第四章:禁断の煮込みと、跳ね上がる運気
圧力鍋の魔法
午後五時。仕事終わりの足でスーパーへ寄り、大根、人参、こんにゃく、それに長ネギを買い込んだ。
「よし、準備は万端だ」
自宅のキッチン。俺は【∞収納】から、あの「ゴブリンのアキレス腱」を取り出した。見た目は驚くほど綺麗なピンク色のスジ肉だ。獣臭さは一切ない。
まずは下茹で。アクを取り除き、一口大に切った野菜と共に圧力鍋へ投入する。味付けは醤油、酒、みりん、そしてたっぷりの生姜。
「シュシュシュ……」
小気味よい蒸気の音が、独身の寂しい台所に響く。だが、今の俺は寂しさなんて微塵も感じていない。
一時間後。
圧力を抜いて蓋を開けると、そこには飴色に輝く極上の光景が広がっていた。
「仕上げだ」
ここで、昨日の戦利品「スライムマロニー」を4袋投入する。
普通のマロニーなら煮崩れを心配するところだが、こいつは違う。いくら煮ても食感を失わず、むしろ旨味を吸い込んで進化するのだ。
数分後。
『とろとろスジ煮込み〜スライムマロニー仕立て〜』の完成だ。
44歳、エセ関西弁の衝撃
「いただきます……」
まずは、アキレス腱を箸で持ち上げる。プルプルと震え、自重で千切れそうなほど柔らかい。
口に運んだ瞬間――脳に電流が走った。
「ふぉぉぉ! 旨いやん! なんなんこれ、めっちゃ旨いやん!」
あまりの衝撃に、道東生まれ道東育ちの俺の口から、どこのものとも知れぬエセ関西弁が飛び出した。
とろけるような脂の甘み。和牛A5ランクなんて目じゃない。噛む必要すらない。
そして、スライムマロニーだ。
「……っ!? マロニーって、こんなに旨かったか!?」
出汁の旨味を限界まで吸い込みながらも、歯を押し返すような弾力。噛むたびにスライム特有の魔力の甘みが弾ける。
気づけば、俺は一人で3〜4人前はあるはずの鍋を、最後の一滴まで平らげていた。
『通知:ゴブリンのアキレス腱を摂取。隠しステータス【フェロモン】が3増加しました』
『通知:スライムマロニー4食を摂取。運が40増加しました』
『通知:レベルアップ! LV.2 → 3』
「ふぅ……。食った、食い尽くした……」
腹をさすりながら、ふと手鏡を見る。
「……ん? なんか、肌のツヤが良くなってないか?」
フェロモンが上がったせいか、心なしか不摂生だった顔立ちに覇気が戻っている気がする。
そして、何より「運」の数値だ。
「運220……。これ、明日のドロップはどうなっちまうんだ?」
俺は膨れた腹を抱えながら、心地よい眠気に身を任せた。明日の朝、またあのプレハブの向こう側へ行くのが楽しみで仕方なかった。
現在のステータス
名前:サトシ(44)
LV:3
体力:107
力:67
知力:90
素早さ:77
運:220(↑40上昇)
フェロモン:23(↑3上昇)
【保有アイテム】 魔石(小)×1、ゴブリンの棍棒、腰布、魔石(極小)×10、スライムゼリー×10 スライムマロニー×6**【保有スキル】**
魔物食、∞収納、分裂(×2)、繁殖強化




