ま・な・た・か
2017年、プロ野球、東京ヤクルトスワローズ。
「ふぅ~………」
今日も負けてしまった。
まなか監督は敗戦後、ため息をついて、腰を落とした。
今年のヤクルトスワローズは故障者が相次いだ事や計算していた選手の誤算、様々な不運などがあった。一人気を吐いているのは、セカンドのレギュラーにして、球界の至宝となるであろう、やまだ選手だけだろう。
そのやまだ選手も腰に違和感を抱えながらも、フル出場をしており、前年と比べて大きく成績を落としていた。
『今年は100敗回避が目標だな』
45勝96敗。勝率・319。ぶっちぎりの最下位。
辛うじて、100敗は免れたが。球団史上最多の敗戦数を記録した。
近年最弱球団と呼ばれるほどの成績。
投手陣は故障者続出。
優勝を成し遂げた2015年の主力選手達の多くが故障離脱と
「どうすりゃいいんだ」
やること全てが裏目に出て来る、負の連鎖の中にいた。その中心人物は、まなか監督だろう。
監督室の机で目を閉じるのであった…………。
30分ほどだろうか。疲れのあまり眠ってしまっただろう。
ポンポンッ
首を通告されるのが分かっているような、後ろからの肩たたき。分かってるよ、責任とって辞めます。辞めさせてください。
『まなか監督。ヤクルトスワローズは4年後。2021年に優勝争いをしています』
「!!?」
聞いたことのある声どころではない。共に野球をしていた者。
飛び起き。後ろを振り返れば
「お、お前は!たかつ!!……あれ?なんか老けてない?」
「たかつです。絶対大丈夫です。まなか監督。スワローズはここから強くなります。俺はその事を伝えに、未来からやってきました。感謝を伝えに来ました」
「いきなりどうした!?」
未来からやってきたという、2021年で監督を務めているたかつ監督が、2017年のまなか監督に会いに来たのであった。
◇ ◇
プシュ……
立ち話もなんだしという事で、缶ビールで乾杯しつつ。
敗北街道をひたすら歩く、まなか監督は……こんなあり得ない事でもいいから、安らぎを求めた。まるで信じられない事だが
「2021年。4年後に優勝争い?たかつ監督、ホントかよ」
2017年のファンに伝えても笑われる事だろう。2017年はただ負けただけでなく、故障者続出のまさに焼野原。希望が見えていない。
「今の広島カープは黄金期。巨人、阪神、DENAも大型補強するだろう。中日とヤクルトの最下位争いじゃないか?」
2017年のヤクルトに言われたくないであろう、中日ドラゴンズ。
「こんなチームにいたら、やまだだってFAするだろう。2020年だっけ?取得年。それにエースのおがわ、抑えのいしやまだってそうじゃないか?」
2020年。順当に一軍の試合に出場すれば、こんな2017年の主力、やまだ、おがわ、いしやま、の3名のFAはあるだろう。それに2015年の主力である、かわばた、ゆうへい、ばれんてぃん、などなど……。
朗報として
「やまだ、おがわ、いしやまの3名は球団が全力で引き留めました」
「へぇ~、残ったんだ。巨人とかに引き抜かれそうだと思ってたわ。広島の中心選手のまるとか、ファーストの補強に日ハムのなかたとか、DENA弱体化に、いのうやかじたにとか、獲得してそうなんだよな」
彗眼過ぎるだろ、まなか監督。色々とズレちゃってるけど!
「でも、3人だけ頑張っても無理だろ。やまだはまたトリプルスリーでも達成したか?2021年に出したのか?」
「いえ。2021年はどちらかというと、成績は期待していたものではなかったですね」
「そりゃなー」
「30本90打点ほどでしたね」
「やまだの不調ってなんなの?たかつ監督、そんなに厳しいの?」
30本90打点越えで期待していた成績ではないと言われるほどの成長をしている。たかつ監督は言わなかったが、やまだは翌年の2018年にトリプルスリーを達成し、チームを2位まで躍進させていた。
「おがわ、いしやまも活躍してるんだろうな。でも、3人だけじゃダメだ。2017年を分かるだろ!?どれだけ故障者、計算外があったと思う!?ウチは選手層が薄い!ソフトバンクのうちかわや、楽天のしま、先発中継ぎができる、巨人のたぐちとか、……選手層が厚いところが羨ましく思うくらいだ!」
「……………」
まなか監督って未来人か、なにかだろうか?その3名が2021年、ヤクルトスワローズに入団してくるなんて、誰も予想できないだろうに。
ともかく、他球団のベンチ要員や二番手の選手達が、ここでは主力を張れそうなくらい。非常に選手層が薄かった。というか、故障者を出し過ぎて試合を作るのがやっとだった。
「2017年ドラフトが、神ドラフトなんです」
「ええぇっ!?もしかして、きよみやを当てたの!?将来、結構気になるんだけど!」
