戦闘員の日常5
オレは世界征服を企てるゾッカーの戦闘員…のはずなんだが…。
5-6-5 戦闘員の日常5
いつものように「未来製作無限会社」に出社する。眠い目をこすりながら。
「おはようございます~。」
「遅い。おやつ時に遅れるな!」
挨拶するなり、クジコさんのいつもの返事。だから、高校生が3時に来られるわけないって~。でもこの人のわがままには言い訳できない。さらに、昨日は借りも出来てしまった。まずは、お礼を言おう。
「クジコさん、事務員さん、昨晩はありがとうございました。」
無言でペコリと頭を下げ返してくれる事務員さん。ホントしゃべらない人だ。それに対して
「お礼はモノで返してほしいわねー。」
そういわれるとお思い、オレはミス・ドーナツで買い込んでいた袋を取り出した。
「こんなもんで許して下さい。」
「許すわ~。」
「じゃあ、お茶にしましょうか。」
南部さまの一言で、出勤するなり休憩タイムとなった。大丈夫か、この会社。いや、秘密組織。
しばらく、無言で咀嚼する時間が続いた。しかし、とうとう南部さまが話を切り出してきた。
「昨日は大変だったネー。で、連中に連れ去られてどうなったの?」
ということは、事務員さんかクジコさんは最後まで見ていたのか。
「はぁ。宇宙局のA市支部に連れて行かれました。」
「ねぇ、拷問でもされたの?痛かった?」
この女性はどういう性癖なんだ?
「キミの正体がバレてないか心配だったんだよー。」
「ありがとうございます。幸い、身体検査とかはされなかったので…まぁオレの場合体力検査でないとバレないと思いますが。」
「でも、相手は宇宙人の科学力だからねー。」
クジコさんも肯いている。世界征服を目指す秘密組織ゾッカーにとっても、宇宙人の科学力は脅威なのである。
「で、正体はバレなかったとして、アンタはどうなったのよ。拷問は?」
「…家に連絡されて、それで終わりでした。」
ウソである。オレは今日の授業中ずっと考えていた。話すべきか、隠すべきか。話したらきっとゾッカーに調べられるだろう。ゾッカーに忠誠心はあるが、そのゾッカーにも渡せないモノがある。オレは隠すことにきめたのだ。
「そう、よかったねー。」
お茶をすすりながらそう言ってくれる南部さまに心が痛い。でも、南部さまにでもバレるわけにはいかない。バレたら、ドクター西上に切り刻まれるだろうから。
「ええ。なんとか正体を隠せてよかったです。でも遅くまでかかったから一日中眠くて眠くて。」
なんとか話を誤魔化すように持っていく。
「そうかー。じゃあ、今日は打ち込み作業するとミスが多いかもね。」
そこまで言うと、南部さまの口調が変わった。重々しい、A市支部の長の雰囲気が醸し出される。それを察知してオレは立ち上がった。
「戦闘員267号、本日は地下の格闘教練場にて、訓練を命ずる。」
「イー。承知しました。」
そのやりとりに、クジコさんが口を挟む。
「南部さまは、コイツに甘すぎですよ。」
「まぁまぁ。お父さんには世話になったんです。」
ペコリ、と頭を下げて、オレは地下へ行くエレベータに向かった。
「未来製作無限会社」の建物は築30年ほどの地上3階建ての古い古いビルである。しかしそれは見せかけで、地下は何回まであるのか、オレも知らない。
オレが利用できるエレベーターには、地下2階までしか表記がないからである。南部さまやクジコさんが使えるエレベーターはどこまで深くいけるのだろうか。
エレベーターのドアが開くと、目の前に受付がある。いつも思うのだけど、この間取りって、カラオケに似てるよなー。受付嬢がにこやかに話しかけてくる。
「あら、健人くん、久し振りね。」
「ご無沙汰しています。今日は格闘訓練をしたいのですが…。」
「丁度、指導員の来ている日よ。よかったわね。」
筋トレだけをすることも出来たが、オレは試したいことがあったので、格闘訓練を選んだのだ。
