“虫”との戦い その14「大阪一夜の陣」過激に砲撃一斉射撃
大阪“ゲンゴロウ”との戦いは終盤を迎えていた。
“虫”との戦い その14「大阪一夜の陣」過激に砲撃一斉射撃
大串陸士と福田陸士の操縦する機動歩兵はそれぞれ片腕を掴まれ、ぐいっと左右へ進路変更させられた。
2機があけた空間を105mm砲から放たれた金属弾のシャワーが埋め尽くす。
「撃て撃て撃てーーー」
「各車一斉砲撃!タマのある限り撃ち続けろ!」
線路上にでん、と構えている戦車たちから続々と砲撃が繰り返される。4機の機動歩兵を追いかけて飛来してきた“ゲンゴロウ”集団は全身を金属弾に撃ち抜かれ次々に落下していく。いや、落下前に全身粉微塵となってしまい、身体の一部だけが地面…線路やホームに転がるものも多い。
「す、すごいですね。」
「こんな布陣をしいていたんだぁ」
ガゴンガゴンガゴンという砲撃音が地下鉄ホーム内で反響し合っている。普通に耳に入ればすぐに鼓膜が破れる音量である。
機動歩兵だけでなく普通科、特科の隊員たちが着用している装甲戦闘服=“妖精服”は戦闘支援システムだけあって自動的に音量を遮断し、光量も加減している。
それでも戦車隊による大迫力の砲撃音は経験の浅い大串と福田の目をとらえている。二人は総合火力演習を見学する一般人のように感心して見とれている。
ガガガガガガガドゴーンガダダダダダダダダドゴーンガガガガガガガドゴーンガダダダダダダドゴーン。砕け飛び散る“ゲンゴロウ”の群れ。
「あれ?…全部戦車じゃない…。」
「宇宙人が来る前から本州に戦車は配備されておらんと言っただろう。機動戦闘車MCVだ。」
地下鉄線路を塞ぐ形で微妙に交互にズレ合って縦列にならんで砲撃している戦車…確かに本来ならカタピラがあるべき車体下部には片側4輪のタイヤが踏ん張っている。よく見れば戦車よりも一回り小さい車体。しかしその主砲の連続砲撃は「装輪戦車」と呼ぶに相応しい。
ガガガガガガガドゴーンガダダダダダダダダドドーンガガガガガガガドゴーンガダダダダダダドドーン。
「一番最初に公開されたときから74式戦車と同等の口径105ミリ砲だったからな。」
よく見ると後列にいくに従って線路上に鉄板を重ねている。線路上の機動戦車は合唱祭の生徒のように階段状に並んでいるのだ。ただし狭い線路の上なので一台ずつの雛壇である。だが階段状に並ぶ装輪戦車の砲撃は“ゲンゴロウ”の群れを寄せ付けない。
「戦艦大和の主砲主砲副砲みたいだな。」
さすがに疲れが出たのか、機動戦車の斜め後ろで座り込む4機の機動歩兵。走水は子供の頃に作った戦艦大和の模型を思い出していた。
ゲンゴロウの群れを正面から砲撃する線路上の機動戦闘車とその左右の機動歩兵たち。さらに後ろに普通科隊員たちが“ゲンゴロウ”の群れに向けて射撃している。
そして火線は横からも“ゲンゴロウ”の集団を襲っていた。
ホームの突き当たりにゴールした4人が振り返って左手側を見ると、そちらにも機動戦闘車がずらりと並びシャワーのような散弾の砲撃を繰り返している。狭い地下鉄駅構内で密集したクロスファイアである。
よく見ると横からの攻撃は線路上の機動戦闘車の砲撃の間隙時にタイミングを合わせている。特科の訓練の成果が発揮されている。
“ゲンゴロウ”の群れは前から右から前から右から、と延々殴り続けられている状態である。それなのに後ろから続々と“ゲンゴロウ”が押し寄せてくる。集団の密度は高まり、砲撃効果は一層高まっていく。
中には全身に弾丸を受けてもなお前進してくる強者“ゲンゴロウ”もいる。だが機動戦闘車の左右に配置された機動歩兵と普通科隊員は十分に引きつけて、“ゲンゴロウ”の体幹中央付近をビーム銃で狙撃していく。
