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宇宙艦隊戦 その1

ワープするほどの宇宙戦艦はかなりの速度で移動が可能なはずです。その速度ですれ違いながら戦うのは大変だと思います。日本を侵略した宇宙人たちの戦いが始まります。

3-5  宇宙艦隊戦①


「先行偵察各艦から通信あり。すでにガネーザ艦隊と敵艦隊抗戦中とのこと。その他情報回します。」

 艦外通信担当の女声が戦闘艦橋内に響いた。隣に座っている艦隊通信と艦内通信の担当と手分けして、この艦の情報担当や艦隊各艦に連絡を始めている。3人の唇と両手が目まぐるしく動いている。

「だいたい予想通りの戦闘接触のようですね。」

 副官のリュトゥーが思わず声に出した。これまでの航行中に何度か作戦会議を行った際の予測通りであり、それゆえこのあとの艦隊行動もいくつか想定されている。

 戦闘艦橋の一番高い位置にある椅子に座っているシヴァイ司令官が立ち上がり、マイクを持つ。

「全艦に発令。我が艦隊は次の最終ワープにて、敵艦隊に突入する。全員の奮戦を期待する。」

 続けてリュトゥーも自席のマイクを起動させる。

「艦隊陣形はピラミッド型。頂点付近は旗艦及び護衛艦、底面を含めた各面は戦艦及び装甲巡洋艦を配置。航空母艦及び補給・回収艦は中央部に。敵艦隊を突き抜けた後は同航戦に移行する。」

 副官の声を耳にして、その言い終わるまで待ちきれないように、航行班、戦術班の各員も慌ただしく自分の受け持つ各機器の操作を始める。

「ピクシー。準備はいいか。」

 顔をやや上に向け、シヴァイ司令が虚空に話しかける。いつもなら銀髪の“妖精”が身近に浮遊しているはずだが、その姿が見えない。


『準備出来テイマス。イツデモドウゾ。』


 頭に直接響く声に軽く肯き、再度マイクを握りしめる。

「ワープ空間離脱5秒前に“妖精王”起動する。艦隊総員クロックアップに備えよ。敵艦隊の“3本角”を中心に攻撃すること。それ以外の艦に対しても“角”に集中砲火。」

 ここで言葉を切り、リュトゥーに視線を巡らす。この次の言葉は族長の役割である。

「この戦いも我が軍に勝利あり、龍族の精強を宇宙に轟かすぞ!」

【「「「「「「「「ウオぅー」」」」」」」」」】

全艦隊の総員が声を振り上げる。戦いの前の気合い入れである。


 第77戦艦内で宇宙での戦いを観戦する予定の自衛官たちは、装甲戦闘服を通して、自分たちの頭に響く声の理解で精一杯であった。“妖精”のおかげで概念が正しく通訳されているので話の基本的な流れは理解できるが、まったく未知である幾つか不明な単語もある。

 自衛官たちにあてがわれた、画面のたくさん浮かんだ会議室は彼らのつぶやきで満ちた。

「“妖精王”って何ですか?」

「クロックアップって?」

「3本角とは敵艦のことか。」

 慣れてくれば声に出さなくてすむと説明されたが、自衛官たちはつい言葉を発してしまい、自分の声だけでなく隣からの声まで耳に入ってしまう。装甲宇宙服は不可視モードであるため、全員の服装は動きやすい「ツナギ」であるため、階級の違いが判別しにくい。自分の発言が、上官に対してタメグチを使ったように思い、慌てて謝る者が各所で頭を下げている。


『くろっくあっぷハ、我々“妖精”のチカラデ人間ノ反応速度ヲ数十倍に引キ上ゲルコトデス。』


『“妖精王”ハ旗艦マタハソレニ準ズル艦ニノミ装備サレテイルくろっくあっぷ用ノしすてむデス。』


『亜光速デ航行スル艦隊同士ガ戦ウ際ニ、人間ノ能力デハ対応出来ナイコトガ多スギマス。』


『敵艦ハ、球形ニ角ガ貼リ付イタ形ニ似テイマス。角ガ多イホド高位ノヨウデス。』


『角部分カラ敵艦ノ艦載機ヤ上陸艇ガ射出サレマス。』


『角ヲ失ッタ敵艦ハ戦線離脱スルノデ完全撃沈ノ時間ガナイ場合・・』


自衛官たちが“妖精”たちからの答えを咀嚼するには、ある程度の時間が必要であった。

「このスーツは個人戦闘に特化したものと考えていたが・・」

自分の隣の上官がもらした言葉に肯きながら答えてしまう。

「宇宙服としても優秀とは思いましたが、そんな機能まであるなんて信じられません。」

「じゃあ、我々もクロックアップとやらが成されるのでしょうか。」

地球人類が始めて目にする宇宙での戦いである。


 通信員の高い声が艦橋に響いた。

「ワープアウト30秒前です。29、28、27・・・・」

(女の子の高い声の方が聞こえやすいから通信員は女性なのかな)

