”用の武器の精密機器やや日本の防衛態勢の準備、建築物やライフラインの強化を社会人には最優先で努力してもらっている。また仕事先と生活地域が異なる社会人は戦闘時に専門分野を任せるのも問題がある。」
あー消防団員と同じかなぁ。ここらは田舎なので、火事が起こるとサイレント同時に無線放送で消防団員の招集がかかる。でも、商店主や農業経営者が中心で…という話をいつだったか両親が会話していたのを思い出した。都心で働いているウチの父は消防団に入っていても員数外とかなんとか。
「一部大学生は大学教授の助手として、食料増産や、物資の流通などを考えてもらったり、新素材の開発など宇宙からの技術を加えた新しい日本作りに協力してもらっている。運動に特化した大学生は準自衛隊員として、すでに訓練を重ねている。が、“敵”が目の前に現れたら…自衛隊が来るまで逃げるだけ、では困るのだ。」
毎日、一カ所に集まる生徒…高校生、中学生、さらには小学生も午前中は学習で、午後はトレーニングという生活がとっくに始まっている。
午前中の学習もこれまでの授業とはかなり異なる教科が増えてきている。銃器の分解・組み立てや掃除、様々な戦闘隊形の作り方。市街地での戦い、野戦での戦い…小学生は消火活動や救急活動が主だそうだが、僕たち高校生はかなり実践的な学習と訓練を義務とされている。
その理由を宇宙人に懇切丁寧に説明された日本人は、誰一人反対できなかった。左翼とか右翼とか「朝まで○○」「そこまで居ていいんかい」とかのTV番組で討論にすらならなかった。
自分が死ぬか生きるか。日本人の何%が生き残れるか。世界でどの程度の国が存続できるのか。
彼らが嘘を言っている可能性を追求した大人もいたが、実写映像を見せられ、“敵”の一般兵(?)“虫”を釣れてこられては、もう何も言うことは出来なかった。この世界のほとんどの武器が役に立たず(まさか核爆弾を連射するわけにもいかないし)宇宙人の技術協力と、自衛組織がなければ・・・
日本も、そして世界も滅ぶのだ。映像で見た、これまでの幾つもの星々のように。
「このT高校は…近くにもう一つA高校があるわけだが、小隊長はこの高校に集まってしまった。能力で決定したことなのでどうしようもないことであるが、緊急時は、このT高校のメンバーで“敵”に対応してもらいたい。無論、周囲にいる社会人や自衛隊からも出来る限り速やかに応援に行くが、第一波を受け止めるのは、このメンバーであることに間違いがない。」
深く肯いたのはバレー部キャプテンの福田さんと、柔道部主将の上田さん。小隊を率いて前衛に立つのが上田さんたちの武道部や日頃走り込んでいる運動部の人たち、後方から戦況を判断し、中隊規模で指揮を下すのが福田さん達だ。
「幸いなことに、この学校にはアドバイザーが二人も存在している。しかも二人とも優秀な評価を受けている。」
無表情で頭を下げる村上さん。それに対して、どうしても顔がにやけてしまう僕は未熟者だ。でも上田さん達はそれをガハハと笑ってくれる。以前は「怖い」人たちだったが、そんなことはないと知ったことは、とても有意義な出来事という気がする。
アドバイザー。参謀、というほど偉そうなことは出来ないと思う。村上さんは軍師みたいな雰囲気があるが…。戦闘時に自分の知識をフルに使って、一番良い方策を隊長達に伝えること。小隊長や中隊長に絶えず同行し、民間人も、戦闘員も、一人でも多く生き残らせること。それに尽くすことが僕の役割。
「ここに集まったT高校のメンバーで戦時には、この地域の防衛をよろしく願う。我々自衛官は必ず駆けつける。それを信じて欲しい。そのために日頃の訓練を頑張ってもらいたい。以上。」
全員が一斉に敬礼をする。僕と村上さんだけが拝礼といういつもの様子。
日本は宇宙人に侵略されました。そして、戦いが近づいています。
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私の住んでいるところは雪が降っております。
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