普通科の隊員が着用している“妖精服”のビームも集中すれば十分なストッピング・パワーを発揮し、機動戦車に“虫”を近寄せない。
線路はあっという間に“ゲンゴロウ”の死体や残骸で埋め尽くされていく。
続々と線路からあふれていく“ゲンゴロウ”の残骸のせいでホーム上にも黄色っぽい半透明に包まれ、その範囲はみるみる広がっていく。
惑星上に降下侵攻してきたり、地上で孵化した“虫”は死ぬと即座に身体が崩壊していく。完全に消滅すれば手間がかからないのだが、そうもいかない。体内の重要器官から自壊していき、四肢や翅、胴体の端などは骸となって残ってしまうのだ。その自壊現象の際にかなり高い熱を発生させるため、地下鉄駅内は徐々にサウナのように視界がきかなくなってきている。
「ホームが熱で溶けていってますね…直すの大変だ。」
大串のつぶやきに平山機の片手が左を示す。ずらりと並んだ機動戦闘車の群れ。
その横側から砲撃している機動戦闘車は全て瓦礫の上に位置している。ところどころ黄色い破片は点字ブロックの残骸か。
ホームがあったはずの場所が一段下がって、線路とほぼ同じ高さに機動戦闘車は並列している。
「機動戦闘車の車重26トンにホームのコンクリが耐えられるわけがない。駅のホームが全損するのは最初からわかっていたことだ。」
「え、じゃあどうやって、ここまで入って来れた…機動戦闘車をどうやって入れたんですか?改札辺りや階段は崩れてませんでしたよね。」
大串の疑問に答えたのは福田だった。
「駅の構内、ホームに並べるまでは重力制御装置をMVCに取り付けて進入してきたのでしょうか?」
「…当たりだ。」
機動歩兵の操縦席中、平山の頬は緩んでいた。こいつ、頭の回転が早い。
「そうか。それじゃぁ…重力制御装置をつけたままにしておけば、少なくともあっちのホームは壊れなかったのに。」
「アホ、車重がなければ主砲の反動で後ろに吹っ飛んでいくだろうが。」
走水は言葉と同時に手が出るタイプであり、大串機はこづかれていた。無論痛みなどないが。
「…重力制御装置と慣性制御装置を機動戦闘車に組み込めば…ああ、それは…機動歩兵か…。」
福田の自問自答に走水と平山は肯く。
高速で飛び回る機動戦闘車が出来たところで、市街地で無制限に発砲は出来ない。“虫”との格闘戦も機動戦闘車には不可能である。
その機動戦闘車の長所を引き出す戦法が、この地下鉄ホームで実行にうつされたのだ。
ホーム、いや元ホームの瓦礫の列を敷いてずらりと並ぶ機動戦闘車の群れ。
手前から、あるいは奥から順にドゴドゴドゴドゴと順に主砲の砲撃が連続する。
対“虫”用に開発された“散弾”とはいえ、後々のことを考慮して天井部への直撃は極力避けている。
その分、反対側のホームは“ゲンゴロウ”の群れをすり抜けたり貫通した散弾でハチの巣状態になって崩れきっている。
26トンで押しつぶされるのと、砲撃でズタズタになったのと、どちらのホームの修復が早いかはわからない。
壁と天井には申し訳程度に鉄鋼板を張り巡らしているが、それもボコボコに凹んでいって、早々に役割を終えようとしている。チーン。
105ミリ主砲だけではない。12.7ミリ重機関銃の銃弾も地下鉄駅内の通常コンクリートなど簡単にえぐり砕いていく。
その砲弾銃弾ビームの雨あられの中に“ゲンゴロウ”の群れは続々と飛来する。線路を辿ってきた“ゲンゴロウ”集団は駅構内に入るなり狙撃対象となり、進撃を止められ、細かなガラス片と化して線路上や元ホーム上にうずたかく積もっていく。
『A fool's bolt is soon shot..“虫”のほうがバカだからいいか。』
平山は小さくつぶやいた。
“虫”単体に全く知性はない、という説を裏付けるように“ゲンゴロウ”たちはひたすら前進し続け、全身に被弾しバキバキに砕かれ、部品と化して地に落ち続ける。
