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入学式 2

 零那の話は先ほどまでとは打って変わった短いものだった。

 恐らく新入生が話の長さに疲れ始めているのが目に見えたからだろう。

 そして、最後に今年度の新入生代表挨拶。司会の教師から名前が呼ばれる。


 「新入生代表挨拶 新入生代表、氷室 千冬(ひむろ ちふゆ)

 「はい!!!」


 凛とした声で壇上に現れたのは……さっき迅に注意をしていた真面目な生徒だった。

 迅は、思わず顔を顰めてしまった。それに気付いた壇上の代表、千冬は迅を軽く睨みつけてから挨拶を始める。


 「穏やかな春の日差しが温かく照らす今日、私達はこの学び舎へと入学をします……」


 テンプレートのような千冬の挨拶に、迅は欠伸を噛み殺しながら流し聞きしていた。

 だが、挨拶の途中で語られた千冬の素性が迅に刺さってしまう。


 「私は、父であり聖導騎士連盟日本支部長でもある氷室冬夜の背中をずっと見ながら研鑽に励んできました」


 (ま、まじか。確かに似たような空気は感じたけど、よく考えりゃ名前といい氷室支部長の血縁に決まってるよな)


 日本支部長である氷室冬夜もまた、迅の成長に深く関わった恩人の1人でもある。そんな相手の娘に対して噛みついてしまったことを遅まきながら迅は軽く後悔しつつ、改めてちゃんと話を聞くことにした。

 ただ、その頃にはもう結びの一文を読み上げているところで、長かった挨拶の時間も千冬で幕を閉じた。


 その後は、特に何か面白いことがあるわけでもなく淡々と式典は進み、閉式の挨拶を残すのみとなったところであった。その時、


 『emergency emergency』


 突然講堂に鳴り響くのはけたたましいサイレンと非常事態を知らせるアナウンスだった。

 騒然とする場内。状況を把握するために学園長である零那が学園長室へと()()()

 残された教師陣や来賓の面々も警戒にあたる。

 その様子を見ていた迅は、1つの違和感を覚えていた。


 (ん?零那さんは別として教師側にいたやつが1人、あと来賓のなんだっけ……あぁ、副支部長?もいなくなってないか?教師は100歩譲っていいとしても副支部長はこの場だと1番偉いっていうか強いんじゃないのか?)


 その違和感を誰かに伝えようとするよりも早く、状況は動き始める。

 講堂内のスピーカーに零那の声が響き渡った。


 『緊急事態だ。横浜、神戸両校にて同時テロ発生。教員は全員戦闘態勢に入れ』


 講堂内に緊張が走る。両校とも開校されて80年の歴史で、未だかつてこんな大規模なテロが起こったことはないのだから。

 慌てて警戒態勢に入る教員達と、我が子を守ろうとする保護者達、ただただ狼狽えるだけの新入生達。

 そんな状況の中でも、迅は冷静だった。それもひとえに、今まで過ごしてきた環境のおかげと言えるだろう。

 先ほど感じた違和感を、なんとかして教員たちに伝えたいところだったが、近くに伝えられそうな相手もおらず、かといってあまり動いていい状況ではないことは目に見えているので一旦保留にする。


 迅の学園生活の幕開けは波乱のものになり始めていた。

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