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オールが電車に乗り込んだととほぼ同時刻…、ルナとオールの執事であるセバスチャンは執政区の中央政府へと向かっていた。
「…いきなり行って会えるものなんですか?」
アポもとらず、受付も通らず、中の執務室へ向かっているセバスチャンさんを見て、私ールナはそう言う。
「むしろこちらの方がいいのです。陛下の要請を聞く義務があちらにはありますし、事前通告すると準備をされてしまいます。」
確かに、不意打ちで訪問しているおかげか、建物の中に人の気配はまったくない。そんな静まり返った空間に足音を響かせながら、最上階の執政総監の執務室まで辿り着いた。
「失礼します。」
セバスチャンさんは3回ノックをして、部屋のドアを開ける。すると、…血の匂いが一気に流れ込んできた。
「な!」
先に入ったセバスチャンさんが驚きの声を上げたのを聞いて、私も中に入る。
中にいたのは黄色い髪の小柄な男性と…、血を流して倒れいる男性だった。
「…おっと。邪魔が入ってしまったようだね。」
セバスチャンさんを目掛けて飛んできた氷のクナイを私はフレイアスソードで弾き落とす。
「へぇ、やるじゃん。
君たちはあれか…、国王の使いってところだろう?ちょうどいいから…
ここで絶望を見せてあげよう。」
すると今度は巨大な氷の槍が何本も飛んでくる。
「フレミナルレーザー八連!」
私はレーザーで8本を撃ち落とし、残りは魔流操作で墜落させるも、相手は既に次の準備に入っていた。
「氷雷。」
今度は氷が四方八方から私を目掛けて素早く迫る。
「上へ!
ハッケイ!」
私はセバスチャンさんの声で上に飛ぶと、セバスチャンさんが衝撃波で氷を打ち砕く。
「…執政総監殿の息はもうありませんでした。」
セバスチャンさんは私にそう伝える。
「この老害は一発でお陀仏だったよ。やっぱり年をとってるとやりやすいもんだね。」
そして金髪の男性がそう話す。
「セルビア陸軍総監。どうして執政総監を殺害したのですか。」
どうやら目の前の男性は陸軍総監のセルビアという人らしい。魔力感知で見る限り、実力はミライさんやオルタさんに匹敵、…いやそれ以上だ。
「わかりきった質問をしないでくれ。君たちはそんなのも分からないぐらい無知で突っ込んで来たのかい?
貴族ってのが…、僕は心底嫌いなんだよ!」
再び氷の槍が無数に飛んでくる。
「空殺波!」
「フレミナルレーザー十連!」
私は再びレーザーで、セバスチャンさんは空中に衝撃波を放ってそれぞれ撃ち落とす。
「安心してくれ。そんな遠慮する必要はない。
あらかじめこの建物は人払いをしてあるからね!建物を壊そうが何ら問題はない。
ギガブリザード!」
「ヒートストーム!」
極寒の氷雪が私たちに襲いかかる。私はそれを大量の熱を押し当てて相殺した。
「…ちっ、相性が悪いな!
アイスエッジ!」
氷で出来た大きな棘が地面を伝って次々と私たちに迫る。
「蒼炎の神舞!」
私はその棘を斬りつつ避けつつ、距離を一気に縮め、
「グランドヒート!」
そして一撃を叩き込む。
「アイスシールド!」
しかし、その一撃は氷の盾で防がれてしまう。
「ハードフリーズ!」
「ぐっ!」
反撃で今度は私を凍らせようとしてくる。私は魔流操作で何とか避けたものの、回避のために後退してしまい、再び距離が出来てしまった。
まだそこまで差は生まれていない。氷と炎は相性が悪く、互いに打ち消しあってしまうため、攻撃が体までなかなか届かないのだ。しかし、相手はまだ本気を出している様子がない。奥底が未だに見えないというのはかなりの懸念要素だ。
「私があちらの攻撃を受けるので、セバスチャンさんが隙を見て攻撃を入れてください。」
私はセバスチャンさんに小声でそう伝える。セバスチャンさんはこくりとうなづき、戦う構えをとった。
「…やれやれ。思ったよりしぶといから、ちょっとギア上げて行くか。」
私たちが打ち合わせをしているのを見たセルビア総監はそう言う。
「ファイヤサイクロン・クインティプル!」
だが、ここで押し切らないと勝ち目は薄い。まだ相手が油断しているうちに一撃大きく入れたい。私は炎の渦を5つ飛ばす。
「ジェットヒート!」
そして私自身も大きく距離を詰めて斬りかかる。
「ブリザードレーザー伍式。」
しかし、炎の渦はあっさりと打ち消され、斬撃もその場で生成された氷の剣に受け止められる。
「まだっ!蒼炎の神舞!」
私はすぐに体勢を立て直し、できる限り間を空けないように追撃を仕掛ける。だが、相手も氷の剣で応戦するため、剣が纏っていた炎はすぐに消えてしまう。
「ブリザードランス。」
そしてその間に後ろから氷の大きな槍が襲いかかる。身を捻ってなんとか躱し、間合いだけは何とか保つ。
「レンゲキ!」
後ろからセバスチャンさんがパンチの連続攻撃を加える。
「マジカルフレイム!」
私もそれに合わせて挟み打つも、セバスチャンさんの攻撃を氷の盾で防ぎ、炎は冷気で掻き消されてしまう。
「…!」
「ふう。正直ちょっと焦ったけれども、大したことなかったね。」
「爆砕!」
セルビア総監が話している最中だったが、セバスチャンさんは再攻撃を仕掛ける。しかし、そんな不意打ちも難なく躱される。
「人が喋っている間にすら攻撃してくるなんて、焦ってないかい?
ハードフリーズ。」
「しまっ…!」
セバスチャンさんは避けたセルビア総監の攻撃を防げず、氷漬けになってしまう。私がすぐに溶かしたものの、追撃は避けられず、数発喰らってしまう。
「大丈夫ですか!?」
「問題ありません。しかし、本気を出さないといけないようです。」




