タンジョウビ
「はぁ・・・」
学校で自分の席についてため息を着く。
「何でため息ついてるのよ」
ルナが横で呟く。
「だるいからよ。っていうか今実感したわ。私の親国王なんだって」
「エミリィさん」
声をかけられる。
「おーう、ミリアー」
ぐでーっと、机にへばりつきながら手だけを上げて返事する。
「エミリィさんよくこっちの学校に来るの承諾しましたね」
私の隣の席に着くミリア。
そう、ここは私の通っていた学校の横のお嬢様学校。いろんなとこの御曹司やら何やらが通ってる。
ミリアは一応この国の客だけど、(いや、客だから?)こっちにいる。ミルア国の代表としてきてるとか。
同い年で国王とか大変だねーーー。
「エミリィ、だらけすぎよ。幾らこっちの勉強が簡単すぎるからって」
ルナが横で私に小言を言う。
あ、なぜここに何処のお嬢様でもないルナがいるかって?
だから実感したのよ。私の親は国王なんだなって。すき放題じゃん。こういうのもなんだけど、元からこういうつもりだったんじゃないかと思うね。あの野郎。
ルナは特待生で入ってきた。一応試験はうけたんだってさ。余裕の満点スルー。
「簡単いうなこの天才めが」
私も一応難儀してるんだから!簡単って言えるほど簡単じゃないし。
「あ、先生来た。じゃあね」
ルナが自分の席へ戻る。
「ミリア、眠っちゃったら何の話してたか教えてね」
「寝る気満々じゃないですか」
昨日父様が私の事を公表した。もう、その後がてんやわんや。
学校に説明をするためにも公表した日は一応もとの高校行ったんだけど、知らなかった人まで知っちゃったもんだから事後処理が大変大変。
まぁ、噂で広がってたらしいからそんなに説明することもなかったんだけど。幸いあそこは王女って知っただけで苛めてくるような人は居ないしね。
「エミリィさん!腕枕をわざわざ作らない!」
「は~い」
くそっ、このじかん数学じゃん!眠れねぇ・・・・。
まぁ、そんなこんなで放課後。
「じゃ、ミリア。また明日」
「はい。また明日」
ミリアと別れを告げて教室の出口を目指す。
「あ、エミリィ」
教室の外に先に出ていたルナが声をかけてくる。
「なに?ルナ」
「今日は先に帰っといて。ちょっとやりたいことがあるから」
「?わかった」
私はルナとも別れを告げて今度は校門を目指す。
「お疲れ様でございます。お嬢様」
「本当に疲れたわ」
リクトに荷物をわたす。
「まったく、数学の時間に叩き起こされたのよ。ねむいったらないわ」
「それはようございました」
「どういう意味よ」
「そのままの意味にございます」
叩き起こされたのがいいってこと?
たしかにそうだけどさ。
「本当に疲れたわ」
ため息を着きながらリクトに荷物を渡す。
「眠れなかったし」
「それはようございました」
「人の不幸を良かったなんていうな」
「授業中に眠るほうがダメなんですよ?」
正論。
「とにかく帰るわよ」
大半の人が迎えの車が来ているのに対し、私とリクトは徒歩。
「ルナ様は待たなくてよろしいのですか?」
歩き出した私に声をかけてくるリクト。
「先帰っといてってさ」
振り返って質問に答える。
「そうですか」
リクトと他愛もない話をしながら城へ戻る。
「そういえばリクトって誕生日もうすぐだっけ」
ふいに思いついたことを聞いてみる。
「えぇ、二週間後だったと思いますが」
うーん、二週間後、か・・・。なんか用意できるかな・・・?