人を捕食し、街を破壊し尽くす“虫”であるため、哀れむ者はこの場に一人も存在しなかったが、「何故?」と疑問を持つ者は多かった。
“虫”の生態はまだまだ不明なのだ。
【松】班の4機の機動歩兵のすぐ横の階段から人影が湧き飛び出てきた。タイミングをはかっていたのであろう、“ゲンゴロウ”の群れが途切れた瞬間のことであった。
彼らは後方支援の隊員たちであった。“妖精服”の性能もあるだろうが、蒸気と異臭まみれ、まだ銃弾も飛び交う中を勇敢にも機動戦車に補給を行いに馳せ参じたのだ。また衛生隊は傷ついた普通科兵を担架あるいは肩抱きで運び出していく。災害救助時に勝るとも劣らない機敏さと力強さ。
宇宙人に日本が侵略されてなお、彼らは日本軍とはならず自衛隊の呼称を守り続けた。守るための力、それが自衛隊であると。
「白い“妖精服”は科研だな…。」
“ゲンゴロウ”の胴体部を主に運びだそうとしている白い服は戦場で目立った。その白い服装は統一されていない。複数の種類が見て取れる。
「自衛隊だけでなく、宇宙局や警察…民間もいるな。」
大学などの研究機関も“虫”の生態解明に全力を注いでいる。得られた知識はそのまま武器となる。大学や企業の研究室などは頭脳で日本、いや地球防衛に参加しているのだ。彼らの研究所もまた戦場である。それが現在の日本なのだ。
それでもすぐに駅の向こう、トンネルのような線路の先から次の“ゲンゴロウ”集団が大量に押し寄せたくる。白い“妖精服”たちが真っ先に、次いでギリギリまで作業を続けた補給と衛生隊員が撤収する。彼らの戦いもまだ終わっていない。背中で庇うように普通科隊員や機動歩兵が“ゲンゴロウ”との間に入り、銃器を連射する。
「心拍、血圧、呼吸器系に循環器系、全員異常なし。十分回復したな。我々も戦闘に復帰する。」
走水の声が合図になったように、普通科の隊員が数人大串に近寄る。
無言でひったくるように金塊を手にすると、隊員たちは素早く丁重に特殊金属のケースに金塊を収め、そそくさと後方へと運び出していく。
「あ、そうか…あのサイズの金塊だと…貴重品だよな。」
「1億円ではきかんな。大串、もう一生縁のない金額だぞ。」
思わず両手をみつめる大串機。さっきまで命がけで抱きかかえていた黄金が今はもうない。おおおおお。
「自衛隊の生涯賃金ってどのくらいだっけ?」
「福田、わかったら一層むなしくなるだけだ。“妖精”答えなくていいぞ。」
会話をしながらも、4人は機動歩兵の全身チェックを行っている。駆動系、装甲、情報、武器…全て異常なし!
『“ゲンゴロウ”の群れはC駅、B駅で全滅させる。A駅待機中の機動歩兵班はB駅に押し進み、逆走してくる“虫”を完全駆除。』
『B駅C駅の機動歩兵は特科普通科と連係して群れの完全停止を確認。その後機動歩兵各班は市外の“虫”捜索に当たれ。』
一番多くの“ゲンゴロウ”を誘導しつづけた【松】班はその役割を果たし終え、機動歩兵隊の一員に戻った。
地下に引きずり込んだ“虫”どもに二度と日の目は見せない。全てこの地下で駆除しきる。
走水班長以下4人は同じ気持ちを抱き再度戦闘へと身を投じる。その準備は完了した。
コンコンと走水の機動歩兵を平山機がこづく。
「走水、お前は大串を鍛えてやるって言っていたな。」
「あ?ああ。」
戦闘継続中に私語は厳禁である。平山の滅多にない言動に走水は少しとまどう。
「走水…福田は俺が預かる。いいか?」
「あ、ああ! お前にまかす!」
機動歩兵の中で笑みを浮かべた走水。そして平山。
(平山に認められるとは…。大串より福田の方が大変かもな。)
元【松】班4機は一斉攻撃を開始した。
日本は宇宙人に侵略されました。
「【ウィーズ】聞こえるか?こちら【アイアンヘッド】。【ウィーズ】返信乞う。」
