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238 さむしろに衣かたしき今宵もや 我をまつらん宇治の橋姫

また宇宙に戻ります。

【虎族】星域中央付近の戦闘はまだ続く・・・

238 さむしろに衣かたしき今宵もや 我をまつらん宇治の橋姫


 えーっと、何ヶ月前のことだったろう。

 健人くん…久良木健人くんを尾行していた私たちは、キレイなお姉さんに捕まった。

 そのお姉さんは美人で、色っぽくて…はどうでもいいよね。とにかく私とキョウちゃんを背後から2人同時に抱きしめて

「もう、アンタたち焦れったいの。ちょっと来なさい。」

 って押していった。私は(あとで聞いたらキョウちゃんも)先生か警察みたいな人かとドキッとしたんだけど…違った。

 グイグイと押されていったのは健人くんが入っていく=バイト先の建物だった。

 中にいたのは健人くんの叔父さんだった。で、なんだかんだと話し合った結果、私もアルバイトすることになった。

「良かったね。このチャンスを何としても生かすのよ!!」

 小さな声で囁いたキョウちゃん。応援してくれているみたいだけど

「これで、もうつきあわなくて済むわー」

 と、いつものように本音も小声に出してた。

 裏表のないこういうとこが私の親友に相応しいのだけど。

 で、数日後呼び出されました。

 てっきり一階の喫茶店のウェイトレスか、健人くんと同じ事務所の雑用係かと考えていたところ、白髪のダンディなお爺さんに

「健康診断の結果が面白かった。ちょっとこっちで働けやぃ。」

 と地下室へと連れて行かれた。

 その入り口には可愛らしいフォントで【ようこそゾッカー西日本支部へ】って記されてて…??

 私は、西上博士に研究室へと連れて行かれました。

 ♪フンふふんフンフン♪と鼻歌を歌いながら美人のお姉さん=クジコさんも同行してきたので不安はなかったけれど、今日も健人くんとは会えないとわかって、ちょっと残念だった。

 大きな医療器具(?)や幾つものパソコン、それに膨大な書類の山々の積まれた部屋に通された私は椅子に座るよう促された。

 座面が黒くて円形のそのイスは病院の診察室の患者用みたいで…。後で聞いたら西上さんは元々大学のお医者さんだったとか。

「お嬢ちゃん…前田綾だったかの。そなたは目に見えないモノは実在すると思うかな?」

 ? 何を尋ねられているかよくわからない。

「ニシガミ博士、そんなこと急に聞かれても普通の女子高校生は答えられないって~。」

 クジコさんの言葉が耳に入って、やっと一つ思いついた。

「あ、私のことは綾って呼んで下さい。…目に見えないモノって…“愛”とか“恋”ですか?」

 カクンと口をあけるニシガミ博士。クジコさんはオナカを抱えて笑い出した。

「ハハハハ。綾、アンタはイイ子だ。ドクターの間抜け面見たのは久し振りだわぁ。今度おごってあげる~ヒヒヒィ。」

 むすっと口を結び直した西上博士。

「す、すみません。」

「いや…。ワシの最近の考察テーマは『機械知性の萌芽と宇宙人の“妖精”の能力』なのでな。地球の科学では考えられんような記憶容量を用意することが出来たならば、その記憶装置に知性…いや意識が宿る可能性はあるのか否か。・・・最近、“生身の”アンドロイドというたわけた存在を知ったもので混乱しているのじゃ。それにしても…愛とか恋か。ふむ…人の感情については全く抜けておったわい。自我の発生の前段階として感情を持ってくるか…なるほどなるほど…。」