「ウチはきよみやを外しましたが。……2017年~2020年のドラフトは全部当たりでしたよ」
まだまだこれからの期待という事で言わないでおく、たかつ監督。
ヤクルトスワローズは当たり年だった。やまだ、ばれんてぃんなどの長距離打者を獲得したい方針は、まなか監督にも分かっており、ドラフト1位はまず大砲候補。
まさかその人物が
「ドラフト1位は九州学院、むらかみ。2021年。彼は球団どころか、球界を代表する4番打者に成長しました」
「むらかみ……おおっ!きよみやと同じ、怪物高校生か!ウチに来たのか!!それも球界代表!?わずか4年で!?」
「むらかみは、2019年にブレイク。サードのレギュラーで36本の本塁打、96打点。2020年も28本塁打を記録しました。チームメイトのやまだをして、自分を超える打者と褒め称えるほどです」
「あ、あのやまだが後輩選手を認めるのか!?まるでキャプテンみたいだ!想像つかない!!」
「やまだはチームのキャプテンになるんです…………丸くなるんですよ、彼。(2017年頃だと信じられないよな)」
このむらかみの存在は大きく、2021年にスワローズが優勝すれば、MVPは彼だろう。
「やばい、辞めたくない」
「まなか監督は今年で辞めますよ」
「強くなるのが分かっているなら、辞めたくないぞ!たかつ監督!」
確かに2018年、ヤクルトスワローズは2位まで奮闘。広島カープもまだ黄金期であるため、優勝を成し遂げるのであった。
「ほ、他にどんな選手が来るんだ!?俺が辞めてから神ドラフトってなんだよ!?俺はそこでガッツポーズした印象しかないぞ!」
「他にドラフト2位、おおした。ドラフト4位、しおみ。ドラフト6位、みやもと。この3人も2021年に活躍しました。むらかみが一番ですが、ドラフト4位のしおみも絶好調」
2021年、スワローズのセンターと1番打者を務めた、しおみ。
絶好不調が激しく、スペ体質でもあった選手であるが、2021年は年間を通して試合に出場。サイクルヒットの達成だけでなく、5月と7月の打率は3割5分越え、2桁本塁打、20盗塁以上、得点圏も3割越え。守備においても俊足を活かした広い守備範囲で好守備を連発。おまけに肩も強い。
やまだ、むらかみの陰に隠れているが、しおみで勝てた試合というのも非常に多い。
彼が1番打者でセンターを守っていなければ、今シーズンのチームの躍進はないだろう。
「そ、そんなセンターまで来るのかよ!?まるで大リーグにいった、あおきのような選手じゃないか!?ちょっとタイプが違うけど!」
「あ。あおきなら2018年に帰ってきましたよ」
「へ~……えええぇっ!?なんでぇっ!?俺、嫌われてた!?こんなに困っていた俺の時に戻って来いよぉぉっ!」
「あ、いえ。……ともかく、2018年にあおきは戻ってきて、2021年も活躍してます」
「あおきもヤベェなっ!!2021年っていったら結構な歳だろ!39か!?」
「ちなみに2018~2020年まで3割近くの打率を残します。日米通算2500本も達成しました」
「ホントに2017年に帰ってきてよ!!」
主にレフトで2番を任された、あおき。
昨年ほどの打撃成績ではなくなったが、依然として高出塁を記録。休み休みではあったが、試合では固め打ちを見せた。満塁本塁打も記録。ベテラン選手としてチームに貢献していた。
「むむっ。確かにこの上位打線はやばい。やまだ、むらかみを3番4番で使える。それだけの1番2番がいるのか……。だが、打線は9人でやる。……今まで聞かなかったが、ばれんてぃんはどうした?むらかみの後ろか?あいつも歳だし、守備難だ……最低、30本は打たないとマズイだろう」
「ばれんてぃんは退団しました」
「ええぇっ!?あの本塁打王を!?2017年でもそこそこやってたぞ!!」
ヤクルトの功労者の1人に入ってもいいだろう。プロ野球シーズン記録も持つ、ばれんてぃん。実は2019年に退団し、ソフトバンクに移籍している。
あおき、しおみの外野手2人が活躍。球界を代表する打者となった、むらかみの存在により、ばれんてぃんの居場所は残念ながらなかった……。
「……20本は打つと思うんだがな」
首をかしげながら、ばれんてぃん放出を不思議に思う、まなか監督。30本以上の本塁打を打っていた彼しか見ていないため、そう思うのも無理はない。
球団、編成、そんなところも色々とある。ばれんてぃんを放出して
「外国人選手は当たりだったのか?まずは野手の方で」
「リーグ全体で見れば当たりでしたね。確かに全盛期のばれんてぃんには遠く及びませんけど。さんたなとおすなの両外国人は活躍しましたよ」
ライトのさんたな と ファーストのおすな。
主に5番から下の打順を任されることになる。