輸送艇から大阪各地に【機甲歩兵】をばらまき終えた五島はマイクのスイッチを押し続ける。
「聞こえているよ、五島さん。こちら【ウィーズ】感度良好。」
「…【ウィーズ】コードネームの意味わかっているのか?」
「あ、それってさっきも言われた。で、何か用?」
輸送艇の中で肩を落とした宇宙局機動部隊の五島隊長であるが気を取り直す。
「自衛隊の地下引導作戦は上手くいっている。それでもかなりの数の“ゲンゴロウ”が大阪各所に飛び散ったはずだ。」
「うん。僕とサリーのいる日本橋には結構集まって来ている。それとなぜか道頓堀に集中している。」
輸送艇の様々な情報画面でウィーズの発言を確認する五島隊長。全てのデータがウィーズの言葉と五島隊長の感触を裏付けていた。
「道頓堀の宇宙人は何か誘導物質を使ったようだ。そちらに多量に集まっているのを確認した。」
「うん、【ジョーカー】も道頓堀に行ってもらった。彼が行けば十分戦力になるだろう。」
「ああ、それでいい。しかし…」
「ん、どしたの?」
「それでも大阪南港に上陸した“ゲンゴロウ”の群れの数と合わない。宇宙人の索敵機や自衛隊の偵察ヘリが出した数値と合わないんだ。」
「はぐれ“ゲンゴロウ”がまだまだいるってこと?そんなに多くの“虫”が飛び交っているようには見えないよ。」
「…逆だ。少なすぎる。自衛隊と君ら遊撃隊と宇宙人、それに駆け付けた宇宙局機動部隊。それ以外の戦力が“虫”を倒している。」
「へ?」
「てつぅ~そっちに一匹行ったでー。」
かなりの上空からでも耳に入る少女の声。
「わかってるわぃ。」
急降下してきた“ゲンゴロウ”が地面すれすれで頭部を上げ直す。再度高みを目指そうと翅を羽ばたかせる!
「このスカタンが!」
黒いTシャツに腹巻きの丸坊主の男はゲンコツで“ゲンゴロウ”の頭部を一撃した。
めり込む“ゲンゴロウ”の頭部。
胴体に、ではない、地面に直接、頭部どころか胴体の半分近くがアスファルトに埋まり込んでしまう。
「どやーーーー。こんのゴキブリもどきがーー商売の邪魔なんじゃー」
“ゲンゴロウ”を拳固で殴り倒した男の上空では一升瓶を片手に握った、白髪の角刈りの男が巨大なコテを振り回していた。
コテというのは本来はお好み焼きなどを鉄板の上でひっくり返す道具である。が、その巨大なコテは蠅叩きのようにバチーーンと“ゲンゴロウ”を叩き落としていく。
その威力よりも怖ろしいことに、巨大なコテを片手で軽々と振り回す男はどうも“酔っている”ようである。
「てつ、ゴキブリもどき、次々落とすさかい、とどめ刺していけや。」
「オッサン、完璧に一升越えているやろ。あとでシラフに戻ったら覚えとけよ!」
黒シャツの男は次々舞い落ちてくる“ゲンゴロウ”をゲンコツでは間に合わず蹴りや頭突きまでくらわしていく。
その一撃は重く速い。
防弾ガラスや水族館の水槽ガラスに似た質感ではあるが、さらに硬度の高いはずの“ゲンゴロウ”の身体が、“てつ”の一撃でバリンバリンと割れていく。打撃を与えられた箇所から全身へと破壊が広がり、砕け散ってしまっている。
「だいたいズルいやろ。“ちえ”とオッサンは空飛び回って。ワシが後始末みたいやんけー」
「“コテツ”も“じゅにあ”もてつを乗せるのイヤやって言うんやもん、しゃーないやん。」
先ほどの少女が“ゲンゴロウ”を追って急降下してきた。両手に装着しているのは鉄ゲタである。
バチコーーーン。鉄ゲタの一撃を食らった“ゲンゴロウ”は空中で破裂する。
「あーあ、スーパーの屋根に“虫”の脚がささってもたわ。あとで謝りにいかんとなぁ。」
くるりと器用に一回転し、少女は黒シャツの男“てつ”の横に並んだ。
少女が無事降りたことを確認した巨大な猫…いや猫型機械生命体は別の“ゲンゴロウ”に飛びかかる!
