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フィンガーズの戦い3

戦艦内の格納庫は広いけど狭い。戦闘兵機がぎっしりと詰め込まれているからだ。今、僕たちはそこにいる。

6-4-3 フィンガーズの戦い3


 虎族マラッジ艦隊所属巡洋艦「ネムルアルカト34」。その大型機動兵士格納庫では操縦士たちが空間画面の戦況を食い入るように見つめている。マラッジ提督は今回、龍族・猫族・鎧獣族からなる三族艦隊に同行し、客将として戦うことになっている。それゆえ自分たちの戦場も三族艦隊の作戦に従うこととなる。操縦士たちに選択権はない。この宙域、この戦場で戦え、と言われれば出撃するだけだ。それは地球から来てフィンガーズと呼ばれる僕たちにとっても同じことだった。

「すごいね、この龍族の作戦というか陣形というか…。」

「圧倒的な勝利?このまま勝ち続けるんじゃないの。」

 伊庭さん…じゃなくて、ミキと村上さん=ユカリが画面を見ながら語り合っている。元々指揮官候補だったけどオールマイティに能力の高いミキは現在は切り込み役が多いけれど、回転の早さはユカリに匹敵する。この二人がフィンガーズの頭脳だ。

「私たちの出番はない、なーんてのが一番いいんだけどね。」

「そうはいかないだろう。戦場の最終局面を決定するのが機動兵士の役割と習った。」

マニャとナホさんの会話は一般兵士の気分を代弁しているだろう。出来れば戦場になんて出撃したくない。でもそういうわけにはいかない。それが仕事なんだから…役割、かな。

 そういう僕は三族艦隊の戦闘陣形を見ていて、ふと思いついたことがあった。小さな声で“妖精”=パンダ先生を呼び出す。

「パンダ先生、外の戦い、見てる?」

『アア。興味深イ。龍族ノ伝説ノ陣形デアルガ、“妖精”ノ計算ヲ効果的ニ活用シテイル。良イ作戦指揮ダト思ウ。」

「ふーん。単純に見えるけどそうなんだ…。で、見ていて思いついたことがあるんだけど…ごにょごにょごにょ。」

『・・・ナルホド。ソレハ有効ナ作戦と思エル。試シテミル価値ハアル…今、思イツイタノカ?』

「うん。画面を見ていて、ふと…ね。」

『オマエノ能力ノ理解出来ナイ部分デアル。ヨカロウ。“妖精”タチニ連絡ヲ回シテオク。シュンハいっせトけあいだノ二人ニ通信セヨ。』

「了解。」

 僕がぶつぶつ呟いているのを見て、マニャが近寄ってきた。

「何?なんか始める気でしょ。」

 ドキッ。縄文ドキッ。         つまらん。

「シュンくんの“何か”が始まるのか?それは期待大だな。」

 ときどき思うのだけど、ナホさんってマニャと似たような感性を持っていないか?落ち着いた大学生とばかり思っていたけれど…。


 イッセさんもケアイダさんも「それは使えるかも」と了解してくれ、それぞれの持ち場の隊長たちに一斉通信を回してくれた。詳細は各“妖精”が連絡しあい、作戦を密にしてくれている。出撃命令が出たら試してみようかな、程度のつもりだったんだけど、いつの間にか機動兵士部隊全体での実行プランになってしまっている。あわわ。

 そんなこんなしているうちに、外の様子は三族艦隊が圧倒的に“敵”艦隊を撃滅していった。サーナベト艦隊と補給艦隊も幸い全滅を免れたようで、全域通信はあちこちからの歓声が聞こえてくる。と、いうことは…オペレーターさんからの僕たちへの放送が始まった。

【機動兵士のみなさんに伝えます。艦隊戦闘は現在有利に進んでいます。間もなく、短距離砲撃戦を行い、そのあと機動兵士部隊の投入予定です。操縦士の皆さんは最終確認を行って下さい。繰り返します…】

