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“虫”との戦い その6 準備完了

“虫”は大阪を目指している。

それは“虫”の意思だけでなく“人知”を尽くしたためでもあった。

“虫”との戦い その6 準備完了


 航空自衛隊の新型機。海上自衛隊の護衛艦、潜水艦。

 それらからの攻撃をくぐり抜けた“虫”が約10000匹が和歌山沖から大阪へと飛行している。

 これまでとは異なり、“虫”の群れは散らばる様子が見えず集団のまま一路目的地へと向かっている。

 大阪港に集結する陸上自衛隊。84ミリ無反動砲、155ミリりゅう弾砲、多連装ロケットシステム自走発射システムM270。

 高射特科部隊の誇る地対空ミサイル11式短距離地対空誘導弾は対巡航ミサイル型ではなく対“虫”拡散ミサイル型の発射態勢をすでに整えている。

機動戦闘車もすでに大阪港に整然と待機していた。キャタピラではなく双輪式(タイヤ式)である利点を最大限に発揮し、近畿の至るところの国道や県道、そして高速道路を時速100キロで走破してきたのだ。2016年の正式配備時は105ミリ砲を主砲(74式戦車の主砲と同等)としていたが宇宙人による日本征服後、主砲をビーム砲に順次転換しつつある。現在開発中の新型浮遊式機動戦闘車が正式配備されても並行配備を継続する予定の16式機動戦闘車は主力戦車の一つである。ビーム砲を搭載していない戦闘車も多目的対“虫”りゅう弾と装弾筒付翼安定徹甲弾のこれまでの“虫”戦闘で十分な実績をあげてきた砲弾をあふれるほど用意している。

 そして、世界最強と呼ばれた攻撃ヘリA-H64D。日本を侵略した宇宙人は政府と防衛省に対してA-H64Dの早期調達を強硬に命じた。と同時に富士重工業と速やかに接触、A-H64Dの改良機を開発して試験配備を進めていた。

 地上最強の移動兵器、鉄の城と呼ばれる戦車に対して初期型のA-H64でさえ撃破率は10:1。つまりヘリ一機を撃墜するには戦車が10輛は必要なのである。

 A-H64D改良機(通称「ヨイチ」)も含め、陸自の誇る攻撃ヘリも大阪港周辺のヘリポートに待機中。

 また「ニンジャ」と呼ばれる偵察ヘリOH-1はすでに複数機態勢で大阪~和歌山沖へと偵察行動を開始している。

 陸上自衛隊としては万全といえる態勢であろう。

 なんと頼りないことか。

 今回侵攻してくる“虫”は海中で小型~中型甲虫へ変態し、群れ飛んできている。大型甲虫は動きが遅く、飛行よりも歩行移動が多いため、甲虫といえども戦車などの攻撃がきわめて有効であった。また何らかの方法でひっくり返すことで甲皮に覆われていない腹部を露出するため、普通科隊員の攻撃も容易であった。(自衛隊でなく民間戦闘員がこの方法で甲虫の群れを撃破した例もある)

 だが、小型や中型の甲虫は飛行が得意である。また横転させても容易に起き上がって機敏な移動を行う。頑丈な甲皮と併せて、非常に戦いづらい“虫”の一つなのである。

 現在侵攻中の“虫”=ゲンゴロウは九州で発見時に人間や家畜の捕食よりも精密機器の電子部品収奪が中心であったことが報告されている。“ゲンゴロウ”の狙いは電気街「日本橋」と推測される。

 “虫”の群れが和歌山側から山越えすることも予測されたため、陸自の先行班は“虫”を引き寄せる「エサ」を大阪南港に設置していた。 “虫”、いや“敵”の収奪目標の上位である重金属、とくに「金」である。

 「金」は安定した物質である。宇宙空間の絶対零度であっても変化が生じにくいこと物質の一つである。“敵”は宇宙のどこかの通常空間から来るのではなく、異空間と呼称している「どこか」から来襲してくる。銀河宇宙軍の長年の戦闘でも「異空間」の存在箇所あるいは出入り口となる固定座標は確認出来ていない。が、出現後はこちらの宇宙を移動する必要がある。そのために“敵”は「金」を必要とすると考えられている。

