銀河宇宙軍、最強艦隊
宇宙人は日本を、地球を侵略しようとしていますが、宇宙でも戦いが…ひとまず終わったようです。
3-5-④ 銀河宇宙軍本陣艦隊
『シコン、再出現反応アリマセン。』
『虚空間カラ、コノ宇宙ヘノ突入ヲ妨ゲラレタノハ初メテダロウ…。』
『彼ラモ動揺スル、と考エテ良イノデショウカ。』
“妖精”同士が声に出して会話している。これも珍しいとリュトゥーは眺めていた。それに比べて、我らの司令官はいつも通り、指揮座を倒して、居眠りしかねない姿勢である。この人は…変わらない。
「リュトゥー様、ガネーザ閣下より再通信です。」
「了解。ガネーザ閣下、連絡ご苦労様です。」
再び大画面が開き、ガネーザ提督の巨躯が映し出される。先ほどまではアシュバス提督に負けず劣らずの歓喜を表していたが、さすがにいつもの落ち着きを取り戻している。
「リュトゥー族長代行、援護艦隊が無事に到着した…。」
その言葉遣いにはむしろ緊張の雰囲気さえ漂っていた。部下からも、同僚の提督からも信頼厚いベテラン提督しては、これまた珍しいことだ。
その理由が背後の艦外情報官の声で判明する。
「援護艦隊ワープイン…こ、これは…艦隊紋章【犬神】、それに【九尾】です。どちらも本艦隊です!」
艦隊旗艦シヴァイガの戦闘艦橋の全員が前面のメインスクリーンに注目する。味方ではあるが、緊張させられる存在。ごくりと飲み込む音が何度も聞かれた。自分自身の音であると誰も気づかない。
左右に拡大された画面に映る旗艦上に浮かぶ紋章は狼の形と9本の流線型、どちらも銀河宇宙軍で知らない者のいない紋章である。銀河宇宙軍最強と言われる二艦隊。それが同時に遠征してくるなど、聞いたことがない。今回の戦いは、どれだけ珍しいことが続くのだ。リュトゥーは司令官の方に向き直る
「シヴァイ司令官…。」
さすがにシートを元に戻し、きちんと腰掛けようとする様子を見てリュトゥーも起立する。すかさず、大画面が2面起動する。情報官の引き継ぎもなしに、女声が響き渡った。
「龍族、族長代行リュトゥー、見事であった。」
まだ子供であるが、その美貌はすでに﨟長けた存在の紅色の唇から音声が生まれる。その声を聞くなり、リュトゥーは片膝ついて
「ありがとうございます。」
と一言だけ述べる。それに合わせて、戦闘艦橋の全員が片膝をつき、同じ姿勢を取る。
例外は指揮座から立ち上がっただけのシヴァイ司令官のみ。
画面のもう一方には猛将という言葉以外に表現しようのない、しかし落ち着きのある顔つきが映し出される。左右の犬歯はその強さを象徴している。片耳が千切れているのは数百年前の大戦で、大戦果と引き替えと言われている。その偉丈夫から割れ鐘のような声が発せられた。
「シヴァイガ提督、面白きものを見せていただいた。“大妖精”が我ら両名に出陣を命じた理由、まっこと、納得がいった。」
両のこぶしを胸の前で突き合わせて拝礼しながら、シヴァイは礼を述べる。犬神の族長と会見など全く予想もしないことだったが。
「お褒めにあずかり、光栄の極み。犬神族の御大将さまと、九尾の末妹さまの御両名に拝謁できるとは我が艦隊、末代までの誉れにございます。あつく、御礼申し上げます。」
その様子を冷ややかに眺めたあと、美少女狐が向きを変えて声を掛ける。アシュバス提督も背筋を伸ばし、拝礼している。
肉球同士を突き合わせる様子がかわいいと思い、微笑むシヴァイ。
「猫族の長、アシュバスもご苦労であった。龍族との連係攻撃は見事でござった。」
「お、お褒めにあずかり、光栄至極でございます。」
銀河宇宙軍、最大戦力の九尾一族とはいえ、一番末の妹では、さすがに犬神族の総大将を立てるようで、常に先に声をかける様子をリュトゥーは冷静に状況を観察していた。あの猫姫様が、借りてきた猫になっている。我が龍族の立ち位置ではまだまだ…。
「ガネーザ提督も、両提督の応援まで良く持ちこたえて下された。三提督の粉骨砕身の様子はしかと記録してある。姉上や大本営の皆様にも、しかと見ていただこうと思うぞ。」
「「「ありがたき幸せ。」」」
三提督が同時に礼を言う。その挨拶が終わるのを待っていたように、再び割れ鐘のような犬神族長の声が続いた。
「シコンを退けるとは、まったくもって見事であった。シヴァイ殿、あの戦術はいかにして編み出されたのだ。わしにも教えてくれぬか。」
もう一方の大画面と二つの小画面も同じタイミングでうんうんと肯く。4人そして戦闘艦橋の全員がシヴァイガの返事を期待するが、彼は肩の上辺りに浮かぶの“妖精”の方を軽く眺める。
『“敵”ノ能力ハ未知数。コノ会話ノ暗号コードモ解析サレテイナイトハ断言デキナイ。』
その銀髪の返事に他の提督たちは深く肯く。九尾の末妹の"こくこく"と首を振る仕草に初めて幼さが垣間見えた。
「そうか。いや、全くそうであるな。わはははは。」
何が愉快なのかわからないが、豪快に笑う様子に全員がひと安心の溜息をつく。気にもかけていないのは美少女狐とシヴァイだけ。
彼女の周囲の侍女たちは“一人一艦隊並”と言われている。それぞれが常に9人に見守られている九尾の娘たちやその母親の強さはどれほどであろうか、自身が背負う龍族がまだまだ弱小一族であることをリュトゥーは強く自覚した。
(しかし、この人が居てくれれば…。)
拝礼こそ続けているものの、緊張感のないシヴァイの飄々とした姿。
真っ正面に映る犬神族の総族長とは全く異質の強さの持ち主。これまでの様々な経験でリュトゥーは、龍族は、この人を信じている。
「では、銀河宇宙軍の本営で教えていただこうか。さて、ガネーザ提督はもう少し待機していただくが、猫族、龍族は速やかに休養期間を再開するように、とのことだ。本当にご苦労であった。」
「シヴァイ殿、休養期間の延長は認められましたぞよ。」
頭を抱えるリュトゥーと苦笑いのシヴァイ。その様子を見て、周囲は温かく微笑んだ。
二艦隊は戦闘宙域から離脱した。
犬神、九尾、鎧獣の三艦隊が完全に見えなくなってから、シヴァイはつぶやく。
「…九尾の諜報力は…。」
すかさず、リュトゥーが唇辺りをこぶしで押さえる。日本人なら指一本の仕草の意である。シヴァイは軽く肯き、艦橋のさらに上、宇宙空間の方に目を向ける。
「で。なんで、付いてくるのかなぁ。」
シヴァイ艦隊の上方にアシュバス艦隊旗艦が単艦で随行している。「シヴァイの母星を見てみたいと思うにゃぁ。シヴァイ、良いにゃ。」
龍族艦隊プラス一艦は銀河辺縁の太陽系に向けてワープを開始した。
日本の 宇宙人からの侵略は続く。
今回もお読みいただき、ありがとうございます。
宇宙人もたくさんいると“宇宙人間関係”はきっと複雑なものであろう…なんて全く考えていなかったのですが、キーボード打っているうちに勝手に展開していきました。考えてもいなかったことが発生しました。




