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お題:正義と悪

 欝から立ち直ってから数日後の日曜日。

 夏の初めのじめじめとした暑さに春香は目を覚ました。視線が自然と壁の時計に向く。短針はまだ8の部分にも達していなかった。

(偶にはこんな時間に起きるのも悪くない、かな)


「おはよう、春香」

 リビングで寛いでいた春香の父・和哉からの朝の挨拶。

「おはよう……お父さん」

 父(男性)への拒絶反応は数日前を境にピタリと止んでいた。

 和哉は朝食を摂りながら適当にチャンネルを回していた。恐らくはニュース番組を見たかったのだろうが、その途中で映ったのは――

(特撮……?)

 赤青黄緑桃のスーツを着た5人組が1匹の怪物と対峙していた。

「今はこんなのやってるんだな」

 このシリーズ自体は元々前世紀から始まっている、ある種の長寿番組である。

(そういえばこういう番組に違和感を感じるようになったのはいつ頃からなんだっけ……?)

 正義。悪。その線引きは何処に存在するというのだろう。多数の力を借りて絶大な力を発揮する正義サイド。大抵孤独で、人数が集まったとしても互いに嫌悪し合っている悪サイド。「いじめ」の構図と一体何が違うのだろうか。多数によって倒された自分は悪なのだろうか。

「違う……」

「どうした?」

「……ううん。何でもないよ」

 違う。何かが違う。

 つまりは、ある人にとって正義とは自分自身或いはそれに味方する者達であり、悪は自分に仇成す者達だということなのだろう。


 嘗て、アメリカが旧アフガニスタンを爆撃したことがあった。

 アメリカ側からしてみれば自国の貿易ビルがテロ攻撃を受けたことに対する報復、つまりアメリカにとっての正義の執行に他ならないが、だからといって旧アフガニスタンを正義だと思う人が世界中何処にもいない訳ではない。和哉から聞いた話では、そもそもの発端がアメリカからの抑圧だったという。だから旧アフガニスタンは自らの正義を実行した、とも言い換えられる。


「朝から難しい顔してどうしたの? ホントに大丈夫?」

 深い思考に陥っていた春香に掛けられる声。母の裕美だ。

「あ、うん。お母さん、おはよう」

 ふと改めてテレビ画面に目を向ける。丁度、「正義」のファイター達を乗せた巨大ロボが同じく巨大化した「悪」の怪物にキックを浴びせ、その怪物が爆発しながら死んでいくシーンだった。

 結局、正義とは何なのだろう。悪とは何なのだろう。このような特撮番組が伝えたいメッセージとは何なのだろう。

(「勝ちたければ徒党を組みましょう」? ……まさか)

 皮肉めいた笑みを浮かべながら、春香は自分の食べるトーストをオーブントースターにセットした。


 ――今度、久にその辺りの意見聞いてみようかな。

300字という指定だったのに1000字超書いてしまったという。w

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