 宇宙人は日本を侵略した後、他国との取引は「現金」との交換を原則とした。この場合の「現金」は貨幣ではなく「純金」の意味である。様々な宇宙技術の部分供与や情報の開示は必要最小限を除いて全て「金」を必要とした。

 宇宙人の徹底ぶりは“なにわのあきんど”もビックリのがめつさであった。世界各国の「親日認定国」以外は歯がみしながら自国の金貨やインゴットを日本へと輸出した。

 それは明治維新後、日本が世界の金銀交換レートを知らなかったため騙し取られた金の総量に匹敵するほど、いやそれ以上の大量の「金」を日本へと集めることになった。

 そのせいで“虫”の降下は日本が中心となったのも事実である。龍族宇宙人は「金」保管のために万全の駐留部隊維持を日本政府と国民に約束したが、もとより侵略された側が強固に反対できるわけもなく、それでも反対活動を行った一部の思想団体や宗教団体は一刀両断で処罰されることとなった。平和ボケが通じる状況でないことを理解出来ない集団はあとかたもなく消滅していった。

 ついでであるが、宇宙人の支配後の「銀河日本」は世界中の美術家や博物館から芸術品や美術品の収集にも積極的であった。それは金製品を溶かして使用する目的ではなく、純粋に「地球文化」の保護を目的としていた。

 しかし、世界各国からは見事に曲解された。「銀河日本」の文化侵略、と思われたのである。

 実際“虫”による被害で世界各地は恐々としていた。“虫”と自国軍の戦闘で様々な美術館博物館重要史跡などなどが次々と灰になっていた。それでもなお自国の歴史ある美術品や他国から収集した芸術品の「日本での保護」はプライドが許さなかったようである。

 宇宙人は「“虫”撃退後、地球に平和が戻れば必ず元の国に全て返却する」「保管に当たってはその国のキュレーターも多数日本へ定住させる」「保管については宇宙技術を活用した金庫を用意する」などと公言し、契約の遵守を宣言した。

しかし、自分がしたことは他人もすると考えるのが常である。世界中の美術家や博物館は盗品の展覧場という言われるように、他国から合法、非合法で重要歴史物を奪ってきた国や美術館は日本の宣言を信じようとはしなかった。

 反日国や猜疑心の強い国々は自国の美術品・芸術品は自国で守り続けると宣言した。そして“虫”に収奪されたり戦火に焼かれる羽目となっていった。金で作られた「人類の宝」の数え切れない量が“虫”に喰われ、油絵や彫刻が灰になり、砕け散っていった。

 親日認定された台湾の故宮博物院、女王の最終決定に従った大英博物館、機を見るに敏な合衆国のスミソニアンやN・Y近代美術館、メトロポリタン美術館などは即断し、貴重な大量の品々を日本へ送り届け、各博物館の専門員が日本に滞在して厳重に保管をしていた。

 脱線したが、このような理由で日本には潤沢な「金」が保管されている。人類の記憶として完全保存すべき芸術加工された「金」に手をつける必要はないほど、戦闘用の「金」は日本各地の自衛隊駐屯地や基地に配備されているのである。もちろん日頃は厳重に保管されているが。

 備蓄されていた「戦闘用」の「金」が“虫”を釣るために特別保管箱から取り出された。“ゲンゴロウ”を大阪南港に引き寄せるためである。大きな金塊は夜の闇の中でも輝きを放った。しかしそれは“虫”という死を呼ぶ禍々しい輝きでもある。


帯のような形状で群れを成して飛行する“虫”が方角を変えたのはその瞬間であった。



日本は宇宙人に侵略されました。

ご訪問ありがとうございます。

今年はこまめに投稿、を目指します。


お暇がある方、ぜひ「評価」してください(涙)

数字が少しでも増えるとうれしいのです…。

お願いいたします~

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