 そんなことを一瞬考えてしまい、シヴァイは頭を振って思考を切り替える。これから命のやりとりをするのに…と。

「15、14、13、12、11、“妖精王”起動します。」

一瞬、身体に不思議な感覚が生じる。風邪の初期症状の悪寒に似ているが、力が満ちるような高揚感もある。

 全身の生体電流のパルス速度を超高速化し、それに対応出来るよう神経繊維や筋肉の化学反応も早め、強める。今、彼らは通常の時間の流れを無視して、活動が出来る存在に生まれ変わっている。

「ワープアウト!」「全艦隊異常なし」「敵艦隊、正面。」「全艦、甲板面を敵艦隊に直面。」「全主砲撃て」「3本角撃沈」「砲塔各個判断で連続射撃」「実体弾も砲撃開始」「防御膜の準備も開始」「戦闘機・攻撃機準備終了」「傷ついた艦は内側へ」「敵艦、虚空間へ撤退多数」「敵残存艦より艦載機発進中」

 攻撃の指示と戦果と影響と次の状況が1秒以内にほぼ同時に発生する。外側から見たならば、目に映らない速度である。

 水族館で小魚の群れが不定形のまとまりを作るように、敵艦隊はおおまかな固まりしか構成しない。その敵艦隊と遠距離砲撃戦を行っていたガネーザ艦隊は、当然出現した四角錐の密集艦隊が敵艦隊を一瞬で突き破り、自艦隊の反対側に移動していく様子に見とれていた。そして誰かが声を上げた。

「龍族が援護に来てくれたぞ!!!」

 ガネーザ艦隊に歓声が満ちる。草食獣より進化した艦隊の総員は様々な共鳴音を奏でた。

 ガネーザたちは予想もしなかった敵艦隊の出現により、先ほどまでかなりの劣勢であった。敵出現の兆候が少なかったため、この太陽系国家の住民を避難させる準備もしていない。慌てて戦線を構築したものの、戦力差は大きく、銀河宇宙本部へ救援要請はしたものの、その返信も待ちきれずに全艦潰走寸前であった。

 敵艦隊の中央部を食い破ったシヴァイ艦隊はガネーザ艦隊から見て後方左に回り込みながら、接触面で敵艦を圧倒していた。次々と消滅していく敵の艦影。

 ピラミッド陣形の底面に位置していた戦艦や装甲巡洋艦の背後で護衛艦は次の砲撃の準備を行い、航空母艦の内側では戦闘機が指示を待ちわびている。

 敵艦隊と派手に砲撃戦を継続しているピラミッド陣形の底面部の中央には旗艦が進み出ている。族長艦は、後ろで指示しているだけではない。常に先陣を駆ける姿を天下に示さなければならないのだ。しかし。 

「クロックオーバーから、どれくらい経過した?」

シヴァイの疑問にリュトゥーが答えるより先に、リュトゥーの“赤龍”が概念を発した。


『マダ10分モ経過シテイナイ。次ノくろっくあっぷニハ、マダ時間ガカカル』


 クロックアップした状態での戦闘状況は優位に展開したが、クロックアップしている当人たちは30分以上戦い続けていた感覚がある。全身の筋肉と神経、そして感覚器と脳を超高速で使い続ける30分である。その疲労感は本来数日の回復期間を要するほどである。無理矢理にスーツの各部に装着されている冷却装置や様々な浸透薬品が戦闘員の全身を休ませている状況は予定通りであるが、危険と隣り合わせであった。あらかじめプログラミングされた自動航法やレーダー反応に自動対応した遠距離砲撃で戦いつつ、全員が軋む身体とも戦っていた。そして攻撃を続ける各艦の砲身も焼き付く寸前である。超科学であっても宇宙の法則とは無縁ではいられない。

「残存敵艦隊は“スズメバチ”を放出。機数確認不可能。全艦載機を発進させたと思われます。」

 艦外情報担当が叫ぶ。それは悲鳴に近かった。20mを越える敵の艦載機“スズメバチ”は凶悪な力を誇る。宇宙空間でどのような推進方法なのか、脅威の高機動を行い、銀河宇宙軍制式戦闘機との戦力比は3倍では効かない。4機がかりで、なんとか互角に持ち込むのがやっとだ。

凶暴な顔つきを全員が思い出し、顔つきが変わる。

「全艦、砲撃を短距離に切り替え。護衛艦は前進。戦艦との間を詰めて迎撃砲射を密にしろ。」

 戦術担当の怒鳴り声も悲鳴のように聞こえる。既にいくつかの戦艦には先行していたスズメバチが艦の装甲に取り付き、強力な顎で装甲材を食い破り、艦内に侵入を始めている。機関部に辿り着かれて自爆されるか、スズメバチ数匹に艦内を各所を破壊され続けるか。スズメバチの群れの固まりが旗艦シヴァイガの目の前に迫っていた。


つづく。 

すでに大雪の地域、まだまだ温かい地域、天気予報を見ていると日本は広いんだなぁ、と感じます。

今回も読んでいただいた方、ありがとうございます。小説のアレやアニメのアレが大好きなので、頑張りたいと思います。

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