2人共、2桁本塁打を記録。やまだとむらかみをホームに返す役目を担った。成績こそ2人に劣ってしまうものの、守備も決して悪くなく、怠慢なプレイもあまり見せない。成績には乗らないが、おすなは度々好走塁を見せている(足は遅いけど)。さんたなもガッツある守備を見せている(怪我しちゃったけど)。
「ハズレは引かなかったって感じか。でも、やまだとむらかみがいれば十分過ぎるのか」
「2人が打って勝てた試合もありましたよ。大きく目立つほどの守備難でもなかったですし」
「ちっ」
「なんで今、舌打ちを……」
「ばれんてぃんを残していればな~……とか思っていて欲しかったなんて、俺は思っていないぞ。たかつ監督。ところでショートとキャッチャーは?……なかむらはまだいるのか?ショートはもしかすると、あのひろおかか?まさか、ショートはにしうらやおくむらじゃないよな」
「…………まず、キャッチャーはなかむらです」
「ははは、そうだろうな。やまだがあの成績だから目立ててないが、キャッチャーならなかむらがセリーグ№1だと思っているぞ」
2015年の主力であるキャッチャーが、2021年でも主力を務める。これはまなか監督にもなんとなく予想できていた。それだけなかむらへの信頼は厚いのだろう。
「なかむらに何かがない限り、キャッチャーは変わらない。にしだや新人のこがには悪いが、……2番手、3番手……あるいは、2軍の捕手として……」
「なかむらも活躍しましたが、こがも2番手捕手として、シーズンを戦い抜いてくれました」
「ははは。あの、こがが?冗談止せよ。だいたい2番手捕手が……」
「おがわと組んで完封したり、なかむらよりも好リードをしていた時期もありましたよ」
「でも、まだまだ打撃がさー」
「なかむらを休ませられるほど、信頼できましたよ。わずかな時期ですが、打撃でもなかむらを越えてました。こがの成長が、なかむらの好成績に繋がっていると思います」
「…………え?本気で言ってるの、たかつ監督。俺はこがのことを言っているんだよ?」
キャッチャー、なかむら。2番手キャッチャー、こが。
なかむらは勝負強い打撃と高い出塁率、扇の要として、2021年でも大活躍である。シーズン前半は打撃好調で、あおきに代わって2番を打ってたりもしていた。夏頃は彼の負担を軽くするため、代役を任された2番手捕手のこがが活躍。打撃ではなかむらに及ばないものの、エースおがわを完投に導いたり、他の投手達に対しても強気な好リードで引っ張った。
今年のなかむらの活躍には、こがの存在も大きかったと思う。
「嘘だ~。なかむらの代わりが、こがに務まるのかよ~」
「……シーズン成績だけを見れば、なかむらの方がまだまだ上ですが。手応えを感じさせる活躍を、こがはしてくれました」
「今までで一番、信用できないんだけどな」
2016年の下位指名の高校生キャッチャーが、リーグ№1に近いキャッチャーと競ってたとか。想像できないのは確かである。
「ショートは確かに固定できませんでした。調子と相手を見ての起用です」
「はははは。ショートも育成に時間が掛かるから併用しかないよな。巨人のさかもとや中日のきょうだ、西武のげんだのような選手が、そんなにぽいぽい出てきて欲しくないな」
「ウチじゃないですけど、阪神がその2人に近い選手を当てましたよ。阪神もなかなかの当たりドラフト」
「はい!?ドラフトがそんなに上手く行かず、育成もそんなに上手くないあの阪神が!?」
なかの選手とさとう選手。球界を代表する選手に育って欲しいです。
「そして、スワローズも。2020年ドラフトで4位で指名した、もとやまがシーズン序盤は活躍して助かりました。守備も悪くないし、打率は2割5分以上は打ちました。新人ショートとして、十分な活躍でした」
「さらっとドラフトでショートも当てるのかよ。2017年のショートより活躍してるじゃん……」
2021年のヤクルトスワローズの穴とすれば、ショートであった。このポジションだけはあまり固定できず、調子の良い選手を起用するという方針だった。
その中で新人ながらもとやまは、シーズン序盤で活躍。荒さこそあるものの、ショートとして及第点の打撃と守備をみせた。試合終盤の代走としても出場するほど、走塁面でも活躍。シーズン中盤は疲れの出たもとやまに代わって、二軍で好調だった、よしだたいせいが昇格。打撃面では出塁を心がけ四球を選び、守備ではもとやまよりも安定し、プロ3年目で初本塁打も記録。その後は調子を落としてしまうも、十分な活躍をみせた。
「あの~たかつ監督、2017年頃にショートを任せてた連中はどこにいるんですか~?」
調子を見ながらの併用だったら、2017年以前に活躍していた連中にも出番はあるはずだろう。セカンドがやまだでほぼ決まっていた以上、ショート、サードは沢山いたはずだ。
シーズン序盤から中盤までどうして、2017年ドラフト以降のショートが出場しているのだ?