 あ、この人はスゴイ人だ。

 学校には予想外の返答に怒ったり無視する先生もいる。けど、どんな回答でも受け止めてくれる先生もいる。

 このお爺さんは私の珍答を一瞬で自分の考えに組み込んだみたいだ。

 受け止めた瞬間、咀嚼してエネルギーに変える…って何言っているのかワタシ。

 腕を組んで天井を睨みつけている白髪の学者…考えたらこれまでの人生でそんな人に出会えたことはなかった。

 クジコさんみたいな超美人も見たこともなかったけれど。健人くんの周囲には色々な人がいるんだな。

「綾、そなたゴミ箱に投げたモノが外れたことはない、とか言ってたな。」

「は、はい。でもバスケのシュートなんかは全然ダメですけど。」

 チラリ、とクジコさんが私を見た。

「アヤちゃん、アナタ落とし物ってしたことないでしょ…いや例えば『ハサミが見つからない~』なんて経験も覚えがない、でしょ?」

 うん。貧乏性だから財布や携帯端末なんかはいつもしっかりカバンのポッケにいれているし…持ち物には名前を書いて、何処に入れるかきっちり決めています。

「はい、両親が『アレがないコレがないって捜す時間は人生の無駄使いだ。』って整理整頓にうるさいタイプでして。自分の持ち物を捜すって経験はしたことないと思います。」

 見つめ合う西上博士とクジコさん。      

「うちのカイジン…じゃない、社員には『モノを落としたことなんてないですよ。だって地面に落ちる前にキャッチすればいいじゃないですか』って輩がけっこうおるのじゃがな。」

「博学多識や博覧強記…記憶力の化け物もチラホラいるし…あ、ここにも1人いるかぁ~。」

なんか茶化しているクジコさんの相手をせず、西上博士は私を見つめて話を再開した。

「そなたの力は念動力や観念動力、TKやPKとも異なるのだ。“目に見えない繋がる力”とでも言うべきか…。その力あるいは波動を、物理的に作用させることが出来れば、これまで例のない力になると思うのじゃが。」

 力・・・それってやっぱり…。私は確信を持った。目に見えない力、それもつながる力と言えば

「それは“愛”ですね。♪か・な・ら・ず、最後に愛は勝つ~♪ですよ。愛が最強なんですよね。」

 そのあとクジコさんが笑い続けて、収拾がつかなくなったこと。

 ずっと昔のように思える・・・・・。



「なんで、誰も健人くんを助けに行かないんですか!ここには【犬神】の強い人がいっぱいいるんでしょ~。」

 銀河宇宙軍最強戦力の一つ【犬神】の将軍家御息女御座船「安宅丸」。その観覧室はいつの間にやら戦闘艦橋と変じていた。

 【虎族】の31番艦隊の救援を、虎姫様に暗黙の依頼をされた【犬神】将軍家御息女美加姫の船団は“敵”巨大艦隊との戦闘を開始。

 【龍族】【猫族】の応援艦隊と追いついた【虎族】艦隊の援護があってなお、31番艦隊の救出は難を極めた、

 さらに最悪な状況として“虫”の最強存在“黒胡蜂”が出現、展開していた【犬神】の誇る「機猟巨兵」は瞬く間に全機を失う。

 【虎族】の「機獣巨兵」よりも高機動の【犬神】「機猟巨兵」の大軍勢でも、影も捕らえられない“黒胡蜂”。

 そして出撃中の「機猟巨兵」は全て撃墜された。

 だが現れた2匹の狼が状況を変える。

 美加姫親衛隊“天保六歌撰”のイチノジョウが駆る「機猟巨兵・黒」と美加姫がチキュウで拾い「背の君とする」と宣言したクラキ・ケントの駆る「「機猟巨兵・茶」の高機動連携攻撃が“黒胡蜂”と刃を交わす。

 “黒胡蜂”が出現以後、一合たりも耐えられた「機猟巨兵」はなかった。

 縦か横に真っ向両断される。もしくは瞬時に背後を取られて両断されるのどちらかしかなかった。

 【犬神】の強者たちの全てが。 

その“黒胡蜂”に抗う2機。

 だが、戦況は次第に不利になっていく。

 御座船「安宅丸」の観覧室の巨大立体画面に映る黒色と茶色のロボットは少しずつ破損し火花を散らして…傷ついていく。

 それは前田綾と橋本京子、2人の地球人の素人目にも明確であった。

 このままでは2体のロボットは、黒いすずめばちに壊される。

「だから、なんで誰も応援に行ってあげないんですかああああ!!!!」

 美加姫の周囲の重臣たちがうなだれる。天を仰ぎ瞑目する者もいる。

 情報官や参謀官たちは画面から目を逸らすわけにはいかないが、チキュウの娘の悲痛な叫びに肺腑を衝かれていた。

 綾の目尻から水滴が伝わっていることに京子だけが気付いた。

 宇宙戦艦の中は重力制御装置が効いているから・・・・・・あれ?

 頬を伝って床に落ちるべき涙が、途中で消えていく。

 “妖精服”を着ているとはいえ、室内が高温で一瞬で蒸発、なんてことは…ない。

(アヤの涙はどこに行っているの??)

 目を泳がした京子は気が付いた。綾の背後に立ち昇る黒い影の存在に。

(霧…は秋の季語で、春の場合の昼間は霞、夕方以降は朧…ってコレは古典の授業!涙が霧になるかー。はっ、どこかが燃えて、その煙…火事?)

