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「僕に戦場に出ろとさ。」

オールさんは手紙を机に置いて、その中の一文を指さす。「…。僭越ながら陛下にはこの国難を救うべく、戦場に赴き、兵士たちを鼓舞していただきたいと存じます。当然陛下の安全については細心の注意を払い、…」

「…戦場でオールさんを戦死させようってことですかね…?」

「まあ、そんなところだろうな。とりあえず僕を殺して、貴族制の象徴を消し去ろうとしていると考えるのが自然だ。」

「でも確かオールさんは貴族制に反対の立場でしたよね?ここで軍部と組んだりとかは…。」

オールさんは私からすれば人間政府に働きかけられる唯一の希望だ。死なせたくはない。正直、民衆の命を蔑ろにする軍部と組ませるのは癪だが、それが確実ではないだろうか。

「それは無理だろうな。仮に今は協力できたとしても遅かれ早かれ、殺されることには変わりはないだろう。

貴族を消したのに国王が残るなど矛盾も甚だしい。」

「んー、軍部にとって後ろ盾ができるのは、正当性を主張する上でかなり大きいと思ったんですけどね…。」

「そこは一旦話を持ちかけてみないと分からない。相手の反応をこの情報だけで予測することは難しいだろう。」

非常に厄介な状況だ。このままではしばらく、人間側が戦争を止めることはないだろう。理由が理由なこともあって、犠牲者が少なく済むはずがない。むしろ多い方が演出としては効果的だ。

「…国外との戦争なはずなのに、国内で争うなんて…皮肉ですね。」

私は思わずそんな言葉を溢してしまった。

「…まったくその通りだね。軍部は今この瞬間も国民1人が死んでいることをないがしろにし過ぎている。

国内の目標は一緒だが、あまり折り合える相手ではないだろう。」

オールさんはそう言う。

「それを踏まえて、今後の方針を考えよう。

まず第一優先の目標は戦争の終結。そうなると軍部とは真逆の方向に向かうことになる。

そこでいい策を思いついたんだ。ちょうど戦場に行くという申し出があることだしね。」




★ ★ ★ ★ ★




オールは華美な装飾の軍服に身を包み、鉄道に乗って前線へと向かっていた。周囲は実力のある兵士たちで固められ、厳重な防御体制の元、今回の計画が行われていた。

(これから敵に回すとなると非常に恐ろしいものだ)

オールは事前に特殊体質で実力を確認していたが、全員が軍部の実力指標で銀等級、ルエール学院でいうならば上級クラス程度の実力であり、しっかり王の防御を固めたのが半分、確実に暗殺するという意思が半分だろうなとオールは思っていた。

「陛下、まもなく到着します。」

同行していた少将がオールにそう伝える。既に戦場の荒々とした空気が車両内に流れてくることを感じていたオールは少しうなづいただけで返事はしなかった。

電車が止まった。オールは皆に続いて降り、徒歩で野営地へと向かった。爆音はここまで来れば嫌でも聞こえる。この音は言い換えれば負傷の音、兵士の叫び声でもある。まわりの兵士たちは聞き慣れているからか何とも思っていないが、オールは一人、この音の重みを感じていた。

野営地では戦場に出ていない兵士全員が揃ってオールを出迎えた。オールは兵士たちが全員揃って敬礼するのを見た後、野営地の中央にある小さな集会場に行き、マイクを握った。

「諸君、此度の戦争は我が国家の長年の雪辱をはらし、この有志以来の争いに決着をつける戦争である。

昔日の魔獣は我々と知性を分け合う仲間であり、共に文明を前進させていた。しかし、今となっては彼らは野蛮にも我らに刃を向け、その堕ちた知性で魔獣至上主義を掲げている。かつての仲間に魔法を放ち、剣で斬るというものは当時を知る王家にとっては、実に心苦しいことではあるが、我が民を傷つけるこの様は友と呼ぶには程遠い。今、この戦いに応戦するのは、我が国の民を守るのと同時に魔獣たちを導き直すための戦争でもある。世界をより良い道で進むための聖戦である。この戦いは必ずや歴史に残り、諸君の名も必ず後世に伝わるであろう。

その未来を目指し、前へ進め!」

オールの話が終わると、兵士たちから乾いた拍手が送られた。視線も大半は下の方を向いていて、残りは疑念の目を向けている。しかし、オールは気にせずにマイクを下ろし、少将に連れられて戦場へと向かった。

少将は並べられていた大砲の一つに案内し、残りには1人ずつ兵士たちを配置した。

「号令をして大砲を発射してください。」

少将は小声でそう言って立ち去った。

(やっぱりここで細工してあるか。)

オールは自分の前の大砲が他の大砲と違うのを見てそう思った。オールは事前に予定を聞かされた時からここで仕掛けるのが無難だろうと推測していたが、大砲はかなり狭い感覚で並べられており、大砲の暴発をさせようものなら、隣の人は絶対に巻き込まれてしまう。それを見たオールはポケットからアクセサリーを2つ取り出した。

「すまないが、これを持っていてくれないか?」

オールは両隣の兵士にアクセサリーを1つずつ渡す。兵士たちは受け取りはしたものの、貴族風情がとでも言いたげな怪訝な眼差しを向けていた。

「発射準備!」

準備が整ったところでオールは号令をかける。

「3!」

それを見て少将は笑みを浮かべた。

「2!」

少将に同行していた銀等級の兵士たちはテントに戻り、水を用意し始めた。

「1!」

その時、乾いた突風が兵士たちに吹きつけた。

「発砲!」

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