「安心してください。この年、一番活躍したショートは、30になったにしうらです」
「おおぉっ!?良かったー。誰もいないのかと思った……」
凄くホッとする、まなか監督。しかし、
「え、にしうらが一番なの!?2017年、調子悪いぞ!一番活躍しないと思ったぞ!2年後には戦力外だったと思ってた!」
それはそれで結構予想外な選手が、1番活躍したという感じ。
「シーズン序盤からにしうらは絶不調でした。戦力外に一番近いショートだったかもしれません。シーズン通して一軍にいましたが、使いどころが難しいというか……」
「ボロクソ言ってるな。気持ちは分かるぞ。にしうらって、低打率だし、守備も決して下手ではない……くらいだから」
安定した打率を残していた新人、もとやまに対して。物凄く波の激しい中堅選手、にしうら。
にしうらの絶好調が来たのは運が良いのか、悪いのか。丁度、もとやまと、よしだたいせいが調子を落とした頃である。9月、10月は、にしうらの打撃が覚醒する。決勝スリーランを始め、1点が欲しい場面でのソロホームランや長打、四球での出塁……。秋のにしうらは絶好調であり、打率3割越え、決勝点だけでなく、ここぞの場面での活躍をみせる。また、守備でも本人なのか疑うほどの好守をみせていた。
チームが苦しい状況で活躍をみせたのがこのにしうらであり、9月の成績は打率3割越え、出塁率は4割越え、打点7、得点は12。主に7番辺りを任された選手とは思えない成績を出し、ヤクルトの驚異的な連勝には、にしうらの活躍なくして成せなかったほどである。
「お前のせいで苦しんだ時期もあるんだぞーー!!」
多くのファンや関係者の掌をまるで弄ぶかのように、秋のにしうらは大活躍し、今シーズンのショートで最も活躍した選手であったのは間違いない。
「2017年から打ってくれよーーー!!俺はお前が活躍するとずっと信じていたぞーー!」
「いやホント。まなか監督の言う通り。早く活躍しろって思いましたよ……」
「と、ところで……。たかつ監督。ひろおかやおくむら。あと、かわばたやはたけやま、ゆうへいの姿が2021年にないんだが……。あと、2017年で活躍してる、さかぐちとふじい、おおびき……」
2015年の優勝メンバーで活躍した選手が2021年メンバーまでいるのは、やまだとなかむらのみである。特に、にしうらが一番活躍をしたという事が意外過ぎるのは、ひろおかやおくむらがいた事もある。ベテラン陣もどうなったのやら
「はたけやまは2019年に引退、ふじいとおおびきは2019年に戦力外。ゆうへいは、2021年に引退を表明しました。さかぐちはまだ現役ですが、……今シーズンの成績は厳しいですね」
「…………そうか。ベテランだし、ほとんどがこの2017年で故障してるもんな」
寂しい表情になる、まなか監督。プロ野球も栄枯盛衰だ。
「ですが、かわばたは代打の切り札として、大活躍しました。3割7分ほどの打率に、得点圏打率も4割」
「やっぱり、かわばたって天才じゃないか!なんだその代打の切り札!?」
2021年の最強の代打は間違いなく、かわばたである。試合終盤の強さにこのかわばた在り。かわばたが打てないのなら、諦めもつくくらい。代打での勝負強さは他チームにとっては鬼畜そのもの。
「代打、あらきとか。代打、にしだとか。代打、おおまつとか。2017年の代打がしょぼすぎるだろ!」
「あの、……あらきとにしだの二人はまだ現役ですし、あらきに至っては今シーズンも代打してました。(ほとんど守備固めだけど)」
「えええぇぇっ!?……それは失礼をした」
いずれはそうなるだろうと、かわばたの未来の立ち位置は分かってはいた、まなか監督。しかし、そこまでの成績を残すとは思わなかった。2017年、まなか監督はかわばたに恨みを言いたかった。
「お前がいなかったから、2017年はこんなに負けたんだぞ……」
かわばたの長期不在は痛かったのであった。
「ひろおかとおくむらは?」
「まず、おくむらは一軍出場機会にあまり恵まれませんでしたが、二軍では最高出塁率のタイトルを獲得してましたね。ようやくというか……よくやったというか」
「成長しているのか。……やまだがいなければって思う選手になるのは良いな」
2017年ではショートをそこそこ守っていた、おくむら。入団経緯から大成して欲しいと思うファンもいることだろう。
ひろおかについては、……
「あ、ショートといえば、わたなべはどうした?すっかり忘れてた!」
「ひどい」
わたなべは、2017年では内野手登録であったが、2021年は外野手登録である。
身体能力は確かだったが、ショートをやらせるのには厳しい印象であった。
「まなか監督。言い辛いですが、……おくむらとひろおかより、2021年はわたなべが活躍してます。あおきやさんたなの途中交代として」
「えぇっ!?」
「肩で相手の走者を止めたり、盗塁もしてるし、外野向きですよ」
「ほへぇ~。人って成長するんだな……ん?なんで、わたなべがそれやってんの?外野手のやまさきはなにしてんだ?」
外野はあおき、しおみ、さんたなが基本となっており、代走+守備要員にわたなべが入った。2017年の外野手には期待されていた外野手、やまさきもいた。当然、
「わたなべと同じく、代走+守備要員で2021年は活躍しました。主にあおきを休ませるため、レフトでのスタメン出場もしたり。しおみが怪我した時の代役もやってくれました」
「あおきの後釜になって欲しい選手なんだよなぁ。もう少し打てるか、もっと守れて走れるかならないとな。しおみという選手にも負けんで欲しいな」
