ホシュウ
どうにか書き上げた!
「うわぁ・・・・。暗雲だらけだぁ・・・・」
窓の外を眺めわたしはぼやいた。
「午後から雨が降るようですね」
私に制服を渡しながらリクトが答える。
雨、かぁ・・・。
「かさ持って行かないとね」
「本日は午前で終りますので必要ないかと」
あぁ・・・、そういえば今日は単なる補習なんだっけ。
「はぁ~。補習の監督役なんて受けるんじゃなかった」
その愚痴にはリクトは反応せず、「そろそろいかれますか?」と聞いてきただけだった。
「うん。一回ルナの家よってからいくよ」
「かしこまりました」
「はぁ~、なんで監督役なんて受けたんだと思うー?エミリィ」
私と同じ事を言っているルナが私の横に座ってる。
「さぁ?知らないわよ」
「ねていい?」
「ダメ。もう着くでしょ」
車のなかでルナと言い合う。
「ていうかさ、なんでこんなに補習の人がおおいわけ?」
「馬鹿なお坊ちゃまばっかりだからよ。補習の人の大半が男子でしょ」
「到着いたしました」
リクトの声がかかる。
「ありがとう」
「ありがとうございましたー」
ルナと並んで曇り空の下校舎へ向かう。
「せんせー、きましたー」
教室の扉を勢いよく開け放ちルナが中にいた先生に呼びかける。
「ルナさん。貴女の先生はいい加減ね。まぁいいわ。エミリィさんもきてくれたのね」
「えぇ。頼まれましたから」
「申し訳ないけどあとよろしくね」
先生は私たちに後を頼み、教室を出て行く。
「はぁ・・・やっと先生でていったー」
一人の男子生徒が呟いた。知り合いだ・・・。
「だからと言って、だらけていいわけじゃないわよキルアくん?」
「あー、監督役エミリィかよーー。さぼれねー」
ブツブツいいながら出された課題を進めていく。
「解らないとこがあったら言ってね。教えれることは教えるから」
ルナが補習の人達に言い渡す。
「あのー、この問題がわからないんですけど・・・」
一人の女子生徒が手を上げて恐る恐るといったふうに言う。
「どれ?」
ルナがその女の子の所へ行って教え始める。
教卓のそばにいすを持っていって座る。
「そこっ!後ろから二番目の右から三番目!寝るな!」
早速うで枕を作ってる奴を発見。金持ちも平民もかわらねいねぇー。
「エミリィ今日不機嫌だな」
目の前の男子ケノに言われる。
「そりゃあね。午前中で終るっていってたけど、本当に終るかしらね。課題終った人からもってきてよー」
そう声をかけると何人かが持ってきた。
「えっと、はい。オッケー。次の課題やってて」
「次っ!?」
「書いてあるでしょ。数学の次は・・・科学ってつらつらと」
後ろの黒板を指差してやる。
「さぁて、午前中までに終るのかしら」
ため息をつきながら持ってきた奴の課題を見ていった。
「はぁ・・・やっぱりおわらないじゃない」
「すいません、ここ解らないんですけど」
「はいはい」
ていうか、解らない問題多すぎるでしょ!
「これはさっき説明した奴の応用だから・・・」
説明をして戻ろうとすると、
「あの、教えてください」
「・・・・・わかった」
また同じ問題で詰まってたようで同じ説明を繰り返す。
「絶対人手足りてないよね。これ」
「足りてないな」
「いいからキルアは問題解け!そっちも無駄口叩いてないでやる!」
うぅ・・・お腹すいた・・・。もう午後二時まわってるよぅ・・・。
「ごめんなさいねー。エミリィさんルナさんお疲れ様。でももう少し頑張ってね。これ差し入れ」
お弁当!
「お腹すいたでしょ」
ルナと二人でぶんぶんうなずく。
「他の人は課題全部終るまでダメよー。終った人からかえってよし!絶対監督の人に声をかけるように」
私たちにお弁当を渡しながらそういうと先生はまた出て行った。
「先生忙しそうだねー。いただきまーす」
「そうね。こっちじゃない別のやつで手伝いたいものね。いただきまーす」
「いいなぁーエミリィたち」
「「てめぇらはさっさと課題終らせろ」」
「彼方達が終るまで私たち多分かえれないからね!?」
「じゃあ答え教えてくれよーそしたらさっさとおわるじゃねーか」
キルアが文句を言った。
「ヤダ」
「そのほうがめんどくさい」
ルナと口をそろえる。
「つーか腹へって・・・何もできねぇ・・・」
「なら永遠にそこにいろ」
「なんか時間が経つごとに罵倒が酷くなっていくんだが・・・・」
「エミリィはもともとよ」
「そうそう。私はもとから口が悪いって」
暫くは解けない問題がある。なんていわれることもなく黙々と弁当を食べ進める。
「ご馳走様ー」
「ルナはやっ!」
ものの五分であのでかい弁当を食べ終えたルナ。早すぎるでしょ!
