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テガミ

今回台詞多いです。

「と言う訳で、本日からお嬢様の専属執事となりました」

 リクトが頭をさげる。

「で、何をなさってるんですか」

「いや、次は難しいなと・・・」

「何が難しいですか」

「あぁ」

 私が机で開いていたノートをリクトが取り上げる。

「難しいもなにも、させませんよ」

「殺生!」

 くそー。次はどうやって街に行くか・・・。

「私は監視の意味でお嬢様の執事になってるんですよ。逃げ出すなんて出来ると思いますか」

「おもわない」

 私は即答する。だが!

「できないことに挑戦する」

「だから、させないって」

 私の台詞をさえぎってまで言えるほどの実力があるという事か!

「むぅ・・・」

「そんなに街に行きたいなら国王様に許可をとってからいってください」

 うーん。

「いや、多分許可でないと思うし、監視の目をぬすんで抜け出すっていうのがいいから・・・」

「じゃあ二度といけませんね」

 いかせる気はまるでないってか!

「まぁ、ダメでもともと聞いてみるよ」



「いいぞ」

「んなあっさり・・・」

 ダメでもともと聞きにきてこれ。

「ただし、リクトを連れて行け」

「なんでリクト?」

「アイツが一番執事としては優秀なんだよ」

 あぁ、それは納得するわ。

「それだけか?」

「あ、ごめん。忙しかった?」

「いつでも忙しいからな。少しくらいいいさ」

 まぁ、国王様だもんねぇ・・・。

 そういえば私に許婚っていたりするのかな?

 一応姫様だから・・・政略結婚的なのがあってもおかしくはないよね。

「失礼しましたー」

 礼をして部屋を出る。

「とりあえずリクトに相談するか」





 ふぅ。これでひとだんらくとするか。

「にしても、あんな適当な理由で納得してくれるとはな」

 リクトを連れて行けって言うのはちょっとした策略からいったんだが・・・。

「あ、リクトを後で呼ぶか」




「失礼します」

 そういって入ってきたのはリクト。

「おぉ、来たか」

「で、お話とは?」

「エミリィに外出の許可を出した」

「はい」

「で、その条件にお前を連れて行けといったんだが」

「・・・・はい」(嫌な予感がする・・・)

「外に出てる間は、敬語使うなよ」

「は?」

「お前も知っているとおり、エミリィの存在はまだ公にはされていない。だから、街で普通の女の子が執事連れて敬語使われてたらなんか違和感あるだろう」

「はぁ」(確かにな)

「だから、二人とも私服で敬語も使わなくていいから」

「それは・・・」

「・・・・」

 俺は静かにリクトを見る。

「っ・・・。かしこまりました」

「頼んだぞー」

 リクトは黙らせたし大丈夫だろ。




 俺が国王様の部屋から出るとお嬢様に声を掛けられた。

 って、もしかして街に出たら名前を呼ぶのか。

「いたいた、リクト」

「何でしょうお嬢様」

「父さんから街に行く許可を貰ったんだけど」

「その条件が私を連れて行くこと、でございましょう?」

「そう。もしかして今聞いた?」

「えぇ、街に出たら普通に接しろといわれました」

「普通に?」

「敬語を使うなという事だそうです」

「へぇ~。じゃあ、呼び方も『お嬢様』じゃなくて『エミリィ』なの?」

「えぇ。気分を害しましたら申し訳ございません」

「ううん。別にいいの」

 少し微笑んで俺に言う。

 ・・・・・。

「どうしたの?」

「いえ」

 俺はお嬢様に微笑み返す。

 俺は俺の仕事を果たさなければならないんだ。

「リクト君!」

「あ、リシェさん」

 俺が返事をする代わりにお嬢様が俺を呼んだ人の名前を呼ぶ。

「どうかしましたか?リシェさん」

「リクト君に手紙よ。差出人の名前がないんだけれど・・・」

 差出人の名前の変わりに狼のマークが書かれている。

「捨てた方がいいのかしら?」

「いえ」

 捨てるなんてとんでもない!

 催促の手紙か・・・?