 慌てて観覧室の周囲に目を巡らすが、火災発生のような兆候は全くない。

(じゃあこれが“怒髪天を衝く”とか“白髪三千丈”ってヤツかしら。←私って古典・漢文優等生??)いや、バカだ。

 そんなことを考えているため美加姫やその臣下たちに伝えるタイミングを逸してしまう京子。  

綾から立ち昇る“何か”は宇宙戦艦の装甲材の分子結合の隙間をすり抜け、宇宙空間で形状を再構成して遠く遠くへと伸びていく。

 目に見えない何かが、綾から健人に向けて“繋がろうと”している。


『“妖精”情報…最大望遠!』

 戦闘が決着して、ほんの数時で宙域に辿り着いたのは御子神源四郎と天光寺 輝の2機の「機猟巨兵」であった。

 小野派一刀流と天光流という柳生一門に押されてなお、その実力を仰がれる2人は危険を意に介さず現場へと直行したのだった。

『ミコガミ様、危険です!“胡蜂”どもが殺到するやも…』

『テル様、我々が同行できる速度に…』

 同僚や部下たちの“妖精”通信を無視して、2機は決戦場へと辿り着く。

 そこで二人の目に映ったのは・・・

 加速を極めるために装甲を全て外した【虎族】の大型「機獣巨兵:臥虎」の全身各所から火が上がっている。

 操縦者の意思が感じられない、弛緩した機体状況である。

『可動骨格のみで巨大剣を振り回したため、関節部が衝撃を吸収出来ず限界を超えたか。』

『このままでは誘爆する…天光寺、頼む!あとはオレが掴まえる』

 返事をする間とて惜しみ、天光寺はガイコツのような「機獣巨兵」に急接近する。

 全身から出血しているような「「機獣兵」の姿は不憫であった。

『天光流抜刀術!』

 御子神にも明瞭に見えなかった刃跡は正確に「臥虎」の動力管を避け操縦席を切断した。

 天光寺に“居合い”を頼んだ御子神は最速で接近、斬り落とされた操縦席を抱きかかえ飛び去った。

 天光寺の機体も刀を収めつつ、全速の離脱を行う。

 

 ノモゥ・ダベトの愛機「フェッダ・イン」が爆散したのは2機が離れた数秒後であった。

 2人は爆光に敬礼を捧げる。


『御子神、ノモゥ閣下は無事か?』

 爆発の光が消え去るよりも先に天光寺は叫んでいた。いやむしろ怒鳴っていた。

 白虎艦隊救出あるいは31番艦隊救援の戦闘は極論すれば全てノモゥ1人を救うためであるのだ。

 宇宙に散った白虎艦隊と【犬神】101艦隊の宇宙戦艦、そして艦載機群の全将兵はこの一人の命のために身を捧げたのだ。

『………無事だ…。拙者の“妖精”がノモゥ閣下の“妖精”と交信した。気を失っておられるようだが、血圧・脈拍数・呼吸速度・体温、どれも安定している。生命兆候信号全てが良好だ…。』

