第二話
「それで、ワイらは今後、どうするんや?」
質問されたので、顎に手を添えて考えてみる。
「う~ん……そうだな。とりあえず、拠点を確保しないとだな。ここら辺は大きな川しか見えない。他の場所へ移動しよう」
「冒険の始まりやな」
嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねるわ、両手をバタバタさせるわ。「元の世界の水族館だと、同じような日常でつまらなかったのか」と、ペンギン太郎の喜びに、俺も口元を緩ませる。
どのくらい歩いただろう。疲れてきた。
「兄ちゃん、ちょっと休まへんか」
そういうとペンギン太郎は、どっかりと腰を下ろした。
「いや、ちょっと待てよ! もうちょっと頑張ろうぜ!」
「無理無理」
横にゴロンと寝転び、手を振りやがる。どうやらお手上げらしい。
どうしようかと辺りを見渡すと、離れた所に人影らしきものが見える。手を振ってみることにした。
「お~い! そこの人! 助けてくれませんか!」
「聞こえてないみたいやな?」
「じゃあ、行くぞ! 起きろよ!」
「やれやれですわ」と呟いているペンギン太郎を、引っ張り起こす。
立ち上がった途端に、ペンギン太郎は物凄い爆速で、その人物の所へと辿り着いた。
「ちょっ!? 水中がダメな分、陸上では早いのかよ!」
置いてきぼりにされた俺は、何やら会話をしているペンギン太郎と人影の方に向かい走っていく。段々とズームアップされていくと、人間でない何者かとペンギンが会話をしているという異様な光景を目の当たりにした。会話の相手は魔族のようだ。
魔族にビビりながら声をかけてみる。
「ハ、ハロー、エクスキューズミー?」
「何言ってんだお前?」
テンパっていた俺は、平和的なツッコミのおかげで冷静さを取り戻した。
「えっと……魔族さん?」
「そうだが?」
そりゃまあ、そうだよね。肌の血色が全身的に悪いし、角や牙が生えているし。
「この辺に人間が住んでいる町はありませんか?」
「近場だと大河を渡ったところに砦ならあるな」
「大河? あ、さっきの大きな川か! 大河を渡るにはどうしたらいいです?」
「船に決まっているだろうが」
「橋はない?」
「ないね」
希望が木っ端みじんになり、項垂れる。そんな俺をよそに、ペンギン太郎が魔族と話をする。
「それでさっきの話なんやけど……」
その一言が気になり、ペンギン太郎に質問する。
「さっきの話って?」
「この世界にペンギンがいるかどうかや」
(なるほど。同士がいるかどうかの確認か)
「あ~、あんたみたいなのはみたことないよ。あんたも魔族?」
ペンギン太郎は腕を組み考え込む。開いた口……いや、口ばしは、
「そうや。だから貴方の町に連れて行ってもらえまへんか?」
魔族はそれを聞いて、ペンギン太郎の肩をパンパンと両手で叩く。
「おお、初めて見る魔族なら、魔王様も歓迎だろう。魔王様が面倒見てくれるかもしれないから、来ると良い」
「おおきに」
話がまとまってしまった後だが、口を挟む。
「い、いや、ペンギン太郎。よく考えろ。魔族だぞ? 人族の所に俺たちは行くべきなんじゃないか?」
自分の正論を投げかけると、ペンギン太郎は俺に身体の正面を見せた。
「ワイを見て、人族と魔族のどっちに見えると思う?」
「ま、魔族かな?」
「そやろ。だから、魔族領に行くで!」
「マジか……」
俺は今後に不安を感じながら、二人について行くという選択肢しかなかった。
魔王城に着くと、禍々しい雰囲気が……ではなく、緑豊かで花々が鮮やかに出迎えをしてくれる。
「……なあ、ペンギン太郎。魔王城って思っていたのと違うな」
小声で耳打ちすると、溜息を吐かれた。
「はぁ~、それはワレの発想やろ? 元の世界で読んだファンタジーのせいで、偏見を持ちすぎなんやないか?」
図星を言われてドキッとする。確かに日本で読んでいたファンタジー系の物語は、魔王が暗くて悪いやつのイメージである。俺の偏見を素直に間違っていたと受け入れるべく、案内してくれている魔族に、気さくに話しかけてみる。
「魔王様って、人間も助けてくれるなんて優しいんですね」
その言葉を聞いた魔族は、高らかに笑い声を響かせる。
「はははっ! 先代の魔王様は人間を虐殺していたよ」
それを聞いて、背中に冷や汗が垂れてきた。
「や、やっぱり俺帰ります」
「いやいや、今の魔王様は平和主義だから大丈夫だよ」
「そうなんです? 人間でも大丈夫ってことですか? ね? ね?」
そんな俺にペンギン太郎が一喝。
「くどいわ!」
強烈な張り手を食らわせやがった。
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