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入学式 4

 突如現れた1人の青年に対して、教師陣達はそれぞれが持つ能力を駆使して攻撃を開始する。

 ある者は斬撃を、また別の者は魔法での攻撃を。ただ、そのどの攻撃も、青年に届くことはなかった。


 「そんなもんですかぁ?国が誇る騎士学園で教鞭を取るような人たちがこのレベルなんて、世も末ですねぇ?」


 「くぅっ」

 「なぜ、届かないんだ!?」


 悲痛な声が響く。それでも、攻撃が届くことはない。


 「そろそろ攻撃を受けるのも飽きてきたことですしぃ?こちらからいきますよぉ?」


 そう宣言した彼が放ったのは、先ほどまで教師陣が行った攻撃と全く同じ物。1つだけ違うのはその威力だ。

 青年が放ったのは先ほどまでとは一段も二段も違う強さの攻撃だ。

 それが無差別な方角へ乱射されていく。

 攻勢に出ていた教師達は皆、その攻撃を受け止めてせめて生徒達に被害が及ばないようにすることしかできなかった。


 ここから先は、青年の一方的な攻撃が続くばかりだった。

 反撃の糸口を探そうにも、少しでも守りを緩めれば攻撃は貫通してしまう。

 寧ろ、この青年の攻撃をここまで被害を抑えて守りきっている教師達の実力の高さを褒めるべきだろう。


 そんな中、千冬は考えていた。この状況で自分ができることを。

 千冬は、迅と同じく能力を既に覚醒させていた。

 そんな自分にも、この状況に尽力する義務があると考えていたのだ。

 とはいえ、まだ15歳で実戦経験もない千冬に、今の状況はあまりにも悲惨だった。

 いくら考えようと、自分の存在は焼け石に水にしかならない。加勢したところで役には立たないことが目に見えていた。

 それでも、自分にできることを必死に考えていた。


 その様子を隣で見ていた迅。迅もまた、自分にできることを考えていた。

 ただ、それは千冬とは違う物だった。

 迅は、生きていくために零那に鍛えられ覚醒に至った存在。

 それを知っている支部長の冬夜からは、定期的に特例として出陣の許可を得て敵と対峙することもあった。

 逆に言えば、まだ15歳である迅は、大人(零那、もしくは冬夜)の許可を得ないと能力の行使が認められないのだ。

 零那と話すことができない以上、今使える可能性があるのは冬夜から許可を得ること。

 そのために、迅は隣の千冬に声をかけた。


 「……なぁ、氷室さん」


 「な、なんですか?」


 「君、お父さんと念話って使える?」


 「念話……?それはもちろん使えますけど、なんでこの状況で?」


 「使えるんだね?よし、じゃあ繋げてもらって俺の名前を、風早迅の名前と緊急事態だってことを伝えてくれたら君のお父さんは理解してくれるはずだから」


 「それは本当に今すべきことなんですの?」


 「頼むよ。この会話してる時間すら惜しいんだ」


 迅の必死の頼みに、怪訝な顔をしつつも千冬は父親であり日本支部長である氷室冬夜へと、念話を繋げた。


 [……無事だったか、千冬]


 [お父様。まだ無事ではありますが、天堂学園長は何者かに足止めされ、朝賀副支部長は行方不明、侵入したテロリストは1人ですが、防戦一方でいつ今の均衡が崩れてもおかしくない状況です]


 [そうか。神戸はなんとか鎮圧した。それでこのタイミングで念話を繋げてきたということはなにか緊急の要件があるということだろう?]


 冬夜に促された千冬は、今迅から頼まれた用件を伝える。


 [は、はい。風早迅という今私の隣にいる生徒より、緊急事態だと伝えてくれ、とのことです]


 それを聞いた冬夜は淡々と、しかし少し嬉しげに指示を出した。


 [このタイミングで千冬の近くに迅くんがいるとは、運はこちらに向いているな]


 [え?]


 [迅くんに『特例・能力解放を許可する』と伝えてくれ。それで伝わる]


 [それって……]


 [事態は一刻を争う。急ぐんだ、千冬]


 [は、はい!!]


 そのまま念話を解除した千冬は、今冬夜から伝えられたことをそのまま迅に伝えた。


 「お父様から、『特例・能力解放を許可する』と伝えろとのことでした」


 それを聞いた迅の顔つきが変わる。

 先ほど向けられた圧を感じる。


 「今から見ることは、内緒にしといてくれよ?まだ目立ちたくないんだから」


 「え?」



 迅と千冬が会話を交わす中、戦況はさらに悪くなっていた。徐々に教師達の防御が崩れ始めていたのである。

 そして、その綻びはどんどん大きくなっていく。

 ついに、一部が完全に崩壊し敵の攻撃が貫通する……時だった。


 「疾風(しっぷう)……迅雷(じんらい)


 眩い光が講堂全体を包み込み、攻撃を完全に消し去った。


 「何者だぁい?ボクの攻撃を消し飛ばすなんてぇ?」


 そう問いかける敵の前に現れたのは、先ほどまでの雰囲気とは似ても似つかない姿をした、迅だった。


 「こっからは俺が相手だ、粘着語尾野郎」


 「ボクには、ラファっていう名前があるんだぁ。そんな低俗な呼び方はやめたまえぇぇえ?」


 「人の命を無作為に奪おうとするクズ相手に低俗だのなんだの言われる筋合いはねぇよ」


 「ハハハハハっ、まぁボクを止められなければどのみち詰みだからねぇ?せいぜいあがきなぁ、少年ん?」


 迅と敵……ラファの戦いがここで幕を開ける。

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