 天光寺の機体だけでなくノモゥの操縦席を抱えている御子神機も安堵したため脱力したように見える。

 天光寺の“妖精”が“妖精”通信を101艦隊と31番艦隊に向けて開始する。

 加えて、

『出撃中の【犬神】艦載機に告げる。ノモゥ閣下の安全は確保した。周囲の警戒を厳とせよ!繰り返す“胡蜂”に警戒せよ!』

『ノモゥ閣下の急襲に助力した部下たちの捜索も開始せよ!従兵たちの機体も限界のハズだ。』

 その呼びかけに幾つかの返答が即座に起こる。

『フレームだけの機体発見!』

『下半身から背中が燃えている、消火剤放出!』

 【犬神】機猟巨兵隊の様子に耳を傾けながら、御子神と天光寺の機体は警戒しつつ周囲に目を配っている。

『天光寺、出来るならばオレはアイツの…いやアイツらも見つけてやりたい…。』

 人付き合いが苦手で誤解されやすい人柄の源四郎である。

 だがその禀性は情に厚いことを知悉している天光寺の返事は短かった。

『あたりまえだ!髪の毛のひと筋でも見つけ出してやる!』

 操縦席の中で無言で首を垂れ感謝する源四郎。

『感謝する。イチノジョウとは縁があってな…。ん、髪の毛ひと筋でも…』

『ワタシは剃っているのだ!・・・んなことはどうでもよい。あの若武者の遺品も捜してやりたいものだ…。見事な戦いであったからな。』

 “黒胡蜂”の猛攻に抗っただけでも、かの二人は【犬神】機猟巨兵部隊の数十に匹敵した。

 宇宙空間を異次元の原理で飛び跳ね回る“黒胡蜂”に肉薄し、最後は2機がかりで挟み込んで動きを止めたのだ。

 “黒胡蜂”が思いもつかなかった遠距離からの“白虎の一撃”。

 それは、あの2機が“黒胡蜂”の動きを止めたことで完遂出来たのだ。

 無論“盤面”の外から一撃でトドメを刺したノモゥとそれに協力した従兵たちも只者ではない。捜索で発見されたノモゥ旗下の従兵機は皆半身が焼け付いているようだ。

 自らの全速全開機動による自爆も覚悟してノモゥ機を押し進めたのだ。

【犬神】の「機猟巨兵」と【虎族】の「機獣巨兵」その犠牲で“黒胡蜂”を沈めることが出来た。

 それは理解している。それでもなお…

『“黒胡蜂”から身を離す余裕など一瞬もないと理解して…。』

『ノモゥ閣下の巨大刀に串刺されたのは2人にとって本望だったろう。』

 “黒胡蜂”と相討てたのだから…。

 そう思わねば、喪失感に耐えられない【犬神】の2人であった。

 捜す視線の先は宇宙空間の深い深い闇である。

 だが、その先には数え切れない“スズメバチ”が身構えているはずだ。

“黒胡蜂”を失ったことで“スズメバチ”を抑止してた存在もなくなった。

 再び乱戦が開始されるのは陽を見るよりも明らかである。

 事実、“敵”の超・超巨大艦隊陣形は数を減じたとは言え、隊形を再編して101艦隊とその中心部の白虎艦隊へ先陣を向け始めている。

 数千、いや数万の異次元生物“スズメバチ”の群れの複眼が再び戦闘色へと変じていく。

 “黒胡蜂”を失ってなお、“虫”の戦闘状態は解除されないのだった。  


『“黒胡蜂”を墜としたとはナー。凄いことなのナー。でもこのままでは全滅なのナー。」

 “敵”球形陣の戦闘平面南天部から攻撃を仕掛けている【猫族】【龍族】合同艦隊総司令官、シロサン・エルビーは逃げる気満々である。

 だって、猫なんだから。

(白虎将軍を連れてイヌ姫さんが逃げ出さないかナー。そしたらウチらも後ろ足で砂かけるのにナー。)

 もう、勝ち目がない、と判断したときの猫の潔さ。

 101艦隊に向けて全速で向かっている【虎族】85年艦隊のことを考えると酷薄な気もするが、シロサンは【猫族】の将兵の命と【龍族】の将兵を減じないよう考えるので精一杯なのだ。(【龍族】の司令官の後ろには【猫族】女王が見え隠れしているのだから)

 それでも、逃げ出すわけにはいかない。

 困ったナー・・・・とシロサンはずっと思い続けている。


 その反対側。“敵”の巨大な球形陣の北天部から急襲をかけて、“敵”を大きく損耗させた“紅の女王海賊艦”は民間船からなる義勇艦隊に撤収を告げていた。

 再度の亜光速突撃を主張する民間船船長も多数いた。みな戦意旺盛である。

 しかし“敵”の艦隊が密集隊形をとりやめ、拡散して各個撃破戦闘を開始する可能性が高まったと判断した海賊女王は船長たちに次の依頼をしたのだった。

(アナタ、これでいいのね。)

(ああ、彼女はこれで大きくなれるはずだ。“敵”と味方の残していったモノも含めれば…)

 その言葉に肯いた“彼女”の意識体は再び元アイドル女子海賊へと憑依した。


〈〈〈・・・・・・・・見ツケタ・・・五月姫ニ教エテアゲヨウ・・・・〉〉〉


 前田綾の背後に“妖精”が浮かび上がった。

 臨時に貸与される“妖精”などとは異なり、その“妖精”は肢体を持つタイプであった。

〈〈〈我ガ名ハ貴船ト申シマス。五月姫トノ再会ヲうれしゅう存ジマスル。〉〉〉

 綾は覚醒した。


 日本は宇宙人に侵略されました。  

なぜ、終わらない??

作者の意図が全く通じません。

キーボードを打ち始めた途端、ストーリーがぐにょって変化する謎。

いや、それが面白いんですけどね。

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