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19

 (安桜芽生)

 

 霞がかった不明瞭な空。そこには門のような雲が浮かぶ。


 昨日の夜から朝、ほどの時間雨が降ったようにぬかるんだ土。私の心はそんな様だった。


 脳天が上から強く抑えつけられたように重い。


 「死にたい」。いや。実際に「死のう」っていう、勇気は一ミリもわいてこない。ただ、もうどうしていけばわからないから、「もう存在したくない」って、感じだ。



 夢。数十センチ、いや数センチ先に、生身の人間がいるはずなのに。自分だけが別の世界にいるような感覚。こちら側だけその姿が見えて、相手からは見えない。まるで、透明人間。


 でも、私はそこで起きてることに関われないただの傍観者。


 

 「いないようなもん」


 私のことを指して、言われた。


 表面的には、運動神経がよくないから。


 だけど、運動神経関係なく、私はいてもいなくても変わらないって、そんなニュアンスも含まれていた。


 確かに、その通りだろう。


 せっかく意見を聞かれても、「どっちでもいい」って答えるし、自分からは行動しない。


 どこにいても、ずっと疎外感が拭えなくて、「幸せ」って、「最高」って、思える時がなかった。


 誰もいない場所に来ると、視界がぼやけてくる。涙が目に溜まってく。どうしようもない不安、自分に対する罵倒。


 それでも、泣くのも怖くて。自分が弱いって認めたくなくて。自分が人よりメンタルが弱いことは知ってるのに、ちょっとの軽口でグサッて、心に刺さること。けど、それを人に知られたくなくて。ずっと、何も感じてないように、なんてことないように、強がってたから。



 瞼を閉じて、鼻から息を大きく吸い、昆虫のことを考える。そうして、心を落ち着かせる。目を開いても、「消えたい」。そんな思いは残るけど、美しい夕焼け空、青空を見て紛らわす。


 空は私にとって、守り神。


 泣きたいときにも、仄かに心を照らしてくれる。もちろん、空を仰いだところで、その気持ちが消えてくれるなんてことはないけど、乾かされる。一時の紛らわせだけど、耐えられる。

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