2017年シーズンを見れば、やまさきに期待したい気持ちも分からないでもない。しかしながら、未だにレギュラーの座を確固たるものにできないところ。
衰えが近い、あおきの後釜になって欲しいと思っているまなか監督であった。……が、2021年現在においても、少々厳しく競争相手が増えているのが現状である。たかつ監督もまだまだ期待したい選手なところであった。
「さっきチョロっと紹介してましたが」
「ん?」
「やまさき、あらき、わたなべ、こが。そーいう控え選手のほとんどが守備要員だったんですが、かわばた以外に代打がいたんですよ」
「えっ!?かわばただけじゃなかったのか!?」
印象度合いでまずは、こちらからたかつ監督はまなか監督に教えた。
「ソフトバンクのうちかわがヤクルトに来て、シーズン序盤は右の代打を務めてくれました」
「!!えええぇぇっ!?あのソフトバンクの生え抜き戦士、うちかわが、……」
「はたけやま達と同じように衰えてはいましたが、サヨナラタイムリーでチームに貢献してくました」
成績はかわばたと比べると、かなり見劣りするも、印象に残る活躍もしてくれた。
「そして、2017年ドラフト6位のみやもと。彼もかわばたと同じくよく打ち、代打バントもキッチリこなしてくれた。守備位置の関係でスタメン定着は厳しいですが、やまさき達もうかうかできないでしょう」
「2017年ドラフト、エグ過ぎないか?主砲、センター、代打まで揃えたのか……」
「選手層は決して厚くはないですが、一軍の控えもしっかりと活躍できるポテンシャルが野手陣にはありました」
恐るべし、2021年、ヤクルトスワローズ打線。
◇ ◇
ゴキュゴキュ……
「ぷはぁ~……」
「ふーぅ」
まなか監督とたかつ監督はそれぞれ缶ビールを一本飲み欲し。
「2021年の野手陣は分かってきた。でも、2021年の投手陣はどうなんだ?打てても、打たれたら意味がないだろう。2017年なんか、おがわを抑え起用とか……うぇっ」
「酒が原因ではないようですね」
「………ま、まぁ。いしやまとおがわの2人が中心だろう」
確かに2021年はそーいう時もあったし、期待もしていたが、
「いしやまはどっちかというと、……大誤算な時が多かったかなっと」
「!?はぁっ!?いしやまが大誤算!?たかつ監督!酷使起用してたでしょ!」
「ち、違う!そんなヤ戦病院にしていない!」
「いしやま大誤算でどーやって中継ぎが改善するんだ!2017年はおがわを抑えに……うぇっ」
まなか監督は思い出したくない事まで口に出してしまいそうだ。
しかしながら、いしやまが大誤算で優勝争いを行うなどまずできないのは確か。
「いしやまに匹敵。いや、それ以上の貢献。2018年ドラフト1位、しみず。彼が2020年からセットアッパーとして君臨してくれました」
「また神ドラフトか!?」
「2017年が神ドラフトなので、良いドラフトくらいかと」
セットアッパー、しみず。
昨シーズン、最優秀中継ぎを獲得した勢いそのままに、2021年もタイトルを取得するような働き。60登板以上をこなし、中継ぎ陣の中心を支えた。
「抑えのまくがふ。まぁ、いしやまがあまりに不調だったので、彼に務めてもらいました」
守護神、まくがふ。
2019年から50登板以上を投げている、中継ぎ外国人。今シーズンは不調のいしやまに代わって、守護神を務めた。
2020年から、しみずとまくがふの2名が、2021年も後ろを投げて、相手チームを抑え込んでいた。
いしやまも例年通りの活躍をしていたら、もっと早くに優勝を決めていただろうと言われるぐらい、この2名の活躍があって中継ぎ陣は奮闘した。
「なんでそんな良い選手が2017年にいないんだよ~」
「2017年の、いしやまとるーき、その2名も凄いじゃないですか」
泣きながらたかつ監督を掴み出す、まなか監督。本当にいしやまが不調でも、なんとかなる投手達だ。
もちろん、この勝利の方程式だけではない。
2017年から在籍している選手から言えば、
「まず、うめのはピンチの場面での火消しが見事でしたよ」
「あの、うめのが!?」
「というか、2018年は30登板。2019年は脅威の68試合登板。2020年も40登板。2021年も30登板近く投げ、……立派な中継ぎをやってますよ!!」
「あいつ、たった数年でそんなに成長するの!?」
ちょっと酷使しすぎじゃないかと、疑ってしまう登板数であるが。シーズンの火消しを任されたのは、梅野しかいなかった。
「それと、ほしも。……うめのが離脱した後、その穴埋めをして、初セーブも記録……」
成績だけを見ると、そうでもなさそうに見えるが。
9月は絶好調だった、ほし投手。
「いしやまも不調だった春先から、よく盛り返してくれたし」
シーズン序盤は打たれまくったが、後半からはビハインド登板でチームに貢献していた、いしやま。2017年で活躍した投手達も、しっかりと2021年に貢献していた。
それを聞いてちょっと落ち着いた、まなか監督。
「危うく、2017年で投手陣を焼野原にした影響が、2021年に現れるかと思った……。ほしも、優勝争いに貢献できてるなんてな」
「意外と投手陣は2017年に活躍していた選手は多いですよ」
生え抜き中継ぎ紹介に続けるように、新加入の中継ぎを教える。
「楽天から戦力外で来た、こんどう(2020年)、こんの(2019年)。前半戦だけだが、こんどうは22試合、防御率0.96。こんのは、シーズン後半で7回を任せられるほどの投手だ」
「はぁっ!?なんでその2人が戦力外で来たんだよ!?」
今の活躍を昔に戻って伝えても、だーれも信じてくれない事なのだが。
