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宇宙人、日本にあらわれる

宇宙人が日本に現れたら、どんなことが起こるのでしょうか。

ペリーが蒸気船で日本を開国させたとき日本はどうだったか。

こうなってほしいな、という願望を込めて話は続きます。



第一話 20※※年、宇宙人に日本に侵攻。


1-1

晴れた日の午後。夕方にはまだ少し早い時間帯。

職場で、ベランダで、街角で、学校の教室で、グランドで・・・。そう至るところで誰もが、ふと気がついた。


「あれ? 少し暗くなった?…。」



 見上げた人々が目にしたのは、巨大な巨大な球体。



 頭上に遠近感が狂ったような巨大な「球」がぽっかりと頭上に浮かんでいる。常識ではあり得ないサイズ。そして何よりも、これまでの人生で見たこともない存在。一目でわかる異質感。それが眼に入った瞬間、夢でも見ているか、別世界に来たような気になってしまう。そんな異様な存在。見慣れた風景がそれ一つで幻想絵画になってしまった。


 人々は、口をぽかんと開けて眺めることしばらく。そして異口同音。


「あれは、なんだ?」

「映画の撮影?」

「何かの宣伝か?」


 周囲の人に呼びかける者、自分の目をこすったり、夢かと疑う者。即座にシャッターを切った者は数え切れない。

日本中でそっくり同じ行動が繰り返された。人が複数いる場所では、作業を中止して意見が交わされた。

 

 不安だったから。


 数分後。球体の周囲にオーロラのような光が生じ始める。

 神々しい、と表現してもおかしくない景色。


 上を見上げたまま人々の動きは止まっていった。バイクや自転車を運転している者は停止して両脚を大地におろして眺め続けた。一度は大きくなった声も次第に小さくなっていく。人々の心の中に色々な思いが浮かび始める。謎、不安、興味、そして恐怖。理解できない現象に際したとき、人間の想像力には限界がある。




 何分か、それとも何十分か 短くて長い時間が過ぎていった・・・。




 視界に入らず車を運転している者、睡眠や病気で意識のない人、仕事や勉強、作業などに没頭している何割、そういう人々を除いて、大多数の人々は声もなく空を見上げ続けるだけであった。

 

 ゆっくりと川面を流れる“やまなし”を水底から眺める蟹のように、幽玄な気分を味わいながら。





1-2

『司令官。計画ハ順調ニ進行中。 自衛隊ト在日アメリカ軍基地ノ停止ヲ確認シマシタ。』


 司令官と呼びかけた存在は無感情に言葉を並べた。楽器が奏でたような美しい音声であるのに、とても事務的であった。


 声が聞こえた場所は、ちょっとした体育館程の広さはあるだろう。その前面に巨大なスクリーン。日本列島を見下ろす映像が綺麗に表示されている。巨大スクリーンの上下左右に浮かぶものがある。小さめのモニター画面だ。幾つも幾つも日本各地の様子を映し出している。

 モニターたちは揺らぐことなく整然と浮かんでいる。が、ゆっくりと少しずつ位置を変えていく。最新情報を映し出している情報画面が手前に、古くなった情報画面は奥へとゆっくり位置を変えている様子は機械的であるのに、なぜか生物のようであった。

 それぞれのモニタ画面には国会議事堂や霞ヶ関の巨大な建物群、スカイツリーや放送局、県庁所在地、観光名所、そのほか日本各地の有名都市や鄙びた町村、山や川、果てしない海と空だけ 等々の映像が数秒単位で切り替わっていく。不規則かつ適当にに日本各地の状況を映し出しているようにも見えるが、先ほどの無感情な声が流れているときは、自衛隊の各駐屯地や在日米軍基地を映し出す画面が最前面に位置していた。


「んー。大きな事故なんか起きていないよね。」


『飛行機ヤ艦船、潜水艦ナドハ安全ナ状況ト確認サレテカラ、睡眠状態ニ入ルヨウ設定サレテイマス。安全カドウカノ判断ハ彼ラ自身デスノデ、問題ハナイト思ワレマス。』


「はい。“言うことなし”ですね。ほんっとスゴイ科学力だね~。」


 軽く拍手を数回。目と口元に邪気のない笑みが見て取れる。司令官と呼ばれた男の細い目は、いっそう細まって糸のようになっている。ご満悦、としか表現できない笑顔。

 きちんと整えられた黒髪は、おおざっぱな七・三分けである。何かの癖なのか、特に乱れた様子もないのに分け目を右手で軽くなでつける。

その様子を後ろから無表情に眺める存在は、長くストレートの銀髪。見た目は女性であるが、ハスキーな声は判別が難しい。その銀髪には生き物の体毛にはとても見えない特徴がある。穏やかであるが光を発しているのだ。光沢が動きに合わせて移動しているのではなく、髪の毛それ自身がほんのりと発光している。

