ルナとリオと真実と
「おはよう」
「おはよう!エミリィ!」
「なんでそんなにハイテンションなのよ・・・」
呆れるほどハイテンションの友人ルナ。
「きいたぞ!またあの人とでかけたって?」
「ここでする話か」
「いたいいたいいたいいたい!やめっ!ギブギブギブギブ!」
制 裁!
「エミリィなにやってんの?」
「ルナの制裁」
「いつものことかー」
からからと笑うクラスメイト。
「笑ってないで助けてよ!」
「やだー」
「即答!?ぐほっ!」
「たすけなくていいよー」
腹にエルボー決めて黙らす。
「あ、あの!エミリィさん!」
「どうしたの?リオ」
「ちょ、ちょっとお話したいことが・・・。ルナさんも」
へ?
涙目のルナと一緒に目で聞き返す。
「もう、朝休みはないんで、次の休み時間に・・・」
なんなんだろう?
ん?ルナがなんか考え込んでる・・・。
「ルナ?」
「は、はい!?」
「何をかんがえてたの?」
怪しいんだけど・・・。
「え、えっとねー。ちょーっとヘマしたかもって」
「な・・・・。まぁ、でもリオなら事情を話せばどうにかなるか・・・」
でも、このままだと、私がここに居られなくなるのもそうとおくないかもしれない・・・。
窓の外の葉桜を見つめて静かに思う。
そうなったら、私はどうするんだろう。
「かわらないよね」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
私は席に向かう。
そう、何も変わらない。
何かが大きく変わるわけじゃない。きっと何も変わらないさ。
「変わるとすれば・・・」
この周りのクラスメイト。ルナなら会えるし。
変わったとしても知られていれば、戻れない。私があわせないとダメなんだ。
何それ。自分で考えたくせに訳わかんないわ。最近頭おかしいな。私。
次の休み時間。
リオからの話は予想通り私が王女かの話だった。
「えぇ。そうよ。私はこのリヒト国の第一王女」
隠す気もないように淡々と答えた。
「え、じゃあ噂は・・・」
「本当よ」
横でルナが慌ててる。
「どうしたの?ルナ」
「リオ・・・。コレは、どうとったらいいのかしら?」
?
「ルナ?」
「まさか、本当って言うとは思わなかったんです。噂は嘘だって、否定して欲しかった。ずっと一緒に居たかったから。そばに居て欲しかったから」
はっとしてまわりを見渡す。さまざまな所の物陰に誰かが潜んでる。
その人数は・・・・・、十五は超えてる。
十五以上の人間が、さっきの話をきいていた?
「っ・・・。どうにも、ならないじゃない」
自分の不注意が招いた結果だ。誰も責められないだろう。
「もう、チャイムがなるわ。教室に戻りましょう」
私は制服のスカートを翻し、教室へ向かう。
事実を知って呆然としているクラスメイトたちと、事実を知って悲しんでいるリオ、この状況をどうにかしようと必死に悩んでいるルナ。
そこにいた友人達もすべて置いて私は教室へ向かい、何事も無かったように席に着いた。
チャイムが鳴って二分くらいしたらあそこにいた友人達クラスメイトがぞろぞろと教室に入ってきた。
「なにしていたの!」
先生からの怒声が飛ぶ。けれど誰一人答えない。俯いているけど、リオは今にも泣きそうな、他の皆は複雑そうな、ルナは諦めた顔をしていた。
放課後。
「エミリィ。どうするつもりなの?」
私は親友のエミリィに問いかける。
「どうするって・・・。もうここには居られないでしょう。父様に言って向こうに生かせて貰うわ」
まぁ、どうにかなるでしょう。とあまりにも興味がなさそうに、他人事のように言うものだから、
「・・・・・!」
思いっきり殴ってしまった。
「なんで、そんな簡単に諦めるのよ」
「あのメンバーをみてなかったの!?」
逆ギレ。
「私のことをよく思ってなくて、この学校から追い出したいって思ってる奴らもいっぱい居た!さっきのことを言いふらせば私がここに入れなくなるのは火を見るよりも明らかなのは小学生にだってわかるわよ!私が・・・・・私は・・・・」
一気にまくし立てて、途中で止まる、この国の王女の友人。
「っとにかくこれ以上、知っている人を増やしたらダメなのよ。あいつらが言いふらさない状況は私がここから居なくなったとき。私は、もう、どうあれ、ここには、いられない・・・・」
泣きそうな、震えた声で、彼女は、追い込まれていることを、私にも分っている簡単なことを、苛立ちながら、言った。
