第三話
門番の兵士らしき者に引き渡されて、案内をしてくれた魔族は去っていく。
「おおきにな~」
図太い神経のペンギンは、手を振って去っていく魔族の背中を見送っていた。俺はと言うと、兵士たちに引き渡されて危険な目に合わないかと、胃がキリキリしていた。
兵士の後をついて行く。石畳の通路は、無機質な音をカツンカツンと立てている。その足音が、まるでこれから死刑執行される死刑囚の気分にさせる。
(なんか城内に入ったら、暗い雰囲気になって来たよ……先代の魔王は人間を虐殺していたというけど、今の魔王様は本当に大丈夫なんだろうか……?)
気が重くなり俯いて歩く。しばらくすると扉が開く音がする。入るように声をかけられ「これから死ぬかもしれない」と覚悟を決めて、扉の中に入った。赤絨毯の上を歩いて行き、兵士が止まるので俺も立ち止まった。怖くて顔を上げられない。
「顔を上げるのだ。妾の名はルフィールなのだ」
幼さを感じる可愛らしい声。魔王様と言われているはずなのだが、威厳の無さを感じる。安堵を感じて顔を上げると、ちんまりとした幼女がいた。
(……魔……王……様……というより、魔王ちゃん!?)
どんなおっかない魔王様かと思っていたが、魔王という方向性を間違えているような幼女。人間と違うと言えば、角があるかないかの違い程度である。
「ルフィール様。このペンギン太郎、貴女のお力になろうと駆け付けて参りました」
どこぞのペンギンが、いつの間にか魔王ちゃんの座っている玉座の前で跪き、手を差し出している。
「お前、関西弁をしゃべっていたはずだろうが! なんで標準語になっているんだよ!」
「何言ってるんだい、君は?」
「あっ! お前、また猫被ってやがるな? 食い物か? 食い物貰うためか?」
「はっはっはっ! 君は何をおかしなことを言っているんだい? 可愛い女の子を守るのは、紳士として当然のことだろう?」
丁寧な言葉とは裏腹に、俺に向かって鋭い目つきでガンを飛ばしてくるペンギン野郎。
そんなペンギン野郎に気づかない魔王ちゃんはと言うと、
「おお~! ペンギン太郎は可愛いなのだ! そちの種族は何になるのだ?」
「『ペンギン』という名の魔族でございます」
「そうか、ペンギンか! では、その可愛らしい魔族とその供に頼みがあるのだ」
「なんでございましょう」
なんか俺を置いてきぼりにして話が進んでやがる。
「ちょっと待て! 俺がお供じゃなくて、ペンギン太郎が俺のお供だ! それに『ペンギン』は魔族じゃね……ぐはぁ!」
次の瞬間、高速でペンギン太郎の拳が俺のボディに突き刺さる。まさに刹那。俺の腹を殴りつけた奴は、顔を近づけて囁く。
「ワイに任せてワレは黙ってろや!」
「お、おう」
魔族の本拠地、尚且つ、ペンギン太郎も魔族を自称する時点で、俺にとってはアウェー。大人しく、ペンギン太郎に任せることにした。暴走しないといいのだが……。
俺に向ける態度とは裏腹に『貴族か? いや、皇帝だよ』くらいのオーラを放ちながら、再び魔王ちゃんの元へと戻って行く。
「やれやれ、人間とは醜いものです。ええ、僕が従者ということにしておきましょう。それで彼が満足するのでしたら」
(あの野郎! 自分のポイントを稼ぎつつ、俺のポイントを下げやがって!)
そんな俺たちのやり取りなどは気づかぬまま、純粋無垢な魔王ちゃんはペンギン太郎に抱き着く。
「可愛いうえに優しいやつなのだ! ペンギンはまさに平和の象徴に相応しい! そんなお前たちを、妾の部下にするのだ! 二人で妾の宰相になるのだ!」
「ははぁ~! 仰せのままに!」
俺もぺこりと頭を下げる。
(宰相? いいポジションじゃね~か。これで衣食住は確保できたな。贅沢な暮らしが出来そうだ)
そんなことを考えていると、魔王ちゃんが勇ましく手をかざす。
「二人に重要な任務を与えるのだ! 『平和の象徴』を作り上げるのだ!」
幼女と思って甘く見てたわ。甘い汁を吸い放題と思ったら、クエストが発生しやがった。
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