 彼女(?)の調和のとれた形の良い唇が小さく開く。その唇も銀色である。さきほど聞かれた、美しいが無感情な声がその唇からつむぎぎ出された。


『予想外ノ状況ガ絶対ニナイは言イキレマセン。状況ヲ速ヤカに終了シ早々に目覚メテモラウコトが無難デス。』


「うん、そうだね。」


 そう返事をした司令官とやらは首を横に向け、少し離れたところに立っている存在に目を向ける。その一瞬の行動に対して、近くに立つ長身の存在が優雅に顔を向け、にっこりと微笑んだ。その笑顔だけで十分理解できたのだが、司令官は立場上わかりきった問いを投げかけた。


「副官くん、状況説明をよろしく。まぁ その顔を見ると問題はなさそうだけどね。」

「はい。司令官閣下、ご推察の通りです。作戦開始から10分間、まったく支障はないようです。」


 副官と呼ばれた男が片手を軽くあげた途端、様々な種類の声が勝ってきままな音量で一斉にわき起こった。結構な広さのその場所は、多種多様、様々な声質で溢れかえった。




『国会議事堂にいた閣僚方は日本国及び国民の安全を確認後、全員が我々にしたがう意思を表明。』


『全テレビ放送電信電波掌握。各地方の民放各局も静止画面状態を確認。』


『携帯電話など情報端末の停止を確認。ネット網は現在全てブラックアウトの状態を維持。』


『警視庁・警視総監は国民の安全の優先を条件に納得。通常勤務の継続に同意得られました。』


『電気・ガス・水道などライフライン異常確認されません。』


『各地の自衛隊駐屯地など、配置完了いたしました。陸海空将の所在と無事も確認。』


『米軍基地、配置完了。』


『JR、私鉄、地下鉄などコントロールセンターに配置完了。運行などに支障なし。』


『各国大使館、全員睡眠状態を確認。』


『気象庁・消防庁。現在、火災等大きな事故や災害は認められません。通常任務の続行依頼に同意。』


『テレビなど主立ったマスメディア各所に配置終了。外国人記者なども我々の説明を聞いて同意されました。』


『日本の領空、領海への侵入遮断完了。民間機や漁船などは支障なく日本に向けての移動を確認中。空港管制や漁港も問題なし。』


『各省庁に人員の配置完了。全職員の安全を宣言することにより問題は一切生じておりません。』




 同時に耳に入るとわーんという雑音のようである。

数瞬は、雑多な騒音と感じるが、すぐに間違いにすぐ気がつく。内容は異なれど、どれも落ち着いた口調で、どの報告にも高い理性が感じられる。自信に満ちている。

 三人はしばらくの間、聞き続けた。司令官が軽く肯くと、それをOKの合図と判断し副官は再度手を軽くあげる。声が一斉に途絶え、周囲は再び静寂に満ちた。

その沈黙を副官の丁寧な口調が終わらせた。


「閣下、予定通りならば残り十数分で“日本制圧”は完了いたします。」

感情のない口調ではあるが、表情は邪気のない笑顔。“制圧”という言葉にさえ、悪意や恐怖は感じられない。


「んー見事だねぇ。不測の事態は全くないようですね。重畳重畳。」

「では、五分後に携帯端末やパソコン、テレビなど全ての画面に予定の文章を表示いたします。」

「はい、よろしく、ね。 んーでも・・・そのあとの演説は、やっぱり僕がしないとダメなのかなぁ?」


 司令官の顔に初めて不満の感情が見られた。でも目は笑ったまま。


「ダメです。司令官閣下が宣言しないことには何も始まりません。」


 ダメと閣下にアクセントが置かれている。口調は否定であるが、しかし副官の表情は先ほどの報告時よりも笑顔成分が多い。

幼い頃はさぞ、やんちゃしたと思わせる顔つきだ。その笑顔に司令官閣下はむすっとした顔を返す。そして下を向き、深い深いため息をひとつ。その様子を副官は無声で笑っている。