〈〈とったどー!!〉〉
“ゲンゴロウ”と高速ですれ違い様、“コテツ”と呼ばれる機械生命体は“ゲンゴロウ”から何かを抜き取った。その何かを“コテツ”は軽く握りつぶす。プチっ。同時に“ゲンゴロウ”は爆発四散した。
「うーん、どうも“コテツ”と“じゅにあ”はあの“虫”のこと知っていそうなんやけどなー。教えてくれへんかなー。」
「アホ、猫としゃべれるか。それにアイツら機械のネコやで。」
上空から次々と舞い落ちてくる“ゲンゴロウ”たち。酔っぱらいの角刈りオヤジと“じゅにあ”と呼ばれる巨大機械猫が“ゲンゴロウ”を叩き落としているのだ。
「どうせなら、トドメさして落とせっちゅうねん。ちえ、あのオヤジ、もうすぐ酔いが回って自分が猫から落ちるど。」
「しょうもないことしゃべってるヒマあったら“虫”動かんようにしていって~。ウチそろそろ学校行く準備せなアカン。」
両手の鉄ゲタの一撃で“ゲンゴロウ”を完全破壊する“ちえ”の破壊力は“てつ”と遜色ない。くるくる飛び回るような素早さを考慮すればこの少女が一番戦闘力が高いかも知れない。
髪の毛止めのポッチリが朝日を反射した。
「アホ。今日は学校休みや。“虫”警報が昨日出てたやんけ。今ワシらがこんだけツブしているということは警報の解除はナシや。」
「あ、そうか。…ホンマ“てつ”はそういうとこだけは賢いなぁ。オバアはんが言ってた通りや。」
身体が止まる“てつ”
「ん。どうしたんや?“てつ”オシッコか?」
「なんでや。ババア本人がおらんヤンケ。ゾッカーの“なんぶ”ちゅうヤツの依頼受けたんはあのクソババアやろがーー」
“てつ”は怒りのゲンコツを“ゲンゴロウ”にぶつける。
ゴウン。“てつ”の一撃を食らった“ゲンゴロウ”は別の一匹にブチ当たり、2匹とも爆散する。バシャーーン。
「依頼じゃないって。『ゾッカーの南部はんは、いっつも良い品を贈ってくれるさかい、恩返しや』っておバアはん言うてたやん。“てつ”も『このカリントなんで大阪に売ってないんやー』っていっつもバクバク食べてるやん。あのカリントとか関東のええお酒とか、送ってくれてるのがゾッカーの南部さんやで。その南部はんから電話があったから、オバアはんが『ちょっと手伝うてあげなはれ』って言うたんやん。」
“ちえ”が投げた鉄ゲタが数匹の“ゲンゴロウ”を貫通する。その鉄ゲタを“コテツ”がナイスキャッチ。“ちえ”に丁寧に投げ返す。
「くそぅ~あのカリントかぁ。くやしいけど美味いもんなぁ。“ちえ”このケンカ終わったら、その南部にカリント送れって電話せーよ。」
「わかったー」
ボカっ、ぐしゃっ、ポキン、バキバキバキと地上に叩き落とされた“ゲンゴロウ”はどれもこれも速攻で完全に息の根を止められていく。
空中から、酔いが回りきった男の声が聞こえてきた。
「うぃいい、げふっ。“ちえ”ちゃん、これで500匹や。ワシもう帰ってええか。年とると徹夜はこたえんねん。」
真っ逆さまに墜落する“ゲンゴロウ”を一蹴りで地面にめり込ませた“ちえ”は上空に声をかける。
「うん、おっちゃんありがと。またお店に飲みに来てや~今度はおごるさかい。“じゅにあ”もおおきにー。」
“ちえ”に手を振るなり、カクンと目を閉じ首を垂れる角刈りオヤジ。
〈〈にゃにゃんのにゃー〉〉
“じゅにあ”は“ちえ”と“コテツ”に手を振り、空の彼方へと去っていった。
「そうか。今日は学校休みか。そんならヒラメちゃんと遊べるな。うん、はよ終わらせよ。“てつ”、大急ぎで“虫”退治するで~」
日本は宇宙人に侵略されました。
大阪の一部は関係なさそうな気がしますが。
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今回の後半は「自動書記」のように突然湧いて出てきました。
パワーバランス崩すから、再登場はご遠慮します。
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一番のエネルギーになります!!