トレーニングウェアに着替えたオレは、武道場を眺めた。今日も数十人が訓練をしている。集団戦の訓練、個人格闘の訓練。様々な武器の訓練など、みんな必死で練習をしている。ちなみに射撃訓練場は別の場所にある。
オレの目は指導員を捜した。オレンジのウェアのおかげで、一目で見つかる。丁度壁際で汗を拭いているところだった。
「サボ先輩、お久しぶりです。」
ちなみに、なぜ指導員がサボさんかというと、サボテン怪人だからである。彼は剣技に秀でているが、格闘も上級者である。
「よう、健人。長いこと来ていないなぁ。」
「一応、高校生ですから。あのー久し振りに、一手お願いできませんか?」
「おお、いいよ。ウォーミングアップ終えたら、やろうか。」
お礼を言って、オレはストレッチを始めた。なんでも準備運動は必要だ。悪の組織であってもそれは変わらない。世界征服への作戦開始前には全員で輪になって準備運動をするのは当たり前のことである。
「お待たせしました。サボ先輩、お願いします。」
「よし来い!」
まずは一礼。礼に始まり、礼に終わる。これも当たり前である。オレは礼を終えると、距離を取った。外国人からの改造人間であるサボさんのリーチは長い。と、思う間もなく、パンチが伸びてきた。速い!必死で躱したが、足がよろけて転がってしまった。そこに蹴りが迫ってくる。今までのオレなら一撃喰らっていただろう。しかし
『協力ヲ開始スル』
頭の中で、声が聞こえた。その瞬間、オレの両脚は以前の数倍の脚力を得た。一瞬で蹴りを躱し、数メートル横っ飛びをする。サボさんは驚いた顔である。
「なんだ、今の動きは?」
「へへへ、こっそり鍛えていたんです。」
ウソである。昨晩、“妖精”使いになって、一気に能力が向上したのである。“妖精”モップの力である。
そのあと、サボさんの動きは手に取るようにわかった。動体視力も、神経の伝達速度もケタが違う。戦闘員の能力は通常の人の数倍と言われているが、今のオレの能力は改造された怪人を軽く凌駕している。でも、バレるわけにはいかないので、必死を装う。最後にサボさんの攻撃を喰らって、終了とする。
「やるじゃないか、健人。格段の進歩だ。戦闘員とは思えない動きだったぞ。」
二人で汗を拭き、スポドリを飲みながら会話する。
「いやぁ、さずが先輩です。あと一歩どうすることも出来ませんでした。」
「いやいや。ヤバイ場面が多々あったわ。オマエが怪人になる日が楽しみだよ。」
「ありがとうございます。」
もう一度お礼を言って、格技場をあとにする。オレは“妖精”の力を確かめることが出来た。
昨晩、宇宙局の支部で、オレは頼まれた。
「キミには、“妖精”持ちを守る役目を手伝ってほしいんだ。」
「無論、高校生の身分は出来る限り保障する。ただ、緊急時にはかけつけてほしい。」
そして、“虫”との戦いにも場合によっては協力を願いたいと頼まれた。
オレの頭脳はフル回転をした。それは世界征服を目指すゾッカーの目的と相反しないか?ゾッカーは世界を崩壊させたいわけじゃない。世界を征服したいのだ。宇宙から降りてくる“虫”どもは世界を滅ぼしかねない。それを守る“妖精”持ち=民間戦闘員を守ることは、けっして悪いことではないだろう。昨晩のように、なんの関係もない民間人にまで危害を与えるヤツらをオレは許せない。
「アルバイト料は出るんですか?」
「あんまり高いとは言えないけどね。」
覆面ライダーウィーズである、ワタルさんの笑顔はとても爽やかだった。オレはつられて微笑んでしまった。
こうして、オレは、世界征服を狙う悪の組織、「ゾッカー」戦闘員であり、世界を守る「“妖精”持ち」をガードする「“妖精”使い」になった。
日本は宇宙人に侵略されました。いや、ゾッカーが“征服”したいんですけどね。…今は宇宙人に協力するとしましょう。
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