「あーあ。そういうの苦手なんだよね。見た目もキミの方が・・・」。


『司令官。日本ト連絡ガ取レナイコトニ気がツイタ各国が騒ガシクナッテ参リマシタ。』


 銀髪の存在が相変わらず感情のない声で、二人の会話に平然と割って入る。あきらめたのか、それを聞くや否や、司令官は軽やかにイスから立ち上がる。

 もういちどため息をついた後、未練をこめて一言つぶやく。

「やだなぁ。」


「仕方ない。ちょっとだけ仕事しますか。・・・では、行きましょうかジーク君。」

「・・・司令、それは私の名前とは違います。何度も何度も申しておりますが。」

「いや、雰囲気がね。似ているんだわー。いや私は金髪でもハンサムでも、ないんですけどね・・・」


 司令官は心の中で(執事=セバスチャンと同じって、わかってもらえないよなー)と独白。その後ろを適度な距離を保ち、背筋を伸ばした副官がついて行く。


 二人がドアから出る寸前、銀髪の女性は空中に溶け込むように消えていった。彼女が肩をすくめたように見えたの錯覚であろう。





1-3

【五分後、日本に関する重大な発表があります。この下のカウントダウンにご注目下さい。残り4’59”】


【飛行機や船舶、電車などを操作運転している人は、安全な継続をお願いいたします。残り4’29”】


【病院での手術や交通事故の対応など緊急性の高い事案に関しては速やかに対応を優先させて下さい。残り4’00”】



 真っ黒な画面にシンプルなメッセージが表示される。間をおいて文章が変化していくが、カウントダウンは継続している。


 一人一人が持つ携帯端末。職場のPCモニター。カーナビの画面。量販店のたくさんのテレビ。駅や電車の情報液晶。ビルの巨大モニター。

さらに映画館のスクリーンやパチンコ店やゲームセンターのモニターにまで突然映し出された短い文章には、単純であるが、有無を言わせない力が感じられた。

 文句を言う者も幾人かいたが、周囲の空気を読み取ると大人しく画面のカウントダウンに目を向けた。


 空に浮かぶ巨大な球体を眺めていた人々は、何も聞こえていないはずなのに携帯端末を取り出していた。持ち合わせていないものは近くの者に見せてもらったり、テレビやモニターのある場所へと移動した。

一つの画面を何人もで覗き込む様子が日本のあちこちで発生した。


 ほとんどの車は路肩に止まりエンジンを切っていった。

 店内を流れるBGMや録音済みの放送は流れるが、誰もが立ち止まるか椅子に腰掛け、無言で画面に注目していた。人の声は聞こえなくなっていった。

 電車が線路を走る音、緊急自動車のサイレン、録音済みの定期放送、それらが聞こえない場所は無音となった。

 ラジオだけは通常の放送を流していたが、次第に「お手持ちのスマホやケータイ、近くのテレビ画面をごらん下さい」とアナウンスを流し始めた。彼ら自身も何が起こるか予想がつかなかったせいであろう。


 

 残り数秒。誰もが食い入るように画面を見つめていた。



 そして画面はゆっくりと明るくなっていった。【0:00】



 目を刺激しない不思議な光。それが収まってくると中央に一人、その背後にたくさんの人影が映し出されていた。

床や壁面はコンクリートでも金属でもない材質と一目でわかる。真珠色が目に優しいが陶器のような材質の色ではなく塗装されているのでもない。ほんのりと光が滲み出ている。その光も蛍光灯でもLED照明でもない落ち着いた謎の光だ。優しく、しかし明瞭に照らし出している。

 その光を浴びて並ぶ人々は背格好こそ違え、同じ雰囲気を醸し出している。命に関わる仕事に就いている重さと精密さが伝わってくる。威圧感とは違うが、対面する側も背筋を伸ばさないといけない空気。それが画面越しにでも伝わってくる。

 これは日常生活で、たやすく出会える人物ではない。そういう人々がズラリと並んでいるのがわかる。

 彼らの服装は白を基調にして各部に銀色が装飾されている。中央の人物ほどではないが、全員の服装は美しくデザインされていて、かつ機能性を損なっていないとわかる。ユニフォーム、制服、軍服にあたるだろう。

 膨大なエネルギーを内在した存在が、静かに佇んでいる。大きなスクリーンからだけでなく、小さな手持ちの画面からも彼らの力が伝わってきていた。

 

 そのムードを一番まとっていないのは中央に位置する人物であった。

欠点は特に上げられないが、特長を述べるには時間が少々ほしい容貌である。ゆっくり眺めれば、十分に知性を感じさせられる。また同時に人の良さも感じられる。緊張感が全く強いられない風貌。

身長も肉付きも背後に並ぶ者たちと比較すると、見劣りがするので、彼が中央に位置していることは役者不足の感がある。

 しかし周囲の者たちよりも少しだけ装飾の多い服装。純白に美しい水色と銀色のラインが幾つも流れているデザインは高貴で美しい。

 もっとも、こんな風に容姿に思いが至るのはかなり後になってのことだったが。

 今は、彼の両目に引きつけられる。茫洋とした顔つきの中で、両目にだけ強い意志が感じられた。それに気がついた日本人は、もう目をそらすことが出来なくなっていた。

 見つめる画面は双方向通信ではない。それなのに目を逸らしたらその瞬間に叱られる気がした。敏感な人は“隙を見せたら斬られる” そんな気分におちいっていた。

 それゆえ、日本中の誰一人、声が出せない。画面から目を逸らすことが出来ない。




 そして、第一声は発せられた。





「ワレワレ は ウチュウジン だ。」



ご丁寧に、片手で喉元を軽く、何度も叩きながら。 

その記念すべき第一声は日本中に響き渡った。

        

            そして、とてつもなくハズした。



 宇宙人による日本侵略が始まった。

私がダラダラと書き流している駄文に目をとめて、読んで下さった方

本当にありがとうございます。

貴重なお時間をいただき、感謝の念が絶えません。

次も読んでいただけると、とてもうれしいです。

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