 いつも通りの感情のこもっていない放送。でも今回は末尾が違っていた。いつもなら【必ず回収いたしますので最後まであきらめないように】という定型文で締めくくるのであるが今回はエライことを言われた。

【戦闘終了後、機動兵士隊は虎族の近衛隊またはサーナベト艦隊に回収を依頼しています。通信確認を行い、どちらかの艦隊の船に着艦してください。我が三族艦隊は機動兵士の出撃後、ノモゥダベト艦隊の援護に向かいます。機動兵士隊の勝利を祈ります。繰り返します…】

 艦内放送の後、様々な疑問の声が格納庫に満ちた。「俺たちを放り出すのかい?」「なんて無責任な!」「ノモゥダベト艦隊助けに行って、機動兵士が必要になったらどうするんだ」等々。各隊のリーダーが制止するまでそれは続いた。それは我がフィンガーズでも同じだったが、

「時間が惜しい、ということだな。」

「そうね、ノモゥダベト艦隊救出も…さっきの作戦かな。」

「そうか、それなら機動兵士はつかわなくてすむもんね~。」

 女子高生三人がぺちゃくちゃおしゃべりしている間、僕はナホさんと打ち合わせだ。

「つまり、シュンとミキの隙を突いて来る敵機を私が担当するのだな。」

「はい、遠距離の間に狙撃してもらえると、僕とミキに時間が生まれます。」

「了解した。しかし、君はいつもおもしろいこと思いつくなー。」

 そのとき、格納庫の床と天井どっちがどっちかわからないの照明が黄色になった。出撃直前の合図だ。僕はミキに合図して、二人の機体をカタパルトの先頭にセッティングする。イッセさんから通信が入る。

「先鋒を買ってでてくれるのかい?」

「言い出しっぺがお手本を見せないといけないでしょ。僕たちが上手くいったら、イッセさんもお願いします。」

「了解。フィンガーズの健闘を祈る。」

「ありがとうございます。」

 格納庫全体が赤い照明で満たされる。格納庫のドアが開いた。僕はいつものかけ声を大声で叫ぶ

「シュン、“一つ目グレー”発進します!行きまーーーーーーす!!」

 隣からはやはりミキの恐怖を振り払う大声が通信に入ってくる

「ミキ、“一つ目レッド”出まーーーーーーす !!   ひゃあ。」

 衝撃吸収ゼリーに包まれ、装甲戦闘服も身に纏っているおかげで、痛みとかはないが、それでもエレベーターやジェットコースターなんかとは比べものにならないGを感じる。身体全体がシートに押しつけられ、頬が後ろに引っ張られる。慣性制御が確立しているこの機体でも打ち消せないほどのGってどれくらいなんだーーーーーー

 僕とミキの機体が出撃すると同時に、ナホいてマニャの機体が前後に並んで出てきた。猛スピードで宇宙を駆け抜ける先行する僕たち二人の機体に即座に二人の機体も同行する。と思う間もなく、ユカリの隊長機も追いついた。五機編隊を即座に構成し、出撃時の発射速度そのままに、“敵”を探す。

 すぐに目の前に“スズメバチ”の群れがいると“妖精”から情報が入る。高速で飛び続けながら、僕はミキに通信する。

「ミキ、僕ら二人は離れずに中央突破。よろしく!」

「ふーん。二人きりで…?マニャに怒られない??」

「・・・・・・」

「無視かぁ!!」


 高速で飛行する五つの機体。フィンガーズは出撃時の射出速度そのままで、“スズメバチ”の群れに突っ込んでいった。固唾をのんでモニターに映し出されるその様子を見続ける、待機中の機動兵士たち。


 彼らの戦闘もいよいよ始まる。


日本は宇宙人に侵略されました。宇宙での戦闘は孤独です。


ご訪問ありがとうございます。地球出身の高校生たち(+大学生)の宇宙戦闘が始まります…さてどうなるか、作者にもまだ不明です。

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