2021年の強力中継ぎ陣は、とても層が厚かった。2017年の中継ぎ陣を指揮するまなか監督は信じられない。前半戦の快進撃には、こんどうの名は当然。そして、こんのも。いしやまの代役……いや、それ以上の活躍をみせる50登板以上。しかも、7勝をマーク。
「おがわが抑えにまわるほど……うぇっ」
「もういい!!それはもういい!!忘れろ!」
壊滅的な中継ぎ陣が4年で整備され、重厚になっているなんて……信じられない。
「この2人を戦略外にする楽天……ということは、ソフトバンクの黄金期も崩れたんだな」
「あ、はい……」
「西武も強いだろうし。ロッテとオリックスはいつもの最下位争いか。ははは」
「……実は違う争いをしてるんですけどね」
ヤクルトの優勝争いもそうだが。パリーグのオリックスとロッテの優勝争いも、2017年のまなか監督に伝えても信じてはくれないだろう。
「ロッテの敗北だけが俺達を慰めてくれた……」
そんなことをまなか監督が思って口にする辺り、2017年ヤクルトの弱さが尋常ではない。この年のロッテも相当弱かった。
ドラフトによる入団で活躍してくれた中継ぎを言えば。
「おおにし、さかもと、おおした、よしだだいき……おおにしはこの中に入れるのがもったいないほどですが、ビハインドから接った展開、時には緊急登板をしっかりこなした投手。成績ではこんのに劣っても、おおにしの活躍もそれに匹敵していました」
中継ぎの便利屋として、おおにしが活躍。さかもとも、手薄な中継ぎ左腕事情の中で頑張った左腕投手。みんなが一丸となった中継ぎの陣容であった。おおしたもサイドスローになって、活躍。ビハインドながらも好投を連発した。
成績の良し悪しはそれぞれあれど、故障した投手を他の投手で埋めることができたという、ほとんど理想的な厚み。2017年の中継ぎの差とは天と地。中継ぎエースや守護神だけが良いわけじゃない。
「ずるいなぁ」
「中継ぎ起用は相当気を遣ったんですが」
新しくビールを飲みながら、リッチな中継ぎ陣を妬む、まなか監督。
「先発はどうなんだ?おがわはまだやれるの?中継ぎがおんぶにだんこしてるんじゃないか?」
「……先発登板、13回。防御率2.31。投球回71イニング(2021年。10月10日現在)。誰だと思います?おがわじゃないですし、2017年に在籍してる選手です。たぶん、この方が2021年の先発陣で1・2の安定感がありました」
あんまり先発登板していないし、100イニングもいっていない。しかし、防御率2点台とはとんでもないのが先発にいるんだな。
「……なるせ?それとも、てらしま?……あ、むらなか!よしのりとか!」
ベテランから、期待の新人、中堅選手。嬉しそうに選手の名を呼んだ、まなか監督であった。
そんな様子だからこそ、逆に気まずそうになった、たかつ監督は小声で
「いしかわ……」
「はい?」
「いしかわ」
「…………えっ!?2021年でまだ現役なの!?やまもとまさ、みたいになってるの!?」
コクコクっと頭を縦に振る、たかつ監督。
まさかの41歳の大ベテランがキャリハイレベルの、神ピッチングを披露している!まなか監督ですらまだ現役をしている事が驚きで、先発陣を支えているというのだから、腰が抜ける。
「2,200勝いけるのか?」
そんな投球をしていて、先発13登板、優勝争いをしている。凄いことになっていると、期待して聞いたが。頭を抱えて、たかつ監督は
「4勝3敗」
「え?」
「4勝3敗。紛れもなく、おがわよりも安定している。でも、打線の援護がなかったり、中継ぎが勝ちを潰したりと、運に恵まれず、4勝しかしてない」
「うっそだろ。その成績出しといて、200勝できなかったら、たかつ監督のせいじゃん(笑)」
「2017年のまなか監督も悪いでしょ」
2021年の先発陣も素晴らしい。
まずは大ベテラン、いしかわ。個人の勝敗こそ振るわないが、6回までは安定した投球で試合を作る。また、中5日での登板などもこなし、先発ローテを回してくれた。
「おがわももちろん、エース。調子の良し悪しがハッキリしていたが、イニングを良く食ってくれたか。完投も2回している」
5月はおがわ無双。完封含む、負けなし3勝。7回まで投げ抜いたりと、中継ぎ陣の負担を減らす投球も多かった。その後は好不調の波が激しかったが、9勝をマーク。
「誰だ、こんな投手を抑え起用したのは!?」
「ツッコミませんよ」
「いしかわとおがわ以外に2017年に在籍した投手はいるのか!?まさか、二人だけか!?」
「いえ、はらとたかはしの2名が、……そうそう。たかはしはアイドルと結婚して、子供ができたとか」
「ええぇっ!?許せん!!」
はらはシーズン序盤こそは不甲斐なかったが、シーズン後半に好投を続けて、チームの連勝に貢献する。入団から応援しているファンが待ち望んでいた活躍であった。
そして、たかはしは、この年。覚醒と言える活躍。6月からローテに入り、先発11登板で防御率2.76。勝ち星は3つとあまり恵まれなかったが、おがわ以上に安定感ある投球もしばしば目立った。
「先発陣は勝ちこそ多くないですが、負けもない感じ。ホントに先発が試合を作ってくれました」
「2017年、誰が投げても火の車なんだけどなぁ……投手足らんし」
2017年から成長した選手達の活躍に、愚痴愚痴言うものの、そこはまなか監督。少しは嬉しそうな表情になる。いしかわが、そんな神投球をしている時は驚き不安になったものだが……。
「ドラフトでとった先発はどうだ?随分、中継ぎが多かったじゃないか?」
「先発は、まなか監督の頃からの投手が多かったですよ。そのおかげです」
「ありがとう、たかつ監督」
「でも実は、一番活躍したのは2019年ドラフト1位の先発で、俺が育てている投手なんですよ」
