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校舎の中は静けさに包まれていた。寒空の下を吹き交う突風が、時折窓や隙間から流れ込み、私の体は寒気で鳥肌がたっていた。

「…。」

1階には誰もいなかった。

「…。」

2階にも誰もいなかった。

「…。」

3階にも誰もいなかった。

この校舎にいない可能性もある。あるけれども…、もしこのまま誰も見つからなかったら?そんな不安が全身を走る。

そして、4階の階段を登った。

すると突然後ろから口を何者かの手で塞がれた。

「静かに。このまま行ったら侵入者だと思われるよ。」

「…ルリナ!」

私がそう言った口をルリナはさらに強く押さえつける。

「だから静かにして。」

「…ごめん。」

私は今度は声量を落として答える。

「このまま3階に降りて、非常階段から上がるよ。」

私は言われるまま3階に下り、そこからルリナに案内されて非常階段に向かった。

「…戻ってこれたんだね。」

「うん…、みんなはどう?」

「…。集計した限り、死者は生徒教員のうち20%、負傷者は50%以上。

…最初のうちは順番に避難を進めていたけれど、そもそもの避難場所がなくなってきて、結局避難をやめて、校舎で籠城する感じになってる。

…それでこの学院は今、包囲されている。落ちるのも時間の問題…。」

「そっか…。」

避難する場所がないのが一番の問題だ。ここは人間地域の中では五本の指には入る。かなり重要な資本だと言えるはずなのに避難先が提供されていない…、被害は相当広い可能性が高い。思っていた以上に戦場が拡大していたようだ。

「…ルナ、今夜はとりあえず大丈夫だからここで寝て。

外よりは安全なはず。」

「そうだね。」

非常階段を上がると、そこでは教室に生き残った人たちが寝ており、普段の階段はコンクリートを固めて完全に閉鎖してあった。

「空いてるところで寝ていいよ。」

ルリナはそう言うと、目を擦りながら、自分の布団へと向かっていった。

教室には隙間なく布団が敷かれているが、ところどころ人が寝ていない場所がある。人数よりも多めに敷いているのか、それとも寝ていた人が…。

ルリナが布団に入るのをみていると、私も眠気に襲われたので、教室の隅の空いていた布団で横になった。




日が昇り始めたところで目が覚めた。地下室で暫く過ごしていたので、日差しを浴びるのは久しぶりだ。

「…ルナ!」

私が起きて顔を洗い終わったところで、教室を出てきたリーファが私に抱きついてきた。

「リーファ、久しぶり。」

「久しぶり〜!ルナ!」

リーファは晴れやかな笑顔だった。…少し作っていたけれど。

「…ルナ、魔獣だったんだね。」

リーファの顔が真剣な表情になった。

「…うん。そう長くはいられない。」

「…そう、だよね。

だからこんな早くに起きたんだもんね。」

今の私はこちらでは追われている身だ。出来れば、みんなが起きる前に去りたかったのだが、思った以上に寝てしまった。幸い、会ったのがリーファで助かったわけだが…。

「少し魔獣の足止めをしてから行くよ。」

リーファを始め学院の人たちを巻き込んでしまったのだ。これぐらいはしよう。

私がそういうと、リーファはふとひらめいたように答えた。

「…だったら、いいアイデアがあるよ。」





外では魔獣軍が準備を行っているのが確認できた。

「先手必勝!泡沫のシードリーム!」

リーファが前方の軍隊を水で包み込む。

「グランドヒート!」

そして私がグランドヒートをそこに打ち込む。

そう、水蒸気爆発。以前は学院祭で暴発させてしまったが、今は広範囲高火力な武器となる。

軍隊を包み込んだ爆発には私たちの近くまで振動を響かせ、轟音と共に霧散した。跡にはクレーターがいくつもと、かろうじて残った死体の骨が少し落ちていた。

「ま、こんなもんだよね。これならあと1週間ぐらいは持つと思うよ。」

リーファが言う。たった1週間、されど1週間。非力な私では1週間しか延ばせない。でも、できる限りやってみせる。あと1日もすれば王宮までは行ける。なんとかオールさんに会おう。

「それじゃあ、私は行くよ…。」

私はそのまま立ち去ろうとする。

「あ、ちょっと待って!」

リーファは私の腕を掴む。

「…ルナに言いたいことがあるんだ。

私はさ…、人間と魔獣に何があったのか知らないけど…、でも、それを全部まとめて人間、魔獣っていうのは違うと思う。

ルナ…、ルナは学院の生徒だし、私たちの友達だから!いつでも帰ってこれるようにするから!

だからさ…、これが最後ってだけは…、言わないで欲しい…!」

私はそんなリーファの言葉に少し笑ってしまった。

「…最後だなんて1回も言ってないじゃん。

私もさ、ここに帰って来たいから…、だから行くから。

また会おうね!リーファ!」

「…うん。またね!」

しっかりリーファが笑ったのを見届けた後、私は王宮に向かって出発した。

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