「いつもこれくらいじゃん。皆早く終らせてよー」
「ルナさん。おわりました」
「これ、最後の課題?」
赤ペンを持って持ってきた課題を見てあげるルナ。
「おっけー。かえっていいよ」
「ありがとうございました」
「ルナさん!おわりました!」
「ご馳走様。私のほうにも持ってきてよー」
「エミリィさん終ったんですけど・・・」
「はいはい」
一人帰りを許された人が出ると続々と課題を持ってくる人が増える。
「おっけー」
「はい。おわり」
次々と皆が帰っていく中で、一人だけずっと残っていた。
「キルア、いつまで残るつもりよ」
キルアはこの国一番(モチロン王家をのぞいて)のお金持ちのお坊ちゃま。
それなりに会うこともおおかったから、ミリアの次に仲がいい。
「しかたねぇだろ。おわんねぇんだから」
「さっさとおわらせろって言ってるの」
「キルア、課題持ってきてみなさい」
クスクスルナが笑いながら言った。渋々とキルアがルナに課題を持っていく。
「ほら、やっぱり全部終ってた」
「は?全部終ってたって・・・」
「かえっていいよーキルア」
「何で解ったんだよ」
「見ればわかるわ」
その後にルナがキルアにそっと耳打ちする。
「なっ!」
「やっぱりーあの噂は本当なのね」
「あのうわさ!?」
「ルナは前の学校のデータバンクだったからね。何処からそんな情報もってきた!っていうのも持ってるよこの人」
「せいぜい弱みを握られないことねー」
「エミリィより性質わりぃ・・・」
「しつれいねぇ」
「全く持ってその通り」
私はキルアの言葉に深くうなずいた。
「はぁ。じゃ、バレたから帰るわ」
キルアはおとなしくかえる準備をする。
「じゃ、私は先生に報告してくるね」
ルナが教室を出て行く。
「じゃ、私はゴミ捨ててこようかな」
さっき渡された弁当のゴミを私は持つ。
「あぁ、俺がすてとくよ」
「あ、そう?お願い」
キルアに渡す。
「じゃあな」
「じゃあねー」
キルアと入れ違いでルナが入ってくる。
「私たちも帰っていいって。ついでに今日の報酬」
ルナの手に握られていたのは有名なケーキ屋のタダ券。
「三枚ずつだってさ」
私に五枚渡してくる。
「三枚ずつなんじゃないの?」
「私は一枚でいいから。正直そんなにケーキとか食べないしね」
それに、と続けるルナ。
「リクトさんとでもいけばー?タダなんだしー」
私は苦笑する。
「言われなくても」
「あんた鈍い割には強気よねー」
「は?」
「いえいえ」
変なの。
ルナと並んで玄関口を目指す。
「あー、今晩辺り嵐がくるかなー」
山の向こうの暗雲をみてルナが呟いた。
「え?本当!?」
上履きを下駄箱になおしながら私はルナに聞き返す。
「うん。エミリィの嫌いな雷がくるよ」
振り返ってニヤリと笑うルナ。
「高校生にもなって雷が苦手とはねー。笑えるわ」
「黙れ」
ひどーい。なんていいながら笑ってるこの友人がものすごくむかつく。
「ま、私は雨降りそうだから先にかえるねー」
「あ、別に送ってくのに」
「いいのいいの。じゃ!またあしたー!」
駆け足で去っていく友人の背中を見送って私はリクトに電話する。
「リクト?こっちやっと終ったの。迎えに来てくれる?」
「うわー。雨降ってきたぁー」
心底嫌そうなこえでお嬢様が窓の外を見ながら言った。
「今晩嵐が来るようですよ」
「本当に?はぁ・・・」
バックミラー越しに見える彼女の顔はかなり憂鬱そうだった。
「どうかなされたんですか?」
「・・・・わらわない?」
「ことによります」
「酷い・・・。まぁ、ぶっちゃけ、雷が怖いのよ」
「は?」
拗ねた表情でそっぽをむいて腕まで組むお嬢様。
「だから・・・雷が怖いの」
「そんな、幼稚園児じゃあるまいし・・・」
「小学生ですらなくなった!?」
雷を怖がるのは幼稚園児くらいのものでしょう?
「高校生でも怖いものは怖いのよ。リクトだってあるでしょ?なにか」
「ありませんよ」
「即答!?絶対に何かあるって!」
「だからありませんよ」
じゃないと、この仕事は勤まらない。
「むー。つまらない」
「結構です」
「絶対に何かあるって!」
何度も言うお嬢様を軽く流す。
『絶対』か・・・。あるとすれば、大切な人を失うこと、大切な人が俺のせいで危険な目に会うこと・・・。
「リクト?」
「え?はい?何でしょう?」
「いや、何か考え事してたみたいだったから。ちゃんと前見ててよー?事故るじゃん」
「前々から思ってたんですが」
「なに?」
「お嬢様は姫様なのに言葉遣いがお嬢様らしくないですよね」
「必要な時にしかしないわよ。お嬢様らしい言葉遣いってミリアみたいなのでしょ?」
「ミリア様・・・・えぇそうですね」
「なに!?今の間!え、なに!?違うの!?」
「いえ。あってますよ?」
「だから、今の間は!?」
ねぇねぇ!となおも聞いてくるお嬢様を流し、車を玄関に着ける。
「お嬢様、つきましたよ。降りてもらえますか?」
「うー、わかった」
不服そうにしながらも降りてくれるお嬢様。
「あとで、聞くからね!」
はいはい。と聞き流す。
こんな事ができるのは、後どれだけなのか・・・。




