ベンキョウ
一週間後。
今日はリクトの誕生日。
そっとプレゼントを確認する。うん。綺麗にラッピングされたものが引き出しの中に二つ並んでいる。さ、リクトに渡してこよう。
「って、リクトどこだろう」
廊下に出て、辺りを見回す。リクトらしき姿は見えない。
「あ、リシェさん。リクトどこかしらない?」
「リクトくんは今日は用事があるから休ませてほしいって言ってましたよ」
「え゛・・・・」
まじすか。ざんねん・・・。
「クスッ」
「どうしたの?リシェさん」
「いえ」
微笑んだまま返される。
「お嬢様は顔によく考えてることがでるようで」
「リクトにも似たようなことをいわれた気がするわ」
苦笑を返す。なんのことをさされているのかは分っている。つもり。
「そういえば、お嬢様」
「なに?」
「近々・・・」
リシェさんが報告をしてくれる。
「え・・・・。嘘!?」
「本当です」
「わーーー」
なんでくるのよあの馬鹿王子ーーーーー!
「・・・」
「どうした?」
「いや、なんでもない。お嬢様がなにか叫んでいらしたような気がしたんだ」
「お前、執事が板についてきたな」
「お褒めいただきありがとう」
執事が板についてきたって、本当は皮肉のつもりなんだろうな。
「あの天下のリクト様がねぇ・・・」
「その気持ち悪い笑みを今すぐ消せ」
「消さないね。悪いがこれが俺の俺らしさだ」
「はぁ・・・」
久しぶりに会えばこれか。
「それで、お前は仕事が達成できるわけ?ムリならかわってやるよ」
「さぁな。この先次第だろうよ」
俺は席を立った。
「あ、帰るのか?」
「あぁ。そろそろ戻らないと間に合わない」
「じゃあやるよ」
「?なんだこれは」
「誕生日プレゼント。今日お前の誕生日だろうが」
「・・・・・」
「なんだよその汚物を見るような目は!」
「なんだよ急に・・・・。気持ち悪いぞ・・・・」
いつにもまして気持ち悪い。
「別に。ただ、少し、な」
含みのある言い方をする知人をおいて俺は城へと戻った。
「もどりましたー」
「あ、お帰り。リクト」
入り口で出迎えてくれたのはお嬢様・・・・なぜかメイド服で。
「どうしたんですかその格好」
「ちょっと、ね・・・あはは」
ごまかすように笑うお嬢様。
「とりあえず俺は着替えてきますんで」
俺は自分の部屋へ戻る。
「?なんか出て行くまえと変わってる気がする・・・・」
なんだ?何が違う?
「気のせいか」
さっといつもの執事服に着替える。
戻った頃にはお嬢様もメイド服から着替えていた。
「というか、本当になんであんな格好してたんですか」
「多分、リシェさんに聞けば分るかと。それよりも」
ごそごそと何かを取り出すお嬢様。
「はい。誕生日でしょ?」
渡してきたのはかわいらしくラッピングされた何か。
「いいですよ。プレゼントなんて」
「いいから。リクトが受け取らないとこれが無駄に・・・、いやなんでもない。とにかく受け取る!」
半ば押し付けるように俺にわたす。
「じゃ、私メイド服リシェさんに返してこないと」
そういって、俺がつき返す前に走り去る。
まぁ、貰っておくか。
「さっきももらったんだがなぁ・・・」
知人から貰ったプレゼントと共に机の上においておく。
「見るのはあとでいいか。仕事に戻らないと」
リシェさんに理由聞いてくるかな。
「・・・・はぁ・・・」
まさか、あんなことになるとは・・・。
リクトがいないことをいいことに『あの』手紙の全部を見てやろうと入ったのはいいんだけど、見つからない。
探して探して見つからなくて、いつの間にかリクトの部屋は凄まじいことに。
あわてて片付けている所をリシェさんに見られて・・・。幸か不幸かもうほぼ片付け終わった後で。どうにかごまかせた、と。
ごまかす口実が「ちょっと、リシェさんとかの苦労を味わおうとおもって・・・」みたいなことを言ったもんだから、メイド服をきて、メイドの仕事を色々してたわけですよ。
「でもみつからなかったなぁ・・・。捨てられたか」
全部見たかった。見れば、少しは私の疑問も解消されるはずなのに。代わりに、何かを失いそうだけれど。
「あ、宿題やるのわすれてた」
自然と図書室に向かっていた足の向きを変えて部屋へ戻る。
部屋に戻ると私は宿題を広げる。
「・・・・・」
黙々と宿題をしていく。
「えっと、これが提出日明日だからこれを先に終らせないとだめなんだよね」
数学のワークを広げる。
「えっと・・・」
ワークに手をつける。つける、けど、
「これ、どういう意味・・・?」
課題で出ている範囲の最後の問題で詰まる。
「どうされました?」
「あ、リクト。この問題がわからなくて・・・・」
解らない問題を指差してリクトに相談する。
「これなら・・・」
リクトが私に近づいて解らない問題を教えてくれる。
「このXが・・・」
でも、あんまり耳に入ってない。
だって、リクトが間近にいるし、顔近いし、息遣いが聞こえるし、本気で近いっ!
「わかりました?」
そのまま間近でこっちをみて聞いてくる!
「あ、うん。わかった」
てきとうに返事をしておく。
「わかってないですよね」
「わかったって」
スラスラと解いている風にする。
「ほら、わかってないじゃないですか。だからここが・・・」
今度はちゃんと聞く。こんな苦行もうやりたくないですっ!平静を装うのがたいへんだよぅ・・・。うれしいけど。
「っていう事になるんです。わかりました?」
「うん。わかった」
即座に返事をする。
「?本当にわかってます?」
「わかったってば」
今度はちゃんとスラスラとく。
「やればできるじゃないですか」
「あーはいそうですね」
できなかったのはお前のせいだ。とは言わない。
「じゃあ俺、食事の準備しないといけないんで」
「あ、ありがとうね。おしえてくれて」
「いえ。お嬢様の面倒を見るのが俺ですから」
失礼します。と一礼してからリクトは部屋を出て行く。
「私、顔赤くないよね・・・?」
リクトがいなくなってからそぉっと鏡でチェックしたのでした。
うーん、なかなかに無理矢理・・・。
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