「だから、なんで諦めるのって聞いてるの」
「ここからどうやってここに居られる状況をつくれと?」
「どうにかすればいいじゃない!絶対にどうにかできるんだよ!」
「できないのよ!」
「できる!」
「無理だって!」
「無理じゃない!無理なわけがない!」
「じゃあ、どうするのよ・・・・。もう手遅れじゃない。聞いていた人たちはもう家に帰った。口止めもできないまま、ね」
「私がどうにかするよ。だから、あと、一日だけ、待って。明日どうにもなってなかったら、言ってくれていい」
「・・・・・・・・・。信じるわ」
それだけ言ってこの友人は荷物をもって教室を出て行った。
だれも居なくなった教室で素早く帰る用意をして教室を飛び出す私。
はやく、どうにかしないと・・・・・。
「お嬢様」
「リクト。来てたの」
「お帰りが遅かったので、迎えにいってこいと」
「そう、じゃあ、早くかえりましょ」
リクトの横を通って家路に着く。
「どうか、されたんですか?」
横を歩くリクトが心配そうに私の顔を覗き込む。
「なんで?」
「なんでって・・・」
リクトは自分の胸ポケットからハンカチを取り出すとそっと私の頬を拭いた。
「泣いてるじゃないですか」
「え・・・?」
すっとリクトが拭いた反対側の頬をなでてみる。なでた指がぬれていた。
「どうかされたんですか?」
もう一度聞いてくるリクト。
「なにも、ないわよ。早く帰りましょう」
早足でリクトのそばから逃げるように家に向かう。
リクトはそれ以上何もいわず、後ろを歩いてついてきた。
家に着く。
ルナ・・・・、ここからどうするのか、見せてもらおうじゃない。
私はこの馬鹿でかい王国の、一番馬鹿でかい街の中を駆け回る。
「すいません!エルゥさんの家ですか?」
あの場にいたひとの家をすべて回る。
街の端から端までが校区だから最西端の家の人も居れば、最東端の家の人もいる。
その全てをまわり、全員に口止めする。
最後にリオの家。もう日は暮れ落ちて、星がきらめきだした時だった。私の家とは本当に真逆の位置にあるリオの家。
「夜分遅くにすみません、リオさんはいますか」
半ば確信をもってリオを出してもらう。
「ルナ、さん・・・・」
「リオ。今日のことで話があるの」
「言いたい事はわかってますよ。言いふらすなってことでしょう」
「そうよ。けど、もうひとつ、私から言いたい事があるの」
「なんですか?」
「あんた、最低ね」
キツく、突き放すように私は言った。
「フフッ。だからなんですか?」
逆に楽しそうに、リオは言った。
エミリィはこの子を友人だといった。
けれど、この子はエミリィをクラスメイトとも思ってなかっただろう。
だって、この子は、反エミリィ派。つまり、エミリィを追い出したいと考えてる人たちを影で率いている人なんだから。
「お願い、絶対に、言わないで・・・・。私は、エミリィと離れたくない・・・・。あなたがエミリィを嫌ってたって、私や皆はエミリィが好きなの。だから・・・、お願い・・・・絶対に、エミリィのこと、言わないで・・・・誰にも・・・・」
ガマンしていた涙が一気に噴出す。今日中にどうにもできなかったら、エミリィは私のそばから居なくなる。一国の王女として、二度と会えなくなるかもしれない。
そんな事は嫌だ。絶対にあったらいけない。
「まぁ、考えておきますよ。あぁ、そうそう」
泣く私に反してニコニコ笑うリオ。
「私は反エミリィ派を率いてはいますが、別にエミリィさんが嫌いなわけじゃないですよ。私が嫌いなのは・・・」
真っ直ぐに私を指差す。
「ルナさん。あなたですよ」
「私・・・?」
「あなたのその泣き顔が見たかった。あなたが苦しむ姿を見たかったんです。エミリィさんのためなら、なんでもするあなたのね」
クスクス笑う。
エミリィの前でかぶっていたリオの仮面がはがれる。私が見抜いていた本当のリオ。口調は全く変わってないのに、とても悪そうに見えるのは、夜で顔が暗く見えるからか。
「じゃ、おきをつけておかえりくださいね」
リオは家の中へと引き上げていく。
もうよるはふけて、月が空の頂点を通り過ぎていく。
私は振り出した雨のなか、歩いてぬれて帰った。
あれー?おかしいなー?
こんなはずじゃなかったのになー。
・・・・・・・・。
どうしよう、収集つかねぇ・・・・。
アリス・ティアでした。




