御終い
さて、と背伸びをする。
背骨のほうからバキバキと音が響く、ただこれを聞く人物は俺ぐらいしかいない。
部屋は明るいが、一歩廊下へと出ると途端に真っ暗だ。
外だってすでに草木も眠ろうとする時期に差し掛かっている。
研究室にずっとこもりっきりだった俺だったが、ようやく論文を1通まとめることができた。
はぁ、と細く長い溜息のような深呼吸を繰り返すと、頭もしゃんとしてくる。
もう何杯目かもわからないエスプレッソコーヒーをマグカップに入れて、さらにそれを一気に飲みほした。
カフェインで元気をもらえるのも、そろそろと限界を迎えているのはわかっている。
だが、この論文を仕上げること、それが今残された最大にして最後の課題だ。
「……さあ、もう少し」
御終いまでまだ頑張らないといけない。
ここが勝負のしどころだ。
そう自分に活を入れて、再びパソコンへと向かった。
御終いが来るのはしばらく後と知りながら。