リクトにクスッと小さく笑われる。
「?なに?」
「いえ、もうそこですよ」
リクトは指さしたさきには城が見えていた。いや、もともと見えてたけど。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ」
リシェさんが礼をする。
「なんだろう、いつもリシェさんしか見てないきがする」
「お嬢様の世話係が私だからでしょう」
首をかしげて私の疑問に答えてくれるリシェさん。
歩きながら会話する。
「そんな仕事分担があったの?」
「えぇ、私も全てを把握しているわけではございませんが」
「へぇ、何気に人多いわけじゃないでしょ?」
「はい、全員集めても五十人にも満たないかと」
政務側の人間だけですが。と加える。
「まぁ、そりゃあ本当に全員集めたらどえらい数になるでしょうね」
苦笑する。でも、五十人未満でこの城を維持してるのか・・・。
「父様の凄さがちょっと実感したかも」
「あの方はあの方で、動いてらっしゃいますから」
「そうなの」
たしかにそうかもね・・・。
部屋に入ってリクトから荷物を受け取る。
「俺は自室に居ますので」
そういってリクトが部屋をでていく。
「はーい」
リクトの背中に呼びかけて、私は寝転ぶ。
「お嬢様!制服に皺がよります!着替えてください!」
「はーい」
リシェさん厳しい・・・。
おとなしく着替える。ふんわりとしたピンクのワンピースに袖を通す。
私が脱いだ制服はリシェさんがハンガーにかけて綺麗に皺を伸ばす。ついていた小さなほこりも取って服掛けに掛ける。
「ねぇリシェさん」
「はい?」
「男の人って何貰ったら嬉しいと思う?」
一瞬キョトンとするリシェさん。その後顔満面に徐々に優しい笑みが広がっていく。
「さぁ?リクトくんが何をすきなのか私はわかりませんし・・・」
「な・ん・で、リクトになるの!」
「お嬢様の周りの男性といえば国王様かリクトくんでしょう」
「クリスとかキルアとかえーっと、クラスメイトもいるでしょ」
「それ男の人ってごまかす必要ありますか?クリス様もキルア様もいつもお名前でよばれてますわ」
「キルアとかクリスとかいろんな男の子含めて聞いたんだとしたら?」
「キルア様とクリス様は好みをお嬢様自身が把握してらっしゃいます。まだあまり仲のよろしいわけではないクラスメイトにわざわざ私に聞いてまで渡すプレゼントがあるとは思えませんし、それに」
「それに?」
「今お嬢様がご自分で『聞いたんだとしたら?』と仮定してらっしゃいます。違うとお嬢様自身でおっしゃってるのも同然かと」
「どこぞの探偵ですかあなたは」
「知り合いはプロの探偵にございます」
「知り合いが、かい!まぁ、いいわ。でも・・・、いや、同じことね」
「でしょう?」
「はい、白状します。リクトの誕生日が近いから何か用意してあげたいんだけれど、何がいいのかわからなくて」
素直に最初から白状すればよかったかしら。
「では私がお聞きしましょうか?」
リシェさんからありがたい提案!
「本当!?お願いします!」
「はい。かしこまりました」
にこっと笑顔で了承してくれる。
「じゃあ聞いてきますね」
リシェさんが部屋を出て行く。
ありがたい!ほんと、リシェさん様々だよ!
「リクトくん」
「えっ、あっリシェさん?」
面白いほど動揺して手に持っていたものを取り落とす。
「ごめんなさい、ノックしても返事がなかったものだから勝手に入らせてもらったの」
取り落としたものをとってあげる。
誰かの写真のようだった。
「あ、ありがとうございます」
受け取るリクトくん。
「えと、何かごようですか?」
「あぁ、そうそう。リクトくん誕生日もうすぐでしょう?」
「はい。そうですね」
「だから、なにか用意してあげようかと思って。なにがいいですか?」
「なんでもいいですけど・・・、強いて言うならキーホルダーとか、でしょうか」
「キーホルダー、ですか?」
ちょっと意外かも。
「いや、ずっと身につけられているものが良いっていうだけで、なんでもいいんですけどね」
「身につけていられるもの・・・。好みを聞いたんですけどね」
「別に男がつけてて不自然なものじゃなければいいですよ。好みとか特にはありませんし。人からのもらい物って大事にしたいじゃないですか」
身につけていられるもの、ね。これでも少し悩んじゃうかなぁ、お嬢様。
「そう。じゃ、何か用意しておくわね」
そういってリクトくんの部屋をでる。
お嬢様にご報告しなくちゃ。部屋をでたその足でお嬢様の部屋を目指す。
「お嬢様」
ノックするが、こちらもこちらで返事がない。
「お嬢様失礼します」
鍵はかかっていないため一度断ってから入る。
「お嬢様?」
「!っリッリッ」
「リシェさんなんでここに?って言いたいんですか?」
コクコクうなずくお嬢様。
「さっきノックしましたよ?」
「え?した?」
「えぇ」
首をしきりに捻っている。本当に気づいていなかったようだ。
「何に夢中になってたんですか?」
「わっ」
机の上に広げていたものをバッとひっこめる。それほど見られたくないものだったらしい。
「で、何の用?」
「リクトくんに聞いてきました。いつも身につけていられるものがいいそうですよ。キーホルダーとか」
「好みは?」
「特に無いそうで。男がつけてて不自然じゃなければいいって言われました」
「そう。ありがとう。リシェさん」
かわいらしい笑顔を向けてくれるお嬢様。
「よーっし、身につけていられるものね。欲しいものがわかれば十分!」
やるぞー!と無駄にやる気を見せるお嬢様。
いいですねぇ。リクトくんは。私なんてすっとおつかえしてるのにそんな事してもらった覚えなんてないですよぅ。
「そういえば・・・、リシェさんの誕生日っていつ?毎年聞きそびれてたんだけど」
「あ、知らなかったんですか」
「うん。いつ?」
「リクトくんの二日後ですよ」
「そうなの!?じゃあ、リシェさんは何が欲しい?今回のお礼も含めてなにか・・・」
「お嬢様からいただけるものであればどんなものでも」
あ、即答しちゃった。
「わかった。でもハンカチとかのほうがいいよね。何か用意しとくよ」
「お嬢様からなんて・・・私にはもったいないですよ」
「いいの、いいの。いつもお世話になってるし」
「・・・、ありがとうございます」
深々と礼をする。
うぅ、うれし涙が・・・。
はい、急展開ー。
しょっちゅうこんな風に急展開なのは多いと思いますんで申し訳ありませんがお付き合いください。




