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魔獣が魔法学院にくることは許されますか?  作者: ソウヤ
序章 入学する前のちょっとした話
1/93

introduction(1)

「フレイム!」

私がそう唱えると、部屋のところどころにぽつぽつと火が燃えて…

ドーン!!!!

と爆発した。やっぱりうまく出来ないなあ。本当は一点集中で炎が出せればいいのだけど、魔獣だし、仕方ないか…。



ここは魔獣と魔法使いがいる世界。世界自体の名前は特にあるわけではない。(地球という名前が日本で使われるようになったのは17世紀初頭。「この世界」の名前ができるのは案外遅い。)

この世界では魔獣と魔法使いが共存している。どちらも魔法が使えることに変わりはないが、大きな違いがいくつもある。


まずは見た目なのだが、これには例外も多い。基本的に魔法使いは人間のような見た目、魔獣は獣のような見た目だが人間っぽい魔獣もいる。

明確な違いは魔力。魔獣は持っている魔力が非常に多く、いくらでも魔法を放つことができ、パワーも桁外れだ。

しかし、コントロールが非常に悪く、範囲内にドカドカ魔法が放たれるような場合がほとんどで、しっかり打てる魔獣は極少数である。

一方魔法使いは魔力がそこまで多くはないので一度に打てる数には限りがある。しかし、扱う技術は非常に卓越しており、それで魔獣を倒せてしまうこともある。

この二種属が共存している…のだが、今は魔法使い側の勢力が非常に強くなっている。しかし魔獣も黙ってはおらず、逆転を狙って策略的に動いている。



…買い物忘れてた。支度していかないと。

そうやって髪を結ぶときに私が何なのかをよく実感する。

紫色のロングヘアーをハーフアップに結ぶ。一見普通のように見えるけれど頭に動物のような耳、いわゆるケモ耳が生えていると、非常に結びにくい。

そう、私は見た目はほとんど魔法使い、人間なのだがところどころに魔獣の性質がある。

実際魔法に関しては魔獣の性質で、さっきのフレイムは制御できたほうなのだ…。

でも、私は魔法使いの魔法学院に入りたい…。そういう夢を持っている。

私は種族分類的には魔獣、細かくいうと狼型の魔獣なのだが、見た目がどうみても魔法使いなので、魔獣のなかでも立ち位置がない。ケモ耳と尻尾だけでは認められないのだ。

かといって魔法使いとしてこっそり生きようとしても、魔法の性質でバレてしまう。

逆にそこ以外でバレることはほとんどなくて、社会的なモラルをも身に付いているし、耳などは、数少ないまともに使える魔法の透明化で隠している。透明化は最初から対象が自身のみとして考えられているので、なんとか扱える。

現状魔法使いの社会で生きているから、魔法学院はチャンスがまだある。


一番不思議なのは私の親はどちらも普通の魔法使いだということ。そこから、突然変異みたいに私が生まれたのだ。この社会では、魔獣は受け入れられていない。汚れたもの、悪しきものとして忌み嫌っている人も少なくない。さらにはまったくもって根拠のない噂も流れる始末だ。

そんな社会のなかでは慈悲があったほうで家とある程度の資金とともに私を捨てた。一定期間の生活は保証してくれた。その保証の期限がきれるのが、今から三ヶ月後ほど。

魔法学院に特待生で入学できれば、払うのは入学金のみ。生活困窮者への奨学金の手当をあわせれば、なんとか生活していける。入学金は今なら何とか払える。

そして今は三月。普通の学校だと寮とかはないし、奨学金もない割には授業料はしっかり取るから生活できない。つまり今が入学試験を受ける最後のチャンス。受験手続きは済ませていて、試験は明日。

でもこんなんじゃ、受かれない…。明らかに魔獣だってバレる…。ど、どうしたらいいんだぁ!



とりあえず買い物に出かける。近くのスーパーにいって食材を探す。えーと、唐揚げにしようかな。調味料とかはあるから鶏モモ600g分と適当にサラダの分の野菜と…こんなもんか。

そんな風にいつも通り買って帰ろうとすると…

魔獣がいる。かなり近い。あたりを見渡してもそれっぽいのは見えないけど…。隠れてる。透明化で隠れていて、今私が視線を向けていることに気づいたようだ。

「なぜ、わかっている。」

狼型の魔獣が話しかける。私にかなり接近して小さな声で話しているので、おそらく他の人には聞こえてはいないだろう。

「魔獣が魔力を感じる耳と尻尾と鼻が私は残っているからね。他は魔法使いそのものだけど。」

こういう魔力を感じ取るのは魔力感知というらしい。私が一番最初に使えた魔法でもあり、私が使える繊細な魔法はほぼこれ一つ。

「お前、魔獣だったのか。魔獣がなぜ…この社会にいる?」

「こっちの台詞よ。」

「…殺せと言われている。魔法使いを。」

「!!!」

「驚くのも無理ないな。お前はおそらく…魔獣の世界にきたことがないだろう。今はこの世界、平和に見えるが…まったくもってそんなことはない。いつ殺されるか、死と隣り合わせ。それが互いの世界で起こっている。」

その時、私の回りを黒いオーブを着た五人の魔法使いが囲った。

「あなた、そこから離れて!」

!!!もしかして…バレてる!?

「わ、わかりました。」

従う以外の選択肢はない…。私が離れた瞬間、

「エレキネット!」

私と話していた魔獣は拘束された…。



特に私は何も言われず、安全に家まで帰ってきた。だけれどもあの光景は頭に残っている。

これがこの世界。今更痛感させられた。…私もバレたらああなるのか…。

「その通りだ。この世界で生きることはそういうことだ。」

へ?

目の前には昼会った魔獣が立っている。

「な、なんでいるの!?私のプライバシーを考えてよ!」

「やっぱり人間社会に染まりきっているな。」

は、はあ?何こいつ、さっき捕まったばっかなのに何やってんだ!?

「心の声が完全に漏れてるぞ。」

漏れてないし!はったりかけるな!

「漏れてる。」

くっ、これは漏れてると認めざるを得ない…。

「じゃなくて!なんでここにいるの!?」

「魔法学院に行きたいのだろう?セルエナ・ルナ。」

「な、なんでさ。なんでそう思うのさ。」

「読心術だ。」

読心術?それは魔獣には高等すぎるはず…。はっ!まさかさっきのも!?

「いや、さっきのはお前が喋ってないつもりなだけで、完全に喋ってた。」

そういい終えると、私の布団の上に飛び乗った。

「俺の名前はガルドラだ。さっき捕まったが、あの程度ではぬるすぎる。簡単に抜けられる。」

かなり上級の魔獣のようだ。まあ、そうでもないと、暗殺の命なんて受けないよね。

「魔力感知ができるなら、お前は魔法を魔法使い以上に扱えるはずだ。魔力感知を扱えるだけで、相当な高等テク。中堅になれることは最低保証だ。」

「そ、そうなの?」

「明日なんだろう、試験は。今日の夜に叩き込んでやろう。」

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