入学式 5
迅がラファの前に立ちはだかった時、千冬の頭は混乱していた。
それもそうだろう、同じ新入生なはずの迅が、自分はおろかこの学園の教師達すらも凌駕する力を行使しているのだから。
「貴方は一体……何者なんですか」
千冬の問いは、誰の耳に届くこともない。
そして、戦況は一時的に膠着状態を見せていた。先ほどまで無差別に攻撃を放っていたラファが、迅が出てきた途端に攻撃をやめたのである。
その姿を見た保護者や教師達は、見事な連携をもってして生徒達を避難させていく。
「逃がさないですよぉ???天の祝福」
ラファは、そのタイミングを狙っていたかのように出入り口に向けて攻撃を放つ。
が、それを見逃す迅ではない。
「させねぇぞ?雷光障壁」
すぐさま、ラファの攻撃と生徒達の間に電気の障壁を展開する。
その、一進一退の攻防をしばらく続け、全員の退避を確認した迅は障壁を解いた。
「なぜ、ボクの攻撃がぁ、キミ如きのような子供にとめられるのですかぁ!」
「如き?俺は普通の人間とは生まれが違うんだよ。それのせいでいいことも悪いことも起きたけど、最たるものはこの力かな。お前如きの攻撃、止められねぇわけがねぇんだよ!!」
迅の挑発にラファは怒りを露わにする。
「このボクに、『堕天騎士団』の精鋭たるボクに、お前如きだとぉぉぉお?すぐにその口を潰して二度と舐めたこと言えないようにしてやるからなァァア!!!」
「はっ、ごちゃごちゃうるせぇ。さっさとかかってこいよ」
先に動き始めたのはラファだった。
手元に黒い黒い槍を顕現させる。
「堕天の槍」
「堕天の槍撃ぅ!!」
視認しきれないほどの速さで突き出された槍。
その質量は進む先にある物を例外なく消し飛ばしながら迅へと突き進む。
迅はそんな攻撃を身体を捻るだけで躱しきる。
「避けるだけですかぁ?大きな口を叩いておきながらそんなもので終わらないですよねぇぇ?」
「しゃべりすぎだぞ?焦ってんのか?」
「ガキが調子に乗るなよぉぉお!!」
まず、舌戦では迅が優勢といったところか。
しかし、まだ迅は攻撃技を1つも見せていなかった。
「堕天の槍撃ぃぃ!!」
またしても放たれた突き。迅は、今度は避けることをしなかった。
それどころか前へと飛び出した迅。
「馬鹿めぇ!わざわざやられに出てくるとはぁ!!」
「うるせぇ」
「斬り裂け 天雷切」
迅の手には、刀身が白銀に煌めく刀が握られていた。
「疾風連斬」
迅の体が光に包まれる。そして、横薙ぎから縦の振り下ろしと流れるように続く連撃は、もはや音すらも置き去りにしていた。
ラファが放った堕天の槍撃の攻撃をいとも容易く吹き飛ばし、そのままラファ自身へと到達する。
「天の箱庭!!!」
間一髪ラファは最大出力の防壁を張り、なんとか致命傷を避けたものの、それでも衝撃は防壁を貫通していた。
「な……なんだァァア?その馬鹿げた威力はぁぁあ?」
「馬鹿げた?天使だかなんだかの力を使ったとて、所詮それは有形物の力にすぎない。俺が使ってる能力は風と雷。自然の力をこの身に宿してんだから力の元が違うんだよ。分を弁えな」
迅は、そのたった一回の攻撃でラファの心に敗北感を植え付けたのだった。
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