「うわぁ、ムカつく。なに、おがわやいしかわよりも、良い投手なの?」
「おくがわくん」
2019年ドラフト1位、おくがわ。
ドラフトで獲得した、たかつ監督をして、球団だけでなく、プロ野球界を代表するエースにすると公言するほどの逸材。
2021年で本格的な一軍デビューを果たし、先発16登板、9勝3敗、防御率3.02。投球回、98イニング。
「は?」
中10日。登板後、すぐに選手登録抹消など、一時は過保護とも言われるような投手起用であったが、おくがわはその投手起用に応える投球をする。
なんと54回1/3という間、一切の四球を出さない、7試合連続無四球など、抜群の制球力で試合を作り、一気にエースとして活躍するのであった。
「いや、なんだよこの新人!!先発で7試合連続無四球とか、54回も投げて四球0の新人投手ってなんだ!?2017年の先発投手に54回も投げさせたら、簡単に押し出ししそうなのに!なにこれ!?」
「はははははは」
「さては、たかつ監督!未来から自慢しに来たな!!2017年に先発がまったくいない事をいいことに!!」
「おくがわくんは、サイコーだよ。でも、おくがわくんを過保護に一軍で育てられるのも、まなか監督の財産があるからです」
「絶対にそう思ってないだろ!!」
憤慨。ズルい。デタラメ過ぎる、チート投手の入団を聞き、2021年の選手達を妬み始める、まなか監督。こんな新人がいて、中継ぎ陣も豊富。打線も強力。
はらとたかはし、おがわ、いしかわといてくれるが、おくがわと比べると見劣りもする。
「ぐぬぬぬ。だが、その中10日起用。さぞ、おがわ達は先発ローテの間隔が短かったんだろうな。不満は凄いだろう。はらと、たかはしが覚醒しても、先発人数は埋まるまい」
中継ぎはあくまで試合終盤がお仕事。試合を作る先発が少ないというのは、分かっていた。どう考えても先発がイニングを喰えず、中継ぎがフル回転、シーズン終盤で失速。ひぃーひぃー、逃げながらの優勝争いだと思っている。
確かに2017年の先発投手達の覚醒では、できない事だ。戦力外で拾えても中継ぎがメインだろう。
「外国人もそこそこ当たったのと、トレードも上手くできたので、先発の数は揃いました」
「と、トレードだと!?というか、外国人も当たったのか!?」
さいすにーど と すあれす。
さいすにーどは主に先発起用。シーズン序盤はイニングを稼げず、2巡目以降から打たれてしまったが、ペース配分を考えてから好投を続けるようになる。すあれすも、シーズン序盤は苦しんだが、後半に復調。はらが先発で結果を出した事と、中継ぎの負担が増したことで中継ぎに配置転換。その中継ぎでも活躍をし、セーブも記録した。
「ふ、ふふん。そこまで当たりの外人じゃないだろう。昨年と大差ないんじゃないか?」
「!!あーーっ!それは聞くな!!まなか監督!!」
「?」
2020年の外国人選手を思い出した、たかつ監督。2020年は結構、酷かった。
しかし、まくがふ以外は圧倒的な成績を残すような外国人選手ではなかったことは確か。谷間先発を埋めたり、チーム事情のために身を削ってくれた投手。そんな印象だ。
そして、
「どうやら、シーズン序盤は苦労しているようだ。開幕3連敗とかしたんじゃないか?」
「ギクッ」
「そして、トレードだって。ローテに入る先発投手と対になる案があると思えないぞ!FA参入で巨人に勝てるわけもない!良い先発をぽいぽい出す球団なんているのか!?新人王をとった選手とか出すか、普通!?」
ヤクルトの先発事情がとにかく困っている事は分かっていた。ただ長く投げられるだけじゃなく、抑えられる投手じゃなければダメ。
だが、そんな出来事が起こってしまったのだ。
「2016年、パリーグ新人王」
「!」
「たかなしを、あきよしとトレード。(正式には、あきよしとやち と おおたとたかなしの2対2トレード)」
2017年に故障してしまったが、2015年にはセットアッパーとして貢献した中継ぎ、あきよしとのトレードで、先発投手のたかなしを獲得。
そのたかなしが2021年で大活躍したかというと……はらと同じように、調子が良くて投げていた感じであった。しかし、シーズン序盤では不調の先発陣の中で、2勝をマークし、防御率も2点台と好調。10月にも好投をみせている。
「ひ、一人が調子良いからって……」
「巨人、……たぐち投手」
「……え」
「ひ、ひろおかとのトレードで、獲得……」
2016年、未来の大砲候補としてドラフトで獲得した、ひろおかとのトレードで、……巨人で活躍していた田口を獲得。たかつ監督も断腸の想いであった。
「ええーーーーーー!!?ひろおか、トレードに出したのぉ!?」
まだ20代前半。しかし、ショートは小粒ながら沢山選手がおり、むらかみという球団を代表する若き打者の誕生。2021年ドラフトで、もとやまを獲得した事などで、ひろおかにトレードに出し、なんと巨人で活躍していた、たぐちを獲得したヤクルトスワローズ。
よく、たぐちを出したなって、2017年度のまなか監督は思うのである。そして、ひろおかをこの球団で育てられなかったという事実に、ショックも受けている。
「そ、そ、そのたぐちは……活躍したのか」
シーズン序盤は先発起用。打線や運に恵まれず、敗戦は8つと多かったが、先発ではイニングを稼いで中継ぎの負担を減らしていた。シーズン終盤は中継ぎへと便利屋起用へ。巨人時代でも中継ぎをやっていた事で、順応し、活躍をみせる。
2021年だけを見れば、たぐちの獲得は大きかった。先発ローテを回す。中継ぎに回って、負担を減らすなど……投手陣全体を支える活躍であった。
「しっかり、活躍しているのか!」