「そう?じゃあ渡しておくわね。あ、失礼しましたお嬢様」

 リシェさんがお嬢様に一礼して廊下を戻っていく。

「誰からの手紙?」

「お嬢様は知らないほうがいいかと」

 知れば俺はそばに居られなくなる。

「そう・・・・」

 お嬢様を部屋まで送り届けて自分の部屋に一度戻る。

「やはりか」

 差出人が予想通りで思わず呟いてしまう。

「・・・・・」

 ざっと目を通し、内容も予想通りであることを確かめる。

「・・・・。潮時、か」

 仕事をしなくては。





 リクトと別れ部屋でぼーっとする。

(お嬢様は知らないほうがいいかと)

 どういう意味だったんだろう。

 リクトが部屋を出た隙に入ってみようかな。

「うん。そうしよう」

 思い立ったが吉日!さ、レッツゴー!

 まずリクトの部屋をノックする。

「はい」

 中からリクトの声がした。

 チッ、中にいたか。

 ダッシュで曲がり角を曲がる。

「?」

 外に誰もいないのをいぶかしむリクト。

「リクト!」

 私の居る反対側から一人のメイドさんが来る。

 えっと、ユリアさんだっけ?

「ユリア」

「手紙が来たって?」

「お前には関係ない。仕事に戻るぞ」

「なにそれ酷くない?心配してあげてるんだよ?」

「はいはい。ありがとうございます」

「もう」

 ユリアさんと並んで向こうへ歩いていく。

 ・・・・・。何か・・・・・。

 それより!手紙!

 リクトの部屋に侵入する。

 その手紙は無造作に机の上においてあった。


カサッ


 手にとってみようとしたその時。

「お嬢様?」

「ひぁ!!」

 ビックリして飛び上がる。

「あ」

 手紙を取り落とす。

「あ・・・」

 リクトは素早く手紙を拾い上げて机の上の封筒にしまって引き出しの中に入れた。

 けれど、私は見てしまった。

 一瞬、一瞬だったけれど、一瞬だったから見間違いかもしれない。けれど・・・。

 多分あってる。リクト宛の手紙に

『早く殺しなさい。仕事ができない奴は要らない』

って書いてあった。

 殺す?誰を?誰が?

 リクトが誰かを殺すの?

 ドクンドクンと心臓が何度かはねる。

「お嬢様」

 少し低いリクトの声。

「ごめん、なさい」

 素直に謝る。

「読んだんですか?」

「いえ。全く」

 少しだけ。あの一文だけ見えたけれど、読んだことにはならない。

「読んでないならいいです」

 はぁ、と安堵のため息とも取れるため息をつくリクト。

「部屋を早く出ましょう」

「うん・・・・」

 私は見てはいけないものを見たんだ。

(知らないほうがいいかと)

 どうして、『殺す』なんて言葉が・・・・。

「お嬢様?」

 俯いている私の顔を覗き込むリクト。

「どうかなさいましたか?」

「ううん。少し部屋で休むわ」

 部屋に向かう。

 さっきの一文が頭をめぐる。

 女の人の流麗な文字。

 一瞬なのに、少ししか見えていないのに、しっかりと頭に焼き付いていた。

『早く殺しなさい。仕事のできない奴は要らない』

 『殺しなさい』その言葉と共にもうひとつ引っかかっていた。

 女の人の流麗な文字。だった。

 差出人は女の人なんだろう。それがなぜかものすごく引っかかった。

 二つのことが頭をめぐる。

「どういう・・・ことなんだろう」

「どうしました?」

 リクトはハーブティーを入れながら私に聞いた。

 確かに専属執事になったのは今日だ。

 けれど、リクトのことなら大抵は知っている。

 好きなものはハーブクッキー。カモミールティーだけは飲めない。誕生日は十一月七日。その他諸々。

 でも、何も知らなかったんだな。

 気にもしていなかったし、気にもならなかった。

 けれど、今。リクト。私はあなたのことが知りたい。

 どうしたら、教えてくれる?どうしたらあなたのことを知れるの?

 リクトの入れてくれたハーブティーを飲みながら私は考えていた。

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