10/28
10
次の日、昆虫研究室のドアを開けると、若葉さんが開口一番言った。
「今日も、蕾ちゃんのとこ、一緒に行こうね」
若葉さんは、蕾ちゃんが心配で善意で言ってることも伝わってきて、断れずはずもなかった。
この日から、若葉さんも蕾ちゃんのとこに、毎日一緒に行くようになった。
別に、若葉さんがいるのが嫌なわけじゃない。
若葉さんは、私が会話の中に入れるように、合間合間で声をかけてくれるし、気遣いをしてくれてることだって、分かってる。
だけど、やっぱり話の中心は若葉さんと蕾ちゃんで。私はおまけ。
若葉さんがこなければ、私が蕾ちゃんと話せたのに。
若葉さんのことが嫌いなわけじゃない。けど。そう、思ってしまう。