「今は優勝争いの最中だが、序盤は苦しんだ。その中で、こんどう、たぐち、たかなしの3名が踏ん張ったからこそ、今の争いがある」
他にも他球団の不調など、色々とあったが。……そんな不調に負けない、好調ぶりと選手起用及び選手の獲得が実を結んだ、優勝争いであった。
◇ ◇
カランッカランッ……
空になった缶ビールを床に落とし、2017年、まなか監督は
「そんな神ドラフトも、そんなバカげたトレードも、優勝争いという結果も……たった4年後に起こるもんか!!」
計算通りにいく選手が計算通りの活躍をしているのも、分かったが。近年の神ドラフトに外国人選手が当たり、他球団が軒並み不調。
これらが一気に来て、優勝なんてあるわけがない。選手一人一人の活躍を、維持するのは難しい。
「良い選手がいたり、来るのは分かる。でも、チームの纏め役や盛り上げ役がいる感じじゃない。気分次第で浮き沈みが激しいチームだ」
よく分かっているご指摘。好調を維持するための、ムードメーカーなどがいそうなものだ。そーいうのは成績には現れないし、コーチなどにも務まらない。
「……2021年の選手達は、”ある人”のおかげって言うんです」
そのたかつ監督の言い方に。
「も、もしかして。俺のおかげか?」
「違います」
「即答すんなよ」
少し期待しつつ照れながらボケるも一蹴されてしまう、まなか監督。成績からではまったく分からない事であるが、チームを盛り上げてくれる選手がこの年、やってきたのだ。
「楽天のしま選手がベンチを盛り上げてくれます。まるで、2013年の楽天が優勝した時のように」
「!!あ、あのしまが……ヤクルトに……。2021年ともなれば、かなりの年齢になるな。コーチでもいい、貴重なベテランまで出すなんて、楽天も相当強いんだな」
「た、確かに強いんですけど。ワザと言ってませんよね?」
元楽天、しま捕手。
2021年ヤクルトスワローズでは、3番手捕手として、ベンチに入っている。決して、試合で大活躍をしているというわけではないが、ベテランらしくチームを盛り上げる。ヒーローインタビューでは、多くの選手がしま選手の存在を口にしているため、その効果は高く、チーム成績にも繋がっているんだろう。
「それとやっぱり、選手達の中には、2015年時の優勝。つまり、まなか監督就任1年目の優勝した時の経験や雰囲気を口にしています」
「!!」
「あの時の雰囲気で、絶対に大丈夫だって、いけるというチームの結束力。その時を経験したメンバーは少ないですが、同じだってメンバーは思っています。優勝争いをしている阪神との差は、そこがあるかと思います」
2016年~2018年。広島カープ、黄金期。2019年~2020年。読売ジャイアンツ。
阪神タイガースは優勝争いに絡んでも、2005年の優勝を最後に遠ざかっていた。
一方でヤクルトスワローズは、2015年に優勝。阪神と比較すると最近にしていた。その時代、やまだ、なかむら、おがわ、いしやま、いしかわなど、優勝経験をしていた選手が多い。
また、他球団から来た選手も、優勝を知っている選手がいる。
勢いも経験も、ヤクルトスワローズが優位である。
「2021年、優勝しますよ。ヤクルトスワローズは!」
そう言って、たかつ監督は……。まなか監督の前からゆっくりと消えていくのであった。
2017年。
屈辱的な最下位を経験した、このチームがその4年後に優勝するなんて。
「そんな馬鹿な」
あり得ない。ただの笑い話だ。
まなか監督は、酒に酔って、眠って、忘れることにした。
知っていたらまったく面白くない。野球はどうなるか分からないから面白い。
「お疲れさまでした」
「……………こんなに負けた監督だもんね」
まなか監督を辞める時、フロントにある事を言った。
「ウチのチームはここから強くなるしかないよ。優勝するかもしれない」
「え?」
「やまだ、おがわ、いしやま、なかむら、……ベテランのいしかわもだ。待遇をよくすればいい。複数年契約もいいかもな」
「は、はぁ………」
「選手を大切にしないと、チームは強くなれないよ」
遠回しにフロント批判のようで、今年の選手達を大切にするよう言っていた。
それがきっかけか、元々そうするつもりだったかは知らないが。
まなか監督が言っていた選手達は、FA年に残留をしたり、好待遇を受けたり、……もちろん、選手みんなが大活躍をし、2021年の優勝に繋がるのであった。
自分の好きな選手は元広島カープで、現楽天の福井投手なんですが。
同期の斎藤投手も引退という事で、近々危ないかもですね。
2021年のヤクルトスワローズで好きな選手は、塩見選手ですね。
阪神、近本選手とはまた違ったタイプの1番打者ですが、塩見選手は長打も打てて、チャンスにも強く、下位打線のチャンスをしっかり活かせるのが良いですね。三振が多いのも魅力です。
2017年VER、パワ〇ロ2016のペナントをやっているのですが。これには村上選手、塩見選手、清水選手などの主力などは収録されておらず、山田選手もかなり弱体化されており、2021年で優勝に導くのが、とんでもなく困難です。2020年にFAでヤクルトから抜けるし。
ホントに2017年のヤクルトとロッテは弱いんです。ゲームの話を使って申し訳ないんですが、2017年から2021年で、両チームが優勝争いをするほどのチームにするのって、ゲームの現実的な補強では不可能だと思っています。カープとソフトバンクが強すぎる。
それでもリアルで、2021年にヤクルトと阪神。オリックスとロッテ。この2チームが優勝争いをしているなんて、とても面白いシーズンだと思います。
長々と書